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異世界の孤児園  作者: 宇佐美ときは
第三章 消滅する世界
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第二十五話 仲間

皆様、明けましておめでとうございます。


この小説も、もう書き始めてから二年と半年経ってしまいました。

まだ完結しない……更新が遅くて申し訳ないです……。


それでも、応援してくれれば嬉しい限りです。


もうすぐ完結いたしますので……!


今後とも、わたくし季葉と、その小説をよろしくお願いいたします。

 ピンク、薄緑、水色という、淡い色の糸で作られたそのミサンガは、切れて一本の紐のようになっていた。結んでいたと思われるところは、何故が焼けたような跡がある。

 そのミサンガをみんなに見えるように机の上に置くと、ピンクちゃんは自分の足首を指さす。


「ここが幼稚園だったって話は前にしたでしょう? このミサンガはその幼稚園が潰れて家に帰ろうとした時、園長先生からもらった物でずっと足に付けていたの」


 ピンクちゃんが実は二十五歳って話をしてもらった時のことだね。急に幼くなっちゃって、そのままずっと過ごしていたんだよね。じゃあ今は本来の姿――つまり、二十五歳のピンクちゃんの姿って事か。


「えっと、確か一日だけ先生の家に泊まっていって、その次の日に幼くなってたんだっけ?」

「そう。その幼くなる前の日の夜に渡された物でね……」

「ちょっ、ちょっと待って待って! え、何の話? 全く話しについて行けないんだけど!」


 突然、話に割って入るエミちゃん。その頭には疑問符が浮かんでいる……ように見えた。

 あれ? ピンクちゃんの過去、エミちゃん知らないんだっけ?


「もー、今大事な話してるんだから遮らないでよーエミちゃん」

「いやっ、大事な話ならなおさら内容わかってなきゃダメでしょ!」

「察してよ~」

「察せるわけないよね!?」

「心読んでよ~、ボクでも読めるよ?」

「スターだから読めるんでしょ!?」


「ふ、た、り、と、も?」


 ひぃっ! ピンクちゃん、目が怖いよ!?

 コントを始めた二人はピンクちゃんに睨み付けられると、ビクッとして言い合いをやめた。

 ピンクちゃん凄い。

 彼女は一つため息着くと、自分の過去を手短にエミちゃんに伝える。ここが幼稚園だった事。そこで園長先生と一緒に教師をしていた事。幼稚園が潰れた事。そして、家に帰る前に一旦先生の家に泊まっていき、次の日に突然幼くなってしまった事。

 改めて聞いても信じられないような話で。エミちゃんはぽかんと口を開けていた。


「それで今、その幼くなる前の日にミサンガをもらったってところ」

「はぁ~……うん、何となくわかったよ。ごめん、続けていいよ」


 あらら、エミちゃん唖然としちゃってるよ。

 でも、こうしてさっきまで六年生の姿だったピンクちゃんが目の前で大人の姿になったんだから、信じるほかないよね。

 ……なんか、あり得ないような事が起きすぎてみんな逆に冷静になっちゃってるけど……ここはぼくの空間だからなあ。これ以上おかしな事は起こしたくないんだけど……なんでこううまくいかないというか……タイミングが悪いんだろう。

 ピンクちゃんが話を続ける。


「今の聞いてわかると思うけど、私はこのミサンガをもらってから幼くなった。そしてさっき……元の姿に戻った時、このミサンガが切れたの」

「それって……」

「そのミサンガのせいでお姉ちゃんは小さくなってったって事ー!?」


 ピクちゃんが声を上げる。うん、ぼくもそう言おうとしてたところだよ。

 じゃあ、そのミサンガに幼くなる魔法がかけられていたって事? でも、だとしたら園長先生がピンクちゃんの身体を幼い頃に戻したって事になるよね?


「園長先生がピンクに魔法をかけたって事か……でも何のために?」


 お兄ちゃんも首を捻っている。あ、もうすっかり元の状態に戻ったみたいだね。

 同じように、ピンクちゃんも首を傾げていた。


「それがわからないんだよね……」

「じゃあ、園長は嘘をついてたって事か? 原因がわからねえって言ってただろ?」

「うーん……だけど、嘘をついてたようにも見えなかったって言うか……」

「ルークとスターは心読めるんだろ? 園長が嘘ついてるのとかわかんねえのか?」

「前にも言っただろ。園長の心は読めねえんだ」

「酷いよね~、読ませてくれないんだよ。なんか……鍵かかってるみたいな?」

「へえ……けど、ピンクちゃんには嘘ついているようには見えなかったんだよね?」

「うん」


 エミちゃんの言葉にピンクちゃんは首を縦に振る。それを見たエミちゃんは優しげに微笑んだ。


「じゃあ、きっと嘘はついてないんだよ」

「えー! なんでわかんの~? この天才のボクでさえわかんないんだよ?」

「ほら、言葉がなくても通じ合う人っているじゃん!」

「え、ピンクちゃん先生と通じ合ってんの?」

「え……ないない」


 めちゃくちゃ冷たい表情で返されたんですけどー!? なんか、先生が可哀想になってきた……。

 うーん、やっぱり、先生がピンクちゃんを幼くした理由はわかんないか。本人に聞けばわかると思うけど……いや、でも先生は原因がわからないって言ってたんだよね。ピンクちゃんにはそれが嘘ついているようには見えなかったらしいけど……。んー、ってことは……。


