第十話 温泉
一ヶ月も更新できなくて、すみません!
時間に余裕が出来てきたので、これからは更新を続けようと思っています!
でも、久しぶり来たらブックマークが十二件になっていてびっくりしました。
読んでくれている方々、本当にありがとうございます!
毎日のんびり過ごしていたら、いつのまにか十一月が終わり、十二月に入った。風が冷たく、朝起きられない季節だ。そして、冬休み、クリスマスがある月でもある。さらに、ぼくの誕生月でもあるんだ!
そんな楽しい冬だけど、今年は大変な事があった。まず、最初の一週間、雪が降ったんだ。いつもはクリスマス辺りに降り始めるのに、今年は早くてびっくりしたよ。ぼく達は大喜びで雪遊びをした。
次の週は雨が降った。積もった雪が溶けて雪崩が起きて、ニュースになってたよ。行方不明者やけが人が出たみたい。この町は山がないから大丈夫だったけど。
そして、三週間目。月、火、水は晴れてたけど、木曜日に大雪が降ったんだ。金曜日は吹雪になって、学校が休校に。もうすごい勢いだった。窓はがたがた揺れるし、寝る時もびゅうびゅうと音が聞こえて、少し怖かったなぁ。
吹雪は三日ぐらい続き、その次の週。孤児園に電話が掛かってきた。学校の先生からで、内容は、通学路も学校の校庭も雪がたくさん積もって、先生も生徒も学校に行ける状況ではない。だから、今年は冬休みを早める、らしい。と言うわけで、十二月二十日、月曜日から、冬休みに入ったんだ! いつもより四日早い冬休み! 学校の先生はすごく困っていたみたいだけど、ぼく達にとってはラッキーだよね。
通知表や持ち帰れなかった物は後で郵送されるらしい。
それで、今日は十二月二十四日。ぼく達は温泉がある旅館に向かっていた。今日から三日間、その旅館に泊まるんだ! 温泉旅行だね!
雪が積もっているはずなのに、ぼく達が乗っている園長先生の車はすいすい進んでいた。実はこの車……浮いているんだよ!? どんな仕組みかはわからないけど、一メートルぐらい積もった雪の上を三センチくらい浮きながら走っているんだ。……うん、もう慣れたよ。先生の周りの不思議な出来事には。
孤児園を出発してから二時間半。旅館に到着した。旅館の人はこの雪の中どうやってきたのかとびっくりしていたけど、先生は笑ってごまかし、旅館の中に入っていった。ぼく達も続く。
大きな廊下を歩いていき、途中で男子達と分かれると、ぼく達は自分の名前が書かれた部屋に入った。ここが今日明日泊まる女子部屋だ。荷物を置き、身体を伸ばす。
んー、疲れた。車に二時間も乗ってるのは結構辛いね。ルークは酔いやすいから大変だっただろうなぁ。
床に座り、ペットボトルの水を飲む。その時、大きな窓に近づいていったピクちゃんが薄いカーテンをシャーッと開けた。そして、声を上げる。
「わあ! 綺麗!」
「あ、ほんとだ! ここも結構雪積もってるんだねー!」
エミちゃんも窓に駆け寄って目を輝かせた。
ぼくもペットボトルを持ったまま窓の外に目を向けた。そこには庭があり、地面に真っ白な雪が積もっていた。立っている木にも雪が乗っている。その雪は誰も踏んだり触ったりしていないのか本当に真っ白で、夕日が当たってキラキラしていた。ピクちゃんの言った通り、とても綺麗だ。
エミちゃんがその光景を携帯で撮っている間、ぼくは荷物の整理を始めた。ペットボトルをしまい、寝間着や歯ブラシ、バスタオルを出しておく。もう夕方だからね。夕ご飯食べたら、すぐに温泉にはいるだろうし。
そうしていると、先生が夕ご飯だと呼びに来た。
返事をして食堂に行くと、早くもスター達がご飯を食べ始めていた。ぼく達も席に着き、夕飯を済ませる。
暖かく、とても美味しい料理だった。
お腹いっぱいなった後はいよいよ温泉! 一番楽しみにしていたんだ! 温泉なんて、久しぶりだもん!
さっき用意したバスタオルと寝間着をもって、ピンクちゃんと一緒に更衣室に向かった。ピクちゃん、エミちゃん、モエカちゃんは先に行っちゃったみたい。
「温泉なんて久しぶりだね。露天風呂もあるみたいだよ」
ぼくが笑いかけると、ピンクちゃんは頷きながら微笑んだ。
「そうなんだ。雪の中の温泉だね」
「あ、そっか。わあ、綺麗だろうなぁ」
どんな感じの温泉なのか予想しながら更衣室に入って、服を脱ぎ、タオルをまく。ぼく達は室内の温泉ではなく、露天風呂に入る事にした。
外に行く扉を開け、温泉に入ろうとする。だけどそこでぼく達は固まってしまった。
湯気が立っている温泉に、モエカちゃんがゆっくりと浸かっていて、ピクちゃんとエミちゃんがバチャバチャ泳いだりお湯を掛けたりしてはしゃいでいた。それは別に不思議じゃない。ぼく達が思わず顔を見合わせたのは、そんな三人の横にスターとカイ君の姿があったからだ。ルーク、ラギ君、先生も温泉に入っている。……もしかして、混浴……?
