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トマトは異世界に通じる

取り留めのない文章ですが、

どうか、最後までお付き合い下さい。

この物語には、主人公がいます。

少年であれ、少女であれ、人間ではない何かであれ、

誰かがいて、何かをする。


物語に通じることは、みな同じこと。

目的は違っても、基本的なことは同じ。

誰かが登場して、何かを起こす。


その繰り返しだ。

どうして物語を繰り返すのか。

なぜなら、それ以外のものは作りえないからだ。


思い込みに支配された世界。

それを払拭することはできず、

たとえ拭えたとして、見える世界は言葉にならない。


伝えられないものは何にもならない。

何にもならないのだから、仕方がない。

いい加減、目を覚ました方がいい。


新しい試みも、前人未到の地も、

あってないようなものだ。


-------------------------------------------


本編がようやく始まります。

待ちに待ったサクセスストーリー。

涙あり涙なしどっちだろう。


いずれにしても、何も感じないことは、

ないはずだから、語りに翻弄されずに、

君の思うがままに感じてほしい。


哲学めいたうんちく話は必要ない。

いちいち、深読みや深思いをする奴は、

本当にひまなだけなんだ。


することがなさすぎて、

どうでもよくはないが、

生活する上で何も支障をきたさないこと。


でも、どこかで役に立つだろうと、

保証もない戯言を吐く。

語ったら、いい話っぽくなるけれど、

本当のところ、とてもとてもくだらない。


使う言葉が、難しかったり、

ウダウダ話したのちに、最後の最後で、

偉人が言ってそうな名言でかっこよく締めたり。


人は思い込みが激しい生き物だから、

勝手に「これはとても深い意味が込められているのだろう」

と誤解をしだす。


本人に聞けば「いや、意味なんてないよ。その場で思いついただけだし」

といった、裏切りではないものの、期待外れのような答えをする。


「すごい」という憧れも、所詮は大したことがない。

上記のような事例は少なくない。むしろ、多すぎる。

もしかすると、すべてに当て嵌まることかもしれない。


「どうだ、凄い話だろう」

あえて、言うと僕の話もまた、

同じことの繰り返しで、同じように大したことはない。


-------------------------------------------


長い長い降りだ。

どこまで歩けば平坦の道になるんだ。

かれこれ、歩き続けて30分。


ぼくはギネス記録に認定されたような、

世界一長い坂道でも歩いているのか。

歩きながら、他愛のない思考を巡らして、


気がつけば坂は終わっているだろうと、

思っていたというのに、見る限り終わりが見えない。

戻ってみようかとも錯綜したが、まだ早いと押しとどまった。


にしてもどうして、

いつもの坂道が、まるで無限回廊のような、

ありもしない空間になってしまったのだろう。


僕が何をしたっていうんだ。

屋上から嫌いなトマトを放り投げたのがいけなかったのか。

これはトマトの呪い。


いや待て。しばし待て。

仮に百歩譲って、この現象がトマトの呪いだとしよう。

高さは15メートル、例えるならマイケル・ジョーダン約14.5人分。


まあ、高さは関係ないとして、弁当に入っていた

罪のないトマトは、放物線を描きながら自由落下によって、

無残にもトマトはグチャグチャになったけれど。


なるっけ、うん、なると思う。

それで、そのトマトが怨念を抱いて、

この僕を苦しめようと無限坂道を創り出したというのか。


これがトマトの力だというのか。

「うわあ~、トマトさんごめんなさい」

あたりは静けさに満ちていた。


「ま、そんな訳ないか」

そもそも、トマトの怨念て何やねん。

不覚にも、自分でボケとツッコミをしてしまった。

割りと恥ずかしい。


誰も見てなくてよかったと、ホッとした。

「トマトのせいでいいんじゃない?」

振り返ると人がいた。

ホッとした束の間、ホットがクールに帰り咲いた。


「え、もしかして今の聞いてた?」

「うん、もちろん。屋上からトマトが軌道を描くところから、

トマトの呪い云々の件まで、そりゃもう全部」


アイタタタタ、身が捩れる思いである。

このまま坂道を転がって、雪が積もって、

雪だるまになってしまいたいと願った。


「ねえ、君はどこから来たの?」

「どこって、ホラ坂の上の、あれ」


坂の上は雲で覆われていた。

もくもくと、普段から目にする、

何の変哲もありはしない雲である。


変哲があるとすれば、

坂の上に雲が密集している点ぐらいだ。

それ以外は何とも、至って健全である。


「空から来たって、あの雲の向こうから?

