プロローグ
狭い空間。無音。
明かりなどごくわずかの中、二人の人物が見える。
互いが互いを見えない中、それでも、二人は相手が誰かを理解していた。
重い沈黙が暫く二人を包んでいたが、意を決したかのように一人が話し出した。
『これで……本当に、良かったのですか?』
「えぇ、これが望みへとつながります」
『あなたは……幸せになれますか?』
「どうでしょう。ですが、この望みが叶えば……少なくとも憂いは晴れます」
『そうですか……ならば何も言いません』
「えぇ、あなたは何も言わず、ただ見ていてください。この行く末を」
『えぇ、私は見ていますよ。……あなたに幸多からんことを願いながら』
「幸……」
幸を願われ、皮肉げに笑った。
幸せ………そんなものが訪れるのだろうか?
自嘲気味に笑う一人。
それを痛ましげに見守る一人。
互いを思っているのであろうが、二人はどこまでもかみ合わない。
二人しかいないこの空間では、その過ちを正せるものもいない。
「始まります」
『………そう』
今日も二人はかみ合わない。
この日より数か月後。
ある一国が滅亡の危機に瀕した。
その危機を救うとされたのは、ある少女だった。
彼女の名は、ミーシャ=ハイト。
後に【祈りの乙女】と呼ばれる存在である。
シリアス……じゃないよ! 多分!