「ミサンガに呪いがかかってたとか……?」

「呪い? お姉ちゃんは呪いにかかってたの!?」

「可能性の一つだけど……あ、でも、先生なら呪いがかかってるって事に気がつくよね?」

「確かに! 先生何でも出来ちゃうもんねー。なら残るは……」


 エミちゃんは言いながら少しの間考え込み、ハッとしたように顔を上げた。


「無意識に魔法をかけてた、とか?」


 …………え?


「無意識……って?」


 予想もしてなかった言葉にピンクちゃんが聞き返す。ぼくも思わずエミちゃんを見つめると、彼女は焦ったように声を発した。


「や、ただの憶測だよ? その幼くなる魔法が先生のものだって仮定して、その先生に心当たりがないとなると……魔法をかけた事を自覚していない。つまり、無意識なのかなって」


 あの先生が無意識に魔法をかけてた? それも、ピンクちゃんに? その理由は? 無意識にやってたとしたら、理由は先生にもわからないのかな?

 やっぱり、わけを求めてしまう。改めて、先生が謎だらけだという事を思い知る。

 だから……何も自分の事を教えてくれないから、こういうとき先生がどんな状態なのか。何処にいるのか、わからない。絶対ここにいる、ここに行ったって、言い切れない。

 先生がぼくの理性だって知って、この世界の神様だって知って……あの人の事、少しは知る事が出来なたような気がした。けれどそれは、ほんのちょこっとだったんだ。


「ぼくは……ううん、ぼく達は、あの人の事、何も知らないんだ……」


 ぽつりと漏れた言葉に沈黙が降りる。

 誰も何も言えない。否定が出来ない。本当の事だから。どうして。ぼく達はずっとあの人のそばにいたのに。あの人に助けてもらったのに。何も知る事が出来てないんだろう……。

 誰もが俯く中、沈黙を破ったのはカイ君だった。


「今からでも遅くないだろ」

「……? カイ君?」

「わかんねえなら、今から知ればいいだろ。教えてくんねえなら、聞きまくればいいだろ」


 真剣みを帯びた目でぼく達を見つめ、彼らしいまっすぐな言葉を発するカイ君。

 ああ……何でこういう時に限って、彼はかっこよくなるんだろう。


「いなくなってからじゃ遅いんだ……だから、おれ達が助けねえと!」

「おいカイ。まだ園長が助けを求めてると決まった訳じゃないだろ」

「だあー! ルークは何でそう言う事言うんだよ! おれ達を待ってるかもしれないだろ!」


 ありゃ、いつものカイ君に戻っちゃった。まあおかげで、沈んでいた空気がなくなったけど。

 でも、そうだね。知らないなら、教えてもらえばいいんだ。それは、今からでも遅くない。

 カイ君は大切な親を亡くしちゃったから、ぼく達よりも強くそう思ってるんだね……。


「うん……ぼくも、これ以上誰かを失いたくない。……ピンクちゃん」

「……?」


 ぼくはすっかり背が高くなってしまったピンクちゃんを見上げる。

 ぼく達は今まで、たくさんの人を失ってしまった。たくさんの悲しみを経験した。それらは、ぼく達を強くしたかもしれない。それでも、ぼくはもうみんなの悲しい顔は見たくない。


「先生の魔法がかかったミサンガが切れた。だから、先生に何かあったんじゃないかって思ったんでしょ?」

「……うん、その通りだよ」


 だったら、ぼく達が動かないと!

 今までは、ずっと先生に頼りっぱなしだった。今度はぼく達が、先生を助ける番だよ!

 そしてぼくは、そのミサンガ以外に先生がいなくなってしまった理由がわかる、かもしれない。


「どういうことだ?」

「ソラ、それってもしかして……」


 ぼくの心を見たスターとルークが反応する。

 みんなが不思議そうにぼくを見つめてきた。

 ……今しかない。真実を……ぼくのやってしまった行為を言わなきゃ。

 本当はもっと落ち着いて話したかった。先生もついている中、全員の前で。でも、ぼくはそうやってタイミングを窺いながら、逃げていたのかもしれない。話す事を、怖がっていたのかもしれない。だったら、今、話さなきゃ。先生がいなくなったのは、もしかしたらぼくのせいかもしれないんだから。今、その可能性に気づいてしまったから……!