嘘でしょ。ありえないよ。だってあの先は私の家だもの」


僕はどうやら、異世界に迷いこんだらしい。


-------------------------------------------


かくかくしかじか。

読者の諸君、わかっていただけただろうか。

僕がどのような経緯で、このような状況にあるのか。


すべてが一瞬にして繋がったことだろう。

「かくかくしかじか」

文学の偉大な発明である。


なぜなら、1文にして全てを網羅できてしまうのだから。

これほど、都合の良い文章はない。

今後も、こういった便利な文章が開発されていくだろう。


まったく意図が伝わらない、とは言わせない。

仮に問題があるとすれば、それは聞き手にある。

説明不足、いやいや、以上の通りじゃないか。


付け足すことも、何もできやしない。

あれが全貌なんだ。全貌だと言っているのだ。

否定しようものなら、それは詭弁だ。


僕に逆らって見ろ。

お前も坂の上から蹴り転がしてやる。

ケガでは済まないぞ。


いいか、これは忠告だ。

異世界なんて夢は見るもんじゃない。

ときより、いるんだよ。


「ビバ異世界、転生とかしちゃいたい」っていう馬鹿が。

まあ、馬鹿は何を言っても馬鹿なんだけれど。

馬鹿は本当に馬鹿な目に会ってみないとわからない。


だからと言って、僕が馬鹿だった訳ではない。

聞いていただろう。あの素晴らしい哲学論を。

あれが馬鹿の考えることだろうか。


ルソーさんを表に出されると、僕も言い返すことはできないが。

とにかくだ。君たちにしてみれば、おもしろ百文で聞いているだろうが、

本人にとっては大真面目だということだ。


-------------------------------------------


「いえ、お断りします」

「まだ私、何も言ってないんだけど」


間髪入れずにはいられない。

おお、盛り上がってきたぞ、と。

そうなる前に止める。


最高潮になった後は、

下がることがわかっているからだ。

だから僕は彼女の誘いを断った。

正確には、誘われる前に断った。


「チュートリアルはいらないと言っているんだ」

「はあ? チューだか鳥だから知らないけれど、

 アンタ、行く宛もないんでしょ?

 よかったら、私が案内してあげるけど」


ぐぬぬ、この女、どうしても僕と馴れ初めたいようだな。

この物語のヒロインになろうっていうのか。

確かに、背は低くてロングの金髪で、幼い雰囲気で、

僕の好みドストライクではあるけれど。


ほいそれと、甘えてもよいのか。

よく考えるんだ僕。甘い話には裏があると、言うではないか。

冷静になれ、感情で動いてはいけない。


「いや、結構だ。僕は一人で何とかする」


僕は歩き出した。一歩、また一歩と異世界脱出に向けて。

僕の居場所はここじゃない。戻るんだ元の世界へ。


「あ、そっちは危ない」

「え?」


がくん。ふわ。気がついた頃には遅かった。

足元に踏場はなく、体が傾く。

体制を立て直すひまもなく、僕は真っ逆さまに落ちていった。


「うわあああ!!」

「あれ、どうして自分で浮かないんだろう。

あ、そっかできないのか。もう、仕方ないなあ」


トマトの二の舞いになるのは嫌だ。

おう、まいごっど、我を助けたもう。

手を組んで、天の神様に祈った。


祈りが通じたのか、空から人が降りてきた。

くるくると旋回しながら、僕に近づいてくる。


「ああ、天使が舞い降りてきた。

ようやく僕も天国へ行けるんだね。

パトラッシュ、君のことは忘れない」


「寝言は寝てから言いなさい。

ほら、私の手につかまって」


僕は何も言わず、藁にもすがる思いで、

彼女の手のひらをにぎった。

にぎにぎ、これが天使の触感。


僕の意識は、そこでプツンと消えた。

その先のことはよく覚えていない。


何度も、長編小説に挑戦してきましたが、

いつもいつも挫折していました。

今度こそ、書ききりたい一心です。

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