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夢見がち少女の現実  作者: 赤木かなめ
続編 夢見がち少女の現実
4/6

2.麗しの人




復讐を誓ったところで現実へと思考を戻す。


今現在、私は公園にてこの憤りをさらけ出している。

不審人物極まりない。自分でも思う。

だが、行き場のない思いがあふれ出した結果なので仕方がないとも思っている。


なので公園にいた親子達……通報するのだけは勘弁していただきたい。

出来心だ。悪気はない。


危険人物に思われてそうなので、公園からは立ち去った。

世知辛い世の中になったものだ。









その後は特に予定もなかったので、我が家へと向けて帰ることにした。


本当はこの様な重要なことが相談できる友が欲しい。

親には言えないが親友だからこそ言える……なんてことをしてみたい。


だがそれも私の対話能力の限界のため、そこまで仲の良い友はいない。

自分で言っておいてなんだが、悲しい。


言わせてもらえば、決して友人がいないわけではないのだ。

そこそこに遊ぶ友人や会話ができる友人はいる。

……私は常に聞き役だがな。


物語であるような唯一無二の親友、というのはいないというだけだ。

大抵の人はそうだろうと思う。そうであってほしい。

私だけだとは思いたくない、切実に。


なので、親友など夢のまた夢。

狭く浅い友情だというだけなのだ。


よって、現状の私の過酷な環境を誰にも言えないでいる。辛い。









とぼとぼと歩いていると、私の横で立派な馬車が止まった。


何だ? この様な馬車に乗れる小金持ちが私に何の様だ。

小金持ちに知り合いなどいない。


私は普通に道を歩いていただけの善良な市民である。

どうか因縁をつけられませんよう……


横目でチラチラ馬車を観察していると、乗り口開き、中から人が出てきた。





「おや、奇遇ですね。ちょうどあなたの所へと伺う予定だったのですよ」





ひぃぃぃぃっ!!




知り合いだった!!

しかも小金持ちどころか大金持ちだーー!!


その人物は、知り合いと言えば知り合い、赤の他人と言えば他人だが、決して無関係ではない知り合いとは言えないようなそうなような……ん?


訳が分からなくなった。

要は、知ってはいるが仲良くはない間柄だ。


知り合いたくなかった知り合い第一位を現在爆走中、諸悪の根源。

人呼んで、サー・オーラント(悪魔の化身)だ。

ちなみに呼んでいるのは私だけである。心の中で。


それにしてもビックリだ。

あまりに唐突だったため、驚愕の顔を浮かべ凝視してしまった。


夢だ……白昼夢だ。切実にそうであってほしい。

現実だとは思いたくない。


「はぁ、不細工な顔であまりこちら見ないでください。先ほども言いましたが、今から貴女のお宅へと伺う所だったのです。丁度いいので一緒に連れて行って差し上げましょう」




……おおぉぉ

この人は今、何と言った?




人の事を、不細工……と言ったか……?


な、ななななんと、失礼極まりないことを。

さすがの私も傷つくぞ。


貴方が言った不細工とは……普段から不細工だと言いたいのか? それとも驚愕した顔が不細工だということか?


どちらだ? どちらのことを言ったのだ?

そこのところ、ハッキリしていただきたい。

気になって夜眠れなくなる。


驚愕の顔がいささか不細工なのは認めよう。不本意ながら。

だが、普段から不細工だとは認めないぞ。

私の顔は平均的である。いや、そう思いたい。




……って、そればかりを気にしている場合ではなかった。


今、私の顔の造形を酷評した後に、とんでもないことを言った気がする。

聞き間違え出なければ、今から私の家に来ると言ったか?

えっ? 間違いだろう?

間違いであってほしいのだが……もしや本気か?








い、嫌だ!!!!!


全力で嫌だ!!!!!



この人が家に来ようものなら、一瞬にしてご近所様の噂の的になる!

最新情報として、おば様情報網にて背びれも尾ひれも付けて噂される!

せっかくの箝口令が瞬く間に意味をなさなくなってしまうぞ!

そんなの御免こうむる!


私の人生終了となってしまう!!!


全力でこれを阻止しなくては!

会話が苦手などと言ってはいられない!


「な! な、ぜです……か!?」


最後が若干裏返ってしまったが聞けた。

来る意味などない。止めろ、全力で止めるんだ。


届け私のこの思い!


目力を込めてサー・オーラントを見る。

……鼻辺りをだがな。

目を合わせることなど恐ろしくてできない。


「何故とは? これから貴女には式典の準備をしていただかなくてはなりません。よって、今日より身柄を私が確保します」


「み……身柄……確保…」


言い方が犯罪者に対してみたいなのだが、気のせいだと思いたい。

職業柄だと思いたい!


そして確保する意味が分からないのだが?


「ですから、式典の準備及び練習その他諸々を本番までの五か月間で貴女へと叩き込むため、本日より我が家へと滞在していただきます。その許可をいただきに参ろうとしていたのです」


「…!?!?」


な、な、ななななな!!!?

何だそれはー! 聞いてないぞ!!


あの悪夢の選定の日以降、特にこれといったお達しがなかったので本番近くになるまでは放置だと思っていた。

というか、対してすることもないと勝手に思っていた。


これからサー・オーラントと一緒に仲良く一つ屋根の下で暮らすだと?

この辛口鬼畜男とか?




うん。




「むむむ、無理で、す!!」



無理無理無理無理ー!

いくらなんでも無茶すぎる!


式典自体は約半年後だと聞いてはいたので、まだ余裕をかましていた。

いきなり障害が高い! 私に精神を摩耗まもうして死ねというのか?

この方と約五か月間一緒に住まなくてはならないなど……死刑宣告に近い。


それに口では許可を貰いにとか言っているが、もはや強制だ。

小市民の両親が反抗できるはずがない。

私と同じで長いものには巻かれろ精神で生きているのだから。


この方が相手では、我が家の誰もかないはしないだろう。

下手に抵抗すれば、裁判所からどんな通達がくるかわからない。


例を挙げるならば……


我が家は融資ローンをして建てた。

国への返済は終わっていない。

通達などの発行許可は裁判所がしている。

サー・オーラントは裁判所の権力者である。





………家が人質に取られる。






だが、これでも一人娘。

両親にとっては大事な大事な子供のはず。

もしかしたら私を守るために勇敢に立ち向かうやもしれない。


サー・オーラントと対じした家族を思い浮かべてみた。


家と私……果たしてどちらを守るだろうか。













私を差し出す未来図が見えた……泣きそうだ。








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