「ごめんみんな、こんなタイミングで。でも、ぼくの話を聞いて欲しいの。もしかしたら、ぼくのせいで園長先生がいなくなってしまったのかもしれないから」

「蒼空……」


 心配そうに見つめるお兄ちゃんに頷くと、ぼくはすぅっと冷たい空気を吸い、すべてを話し始めた。

 まずは、この世界がぼくの作り出した空想の世界だって事。みんなはぼくが作り出した人物。みんなの辛い過去も、ぼくが作った。

 そして、現実の世界で苛められたぼくがここに閉じこもった事。その苛めていた人って言うのが、モエカちゃんだって言う事。ぼくは現在、モエカちゃんに狙われている事。そのせいで、園長先生が襲われたんじゃないかって、推測した事。

 そう、モエカちゃんはぼくを絶望させるために園長先生を狙ったんじゃ、って思ったんだ。

 簡単に、だけどわかりやすいように、ぼくはすべてを話した。ラギ君と言っていたのが、お兄ちゃんだって事も。

 さすがにみんなびっくりしてた。そりゃそうだよね……自分達が、人に作り出された存在だって言われたら。ぼくにはどういう気持ちでいるのかわからない。わからない、けど……嫌われたくない。こんなの自分勝手だけど、嫌悪感を抱いちゃうのは当たり前なのかもしれないけど……友達のままでいて欲しい。

 みんなの表情を見るのが怖い。声を、言葉を聞くのが怖い。けれど、これは全部本当の事だから。全部、ぼくがまいた種だから。ちゃんと、向き合わないと。

 ゆっくりと顔を上げる。


「……っ」


 案の定、というべきか。目を逸らされた。みんな、複雑な表情。

 ルークは少し怒っているみたいに、スターとピンクちゃんは困ったように。エミちゃんも、悲しそうに目を伏せていて、ピクちゃんは何か考え込んでいるようだった。

 唯一ぼくを見てくれるのは、話を知っているお兄ちゃんぐらいで……。

 あれ、待って。もう一人、ぼくを見てる人が……。

 パッとそちらに目を向けると、カイ君と目が合う。彼は、目を丸くしていた。


「そんなん、ソラのせいじゃねーだろ」

「え……」


 みんなの視線がカイ君に集まる。カイ君はそんな目を見て、ぼくに対して何も言わないみんなに、ちょっぴり怒ったように言う。


「なんでみんなそんな顔してんだよ。ソラがいなかったら、親は死んでなかったとか思ってんのか? ソラのせいで友達が死んだとか、親に捨てられたとか思ってんのか? チゲーだろ!」


 カイ、君……。


「おれも嫌なこととか悲しーことあったけど、でも、ソラがいなかったらおれ達は生まれてねえんだろ?」

「……!」

「おれは生まれてきてよかったぜ。辛い事もあった。けど、こうやって生きて、みんなと出会えて、笑っていられてんだ。ここが、すっげー楽しいんだ。だから……ソラ」

「……?」

「おれは、お前に感謝してる」

「っ……!」

「難しい事はわかんねえけど、お前はおれ達にいて欲しくて作ったんだろ? だったら、おれはお前の味方、仲間だ。もうソラに悲しい奴を作らせねえ。おれが、お前の力になってやるぜ!」

「カイ、くんっ……!」


 ありがとう……ありがとうっ……!

 声にならない声が口から漏れる。カイ君のニッと歯を見せた笑顔が、滲む。熱い物が一気に込み上げてきて、ぼくの頬をぬらして床に落ちる。ぼくはそれを拭う事も出来ないまま、ただただ感謝を述べた。

 そうしていると、すっと一人、カイ君の肩を叩いた。


「お前、なに一人だけかっこいい事言ってソラ泣かしてんだよ」

「は!? 別に泣かした訳じゃね……ルーク、今おれの事カッコイイって行ったか?」

「言ってねえ。ま、そんなお前だけじゃ心配しかねーから、オレもその仲間になってやるよ」


 ちらっとぼくを見て少しだけ笑ってくれるルーク。二人に続くようにして、他の人達も申し訳なさそうにぼくに声をかけてくれる。


「そうだね、カイ君の言う通りだね。ごめんねソラちゃん。悲しい事ばかり続いてたから、気持ちがネカティブになっちゃったけど……あたしも、ソラちゃんの味方だよ」

「ピンクちゃん……」

「友達として、そして、今は先生として、ソラちゃんをお手伝いをさせて?」

「うんっ……!」

「ソラたん! ピクも、ソラたんが笑って元の世界に帰れるようにサポートするね! 早くえんちょー先生を捜さないとね」

「うん!」

「ゴメン、ソラちゃん。全部、ソラちゃんのせいじゃないのにね……すぐに声掛けられなかったお詫びとして、アタシにも協力させてね」

「うん、うんっ!」

「よかったな、蒼空。お前は、いい友達に恵まれたんだな」


 本当に……。

 ほんとうに、みんな、ありがとう……。


「ありがと……ありがとうっ……!」


 みんなが、大切な友達が見守ってくれる中、ぼくは溢れて止まらない涙をボロボロと流しながら、ただただ、泣き続けた。


 夜の静かな時間、今この場所はとても温かな空気に包まれた、優しげな空間になっていた。

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