「あ、ソラ~。遅かったね~」
「ス、スター! ここって混浴なの!?」
「そうだよ。露天風呂は混浴なんだって~」
「えぇ!? 聞いてないよぉ……」
うぅ~、恥ずかしい……タオル捲いてきてよかった……。
「ソラたんも入ろうよ! 温かいよ!」
「そうだよ! 慣れれば大丈夫だって!」
ピクちゃんとピクちゃんが手を振ってくる。何で二人は平気なの……。確かに小さい頃は一緒にお風呂入ったりしてたけどぉ……。
どうする? と言う目でぼくはピンクちゃんを見た。って、ピンクちゃんいない!? あ、もう温泉に入ってる! ピンクちゃん、以外と気にしないんだね!?
ぼくもずっと突っ立っているわけにはいかないし、一人で室内温泉には入りたくない。しょうがない、入ろう。ピクちゃんの言う通り、入ってれば慣れるよね。
ぼくはゆっくりとお湯に足をつけ、肩まで浸かった。
「ふはぁ~……」
あまりの気持ちよさに思わず声が漏れた。身体にお湯がしみこんで、疲れが溶けていくようだよぉ……。
お湯をためている石に寄り掛かり、空を仰ぐ。湯気の向こうに星空が見えた。今日は晴れてるし、空気も澄んでいるから星がよく見えるだろうなぁ。
そんなふうに空を見上げていると、突然顔にお湯がかかってきた。
「うわっ!?」
うぅ……少しお湯飲んじゃったよぉ。
お湯が飛んできた方を見ると、やはりピクちゃんとエミちゃんがじゃれあっていた。ぼくはまたお湯が顔にかからないように二人に背を向ける。
二人とも元気だなぁ。……アニメとかマンガ、ラノベとかではこういうとき、女子は胸を触り合ったりとかしてるよね。現実では、そういうことしないと思うけど……。
とか思っていたぼくに耳に、ピクちゃんの驚いたような声が入ってきた。
「エミちゃん、ほんとに胸おっきいよね! 触っていい?」
「いいよー!」
えぇ!? いいの!?
思わず振り向くと、ピクちゃんがエミちゃんの胸を触り、エミちゃんが触り返すという行為をしていた。え、なに、心読まれた!? って、そんなわけないよね。
それにしても、恥ずかしくないのかな。タオルの上からだけど男子がいるのに。ピクちゃんはまだ五年生だからいいとしても、エミちゃんは中学三年生だよね……?
「やっぱりおっきいね~」
「えー、そうかな。 モエカちゃんの方が大きいよ」
「そんなことないわ。エミちゃんには負けるわよ」
「どっちの胸も大きいよね~」
って、スターが入っちゃ駄目でしょ!? なに三人の間に紛れ込んでるの! さすがのエミちゃんも、スターが伸ばした手は避けたよ!
「カイく~ん!」
「なんだ?」
スター! カイ君を呼ばないの! カイ君も反応しない!
「カイ君も触りなよ。柔らかいよ~。触った事ないけど~」
ないんだね!? いや、あったら変態だけど! カイ君、そんな変態の所に行っちゃ駄目だよ!
「カイ君、触ってみる?」
エミちゃん、悪のりしないで! 駄目でしょ、そんな簡単に触らせちゃ! カイ君は五年生だからって意識してないだけなの!? あーもー、見てられないっ!
「ソラ、そんなに突っ込んでて疲れない?」
スター達が突っ込ませてるんでしょー!?
