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巨人戦機ディメティス  作者: 共通点
邂逅編
1/18

「ディメティス起動」

1章「ディメティス起動」


目の前に広がるは虚無の軍勢。

戦艦から射出された俺は、一機また一機と、敵の機体を破壊していく。

「これで最後の一体か。終わりだ」

そう言って引き金を引いた。確かにその銃撃は命中して、眼前に敵の姿は見えなかった。

しかしその直後、後ろから別の機体が俺を切りつけた。

「うわぁー!!!!」



画面には'game over'と出ている。また、俺の負けらしい。

「残念だったなあ、雷二。」

後ろを振り向くと、白衣に身を包んだ初老の男性が立っていた。

俺の父、真荷頼徒。科学者だ。だが、息子の俺でさえなんの研究をしてるかはわからない。

ただ一つ分かっているのは、俺がこの、ロボットを動かして闘うというシミュレーターをやらされているということだけだ。

この人の考えていることは、さっぱりわからない。

「博士、今のはいい研究材料となるんじゃないでしょうか?」

この人の名前は仲江達也。父の助手をしている。この人は優しいから、父より好きだ。たまに、勉強を教えてもらったり、昔はキャッチボールなんかに付き合ってもらったりもした。

「そうだな。雷二、今日は休んでいいぞ」

父はぶっきらぼうに言った。俺のことよりも、研究の方が気になるのだろう。俺としては、それ自体はもうどうでもいいことだった。だが……。

「なぁ父さん。いい加減父さんがなんの研究をしているのか教えてくれよ」

「ダメだ」

「なんでだよ。俺だってもう高二なんだ。そのくらい知っててもいいだろ」

「お前がそんなこと知ってどうする?」

「別にいいだろ! 俺だって研究の手伝いしてんだ。それくらい教えろよ」

父は少しだけ考える素振りを見せたが、答えはやはり、

「まだ、ダメだ」

だった。

『まだ』という言葉に腹がたった。俺は以前にもこの事を聞いたことがありその時も、「まだダメだ」と言われた。

「ふざけんなよ。何も知らずに研究の協力だけしろ?俺は父さんの操り人形じゃない!」

研究所内が静寂に包まれる。

「俺は別にそんなことは……」

「だってそうだろ。なにが違うんだよ」

一度スイッチが入ると、もう自分では止められない。

「あんたは俺や母さんのことなんて、ただの自分の言うことを聞く人形だと思ってんだろ?」

「お前……!」

突然ほおに平手打ちが来た。怒るとすぐこれだ。

「痛ぇーな。悪いのはあんただ。あんたが研究の内容を話すまで、もう俺はあんたの研究に協力しない」

そして部屋に戻った。真っ直ぐベットに入る。

悪いのはあいつだ。あいつなんだ。そう思いながら眠りについた。



この時はまだ予想すらしていなかった。


あんな悲劇が起きるなんて……。




小鳥のさえずりが聞こえる。今日から土日が明けてまた学校だ。

「雷二、起きなさい」

母さんが起こしにきた。母さんは、父さんとは真逆ですごく優しい。怒ると面倒くさいのは、父や俺と同じだが……。

「わかってるよ」

そう言って階段を下りる。途中で父さんとすれ違ったが、声はかけなかった。

「行ってきます」

そう言って家を出た。

紹介が遅れたけど俺の名前は真荷雷二。普通の高校に通っている。

成績は中の上。運動は中の中ぐらいだ。

「おっす雷二。またお前こんなものつけてきたのか」

「ちげえよ。これはマジでとれねーの」

そう俺は、小さな頃からブレスレットが腕から離れない。

キーンコーンカーンコーン。

「やべ。授業が始まる……」

昨日はあんな事があったせいでよく眠れなかった。だからか授業中、ぐっすり眠ってしまった。


「雷二、雷二」

誰だ? 俺の名前を呼ぶ奴は。いや、俺はこいつを知っている。聞きなれた声だ。まさか…

そう思いながら前を向いた。

「!!!」

そこには、血だらけの父が居た。何が、どうなっている?

「雷二、ディメ…ティ」

「は? なんだよ。それより親父血が」

「雷二……ディメティスを……使え」

そのまま、父は倒れた。

「親父、親父ッ!」


「っ……夢か。妙に生々しい、嫌な夢だったぜ」

ふと横を向くと、クラスのみんなが窓際に集まってざわついている。そういえば、授業はどうした?

「どうしたんだ? みんな」

そう言って窓の方へ行くと、そこには衝撃的な光景が広がっていた。

街が次々と破壊されていく。ミサイルや銃で。

辺りは一面の焼け野原。地獄というに申し分ない光景だった。

「なんだよ、あれ……ロボットなのかか?」

その時、その物体からミサイルが放たれた。

「おい、嘘だろ……?」

ミサイルが直撃したのは、家がある方向だ。父さんと母さんが居る、俺の家……。

「う、うわぁー!!!」

夢中で教室を飛び出した。

「どこ行くんだよ雷二! 死ぬだけだぜ!」

「もう遅いかもしれない! 何もできないけど! けど今行かないと……」

夢中で、街を駆けた。途中どの道を通ったのか覚えていないが、家につく頃には傷だらけになっていた。

先とは別の意味で衝撃的な光景が俺を襲った。確かにミサイルが直撃したはずなのに、家は傷一つついてない。

「勘違いだったのか?」

家は無事なのに、嫌な予感がした。実際、ロボットはまだ暴れているのだ。ここが襲われない保証はない。

「父さん、母さんいるのか?」

返答は無かった。だが、恐らく居るはずなのだ。両親は普段、昼間から研究所へ通っている。

その時、研究室の方から大きな音が聞こえた。また父母を呼んだが、返答は相変わらず無かった。埒が明かないので、暗雲立ち込める地下室へ俺は向かった。

「ディメティスはどこにある?」

「知らんな」

父と母が縄で縛られている。そして父に質問している男は、銃を構えていた。

まさか、と脳裏に悪い考えが走る。

「まぁいい。妻を消せば気も変わるだろう」

「妻に手を出すな!」

母はどうやら眠らされているらしく、動かない。男が母に拳銃を突きつけた。

「死ね」

行くなら今しかない!

「やめろおおおおおおおおっ!!」

部屋一帯に声が響いた。両親の前に走って出る。

「誰だお前は?」

「俺か? 俺の名は真荷雷二。そこにいる真荷頼徒の息子だ!」

「馬鹿野郎!雷二、お前なんでここにいるんだ」

「父さん。親を見殺しにできるほど俺は精神的に強くない」

「そうか、息子か。また新しい人質が増えたぞ、真荷頼徒」

そう言って俺は、後ろに居た別の誰かに薬を嗅がされ、眠らされた。


「ここは……?」

目を覚ますと、先とは違う場所に居た。恐らく、研究所に移動したのだろう。

「さっさとディメティスの在処を言え」

また、さっきのやつと父さんがいた。母さんと俺は、その横で倒れているらしい。先に俺を眠らせた輩の姿は見えない。

「……わかった。そのかわりに妻と息子だけは助けてくれ」

「ふん、いいだろう」

「ディメティスの在処は、この研究所の地下だ」

「地下だ。今すぐ探せ」

「そういうわけには行かない。起きているんだろう? 雷二」

そう言うと、親父を拘束していた縄は簡単に外れ、俺の縄もほどかれた。

「どういうつもりだ! 俺たちがディメティスを回収するまでは大人しくしていろ」

「雷二、目を閉じろ!」

反射的に、言われるままの事をした。直後光の明滅が起き、父が俺の身体を起こした。

目を開けると、黒服の男たちは目を抑え、倒れてこんでいた。

「所詮目くらましだ。母さんはお前が背負え。早く逃げるぞ」

と言って走り出した。

「ああ」

急いで階段を駆ける。

「なぁ父さん! ディメティスってなんなんだよ!」

黙って走っていた父が、俺の質問に答えた。

「ディメティスとは……世界を破壊できるほどの力を持つロボットのことだ」

「な、そんなもんあるわけないだろ!?」

「そしてその操縦者がお前だ。雷二」

「何こんな時にくだらねえ冗談言ってんだよ!」

「冗談などではない。今この状況を救えるのはお前だけだ」

「そんな……そんなこといきなり言われたって無理だ」

「そのための訓練だっただろう」

これまでやらされていた事が、世界を破壊できるようなロボットの操縦? 気でも狂ってやがるのか。

「真荷頼徒! どこだ。殺してやる!」

どこからか奴の声が聞こえた。どこかはわからないがすぐ近くにいる。

「まずい、もう近くまで奴らが来ている。早く行け雷二」

「父さんはどうするんだよ」

「俺はここで、足止めする」

「それって、………」

「雷二、いい加減にしろ! 今この状況を救えるのはお前だけなんだ。時間だってないんだぞ。」

今まで見たことのない表情だった。真剣。父さんは本気なんだ。

「……不器用で悪かった。お前を、巻き込みたくなかったんだ」

「な……っ」

今度も俺が見たことのない、普段の父からは想像がつかない程の優しい顔だった。

普段から、そんな顔で俺と接してくれていれば。

「……わかったよ父さん。絶対生きてまた会ってくれよ」

「ああ」

後ろを見ずに走った。ただディメティスを動かすことだけ考えた。

「くだらん真似をしてくれたな。息子と妻を逃がしたか」

「……何とでも言うがいい。ここは、通さんぞ」

「そうか。ならば死んでもらおう」

「このっ……!」

銃声。そしてまた、階段を降りてくる足音。

「父さん……っ」

必死で地下へと続く階段を駆けた。途中で足を踏み外し、頭から部屋に入り込んだ。母さんも同じように倒れた。

「痛ててて……!?」

顔を上げると、目の前に大きなロボットがあった。これが、ディメティスか。

「真荷雷二。妙な真似をするなよ。黙ってディメティスを渡せ」

しまった、奴に追いつかれた! 成す術がなく、絶体絶命だ。なんとかして、ディメティスに乗り込まなければならない。が、動けばそこで俺の命は潰える。

「くそっ……ディメティスは、世界を破壊するほどの力があるんだろ……!」

「その力は、貴様の為にあるのではない」

「そんなのどうだっていいんだよ! でも、そんな力があるのならっ!」


「こんなクソみたいな状況をぶっ壊してくれよ!!!!」

その時空気が震えて、地が揺れた。

第1章終了 執筆:助手

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