心の中で突っ込んでいるのに、肩でハァハァと息をしてしまう。ああ、のぼせてきた。そろそろ出よう……。
温泉から上がり、更衣室で着替えてから脱いだ衣服を持つ。その間に、他の女子メンバーも上がってきた。
「先に行くね」
手を振って更衣室を出る。同時に、男子更衣室からラギ君が出てきたのが目に入った。
ラギ君はぼくと目が合うと、顔を背けてぼそりと呟いた。
「女って、大胆なんだな……」
それはエミちゃんだけだよ……ぼくはあんなことできないよ。
ぼく達はまだ消灯まで時間あるからと、少し話をする事にした。飲み物を買って入り口近くにあるソファに座る。この旅館は入ったところがホールのようになっていて、ソファでくつろげるようだった。
ぼくは背もたれに身を預けると、買ったミルクを一口飲んでふぅと息をついた。温まった身体にひんやりとした空気が触れて、とても心地良い。
「温泉気持ちよかったね」
「ああ」
静かな空間にぼくたちの声が響く。
ぼく達はその後は何もしゃべらず、沈黙が続いたが、不意にラギ君が声を発した。
「おれ、こんなことしててもいいのかな?」
「え?」
「ソラ、おれに妹がいる事は話しただろ?」
「うん」
前に、ラギ君は妹を探すために家を出たと言っていた。でも、そこで母親を殺し、シン君に出会ってしまった。
「シンがいなくなって、おれは妹捜しを始めたんだ。だけど、見つけるどころか情報を掴む事も出来ない」
目を伏せるラギ君。
「妹は、どこかで苦しんでいるかもしれない。悲しさ、寂しさ、怯えを感じているかもしれない。それなのに、おれはこうしてのんびりと……」
「なんで、苦しんでいるかもしれないって思ったの?」
ずっと黙ってきていたぼくだったけど、ついラギ君の発言に口を挟んでしまった。
驚いたようにラギ君はぼくを見たけど、また辛そうな表情になってしまう。
「妹は一人だったんだ。友達もいないし、どこにも行く当てがなかった。だから……」
「今は、一人じゃないかもしれないよ?」
「え?」
「ラギ君が妹さんの心配するのはわかる。でも、今も一人とは限らないよ。この世界には、悪い人間もいるけど、いい人間もいるでしょ? もしかしたら、いい友達と出会って、どこかで楽しんでいるかもしれないよ」
「どうして、そう思うんだ」
「ごめん、何となくなの。でもね、そんな気がするんだ」
ぼくがラギ君をじっと見つめて笑いかけると、ラギ君は瞠目してその赤い瞳でぼくを見つめ返した。そして、ふっと笑みを浮かべた。
「そうだな。焦っても、仕方ないよな。……ありがとう」
「ううん。今の言葉、ぼくにも言える事なんだ」
「え、どういうことだ?」
ぼくはラギ君から目を離し、顔を少し上に向けた。今のぼく、さっきのラギ君みたいに遠くを見つめているだろうなぁ、とか思いながら口を開く。
「ぼくもね、お兄ちゃんがいるんだ。でも、今はどこにいるかわからない。ぼく、捨てられちゃって。お兄ちゃんがぼくの事を心配しているかはわからないけど、もし気にしていたら、ぼくの事なんか忘れて今を楽しんで欲しいなって」
お兄ちゃんというのは、前世のお兄ちゃんの事だ。でも、前世の事を話すわけにはいかないから、捨てられたっていうこの世界のことを混ぜてラギ君に話した。
この世界にはお兄ちゃんはいないと思う、多分。生まれ変わったとわかる前に捨てられたから、覚えてないんだけどね。だけど、前世にはお兄ちゃんがいたんだ。
とても優しい人だった。大学一年生で、ぼくを可愛がってくれてて……。
何だか急に、お兄ちゃんのことを聞いて欲しくなってしまい、ぼくは無意識にお兄ちゃんについてを語り出していた。
「お兄ちゃんはね、勇輝って名前なんだけど、その名前の通り勇気のある人だったんだ。何か怖いことがあっても、ぼくを守ってくれてね。優しくて、ぼくを可愛がってくれてて。ぼくより二つ上の、大学……」
そこまでしゃべって、ぼくは慌てて口を閉ざした。あ、危ない……。大学一年生って言おうとしちゃった。ぼく今小学生なのに、大学一年生って……どう考えてもおかしい。というか、二つ年上じゃなくなってるよ。それに、幼い頃に捨てられたのに、こんな覚えてたら変だよね……。
怪しまれていないかな、とラギ君に視線を向けたぼくは、びっくりして目を見開いた。ラギ君が、信じられないような目でぼくを見つめていたからだ。しかも、その目から涙がこぼれ落ちている。
「ら、ラギ君!? どうしたの!?」
慌てて声をかけると、ラギ君はハッとして涙を拭った。目元を隠しながら、ふるふると首を振る。
「ごめん、何でもないんだ。ちょっと、幼い頃のことを思い出しちゃって……」
言いながら立ち上がると、ラギ君はぼくの頭に手を乗せて微笑み、
「おれの話、聞いてくれてありがとな。ちょっと用事思い出したから、部屋に戻るな」
そのままぼくの返事も聞かずに走っていってしまった。どうしたんだろ。ぼく、何か変な事言ったかな? でも、なんだか嬉しそうな声音だったけど……。
不思議に思ったけど、まあいいやとぼくも部屋に戻ったのだった。




