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異世界の孤児園  作者: 宇佐美ときは
第一幕 プロローグ
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第一話 危険人物

 この小説を開いて下さり、ありがとうございます。

 精一杯頑張りますので、温かい目で見守ってくれればと思います。

 更新は一週間に一話は書きたいと思っておりますが、遅くなってしまうかもしれません。

 赤煉瓦の壁が目立つ小さな家の中で、三人の男の子が向かい合っていた。

 壁際にあるソファに座っている茶髪の男の子は机においてある飲み物を口にしており、その隣にいる黒髪の男の子は何もせずにただ俯いている。二人の向かい側のソファに座っている紺色の髪の少年は、二人を見ながら背もたれに身を預けていた。

 時計の針がやけに響く中、少年が唐突に口を開く。


「お母さんとお父さん、死んじゃったんだって?」


 はっとしたように少年を見た後、二人の男の子はコクンと頷いた。その瞳は悲しみに揺れている。どうやら二人は兄弟らしく、数日前に両親が亡くなってしまったらしい。

 少年達はそれから、今後どうするのか話し合った。どこで暮らすのか、金銭はどうするのか、親戚に連絡はしたのか――。四、五歳ぐらいの容姿なのに、まるで大人が話しているかのような内容、話し方だった。

 橙色の光が差し込む時間帯になった。空になった二つのコップを目にした少年は、ソファから腰を浮かせる。男の子達も時計に一瞥し、帰えるためか同様に立ち上がった。

 少年は男の子よりも先に玄関まで歩み寄ると、不意に立ち止まった。


「あ、そうそう」


 振り返った少年は口角をつり上げた。逆光のせいで不気味に見えるその笑みは、幼い子が作る表情ではなかった。

 不思議そうに――否、怪訝そうに少年を見つめる男の子。そんな二人に、笑いを含んだ言葉が浴びせられる。


「君たちの親を殺したの、俺なんだよ」


 ドクン。

 そんな、二人の鼓動が聞こえてくるようだった。

 少年は冗談を言っている。茶髪の男の子はそう思いたかったが、すぐに少年の目が、心が、真実だという事を告げているのがわかった。二人の男の子は、それがわかる能力を持っていた。では何故、このタイミングで告げたのだろうか。その理由も瞬時に理解した。この少年は、自分達の絶望、悲しみ、怒りを楽しんでいるのだと。

 茶髪の男の子は少年を睨み付けた。後ろにいた黒髪の男の子は、頭が追いつかずに呆然と目を見開いている。

 少年はその表情を眺めた後、ドアノブに手をかけた。

 追いかけようと足を踏み出す茶髪の男の子。だがその足は身体を支えることができず、なすすべもなく前屈みに倒れた。その後ろで、同じように黒髪の男の子も倒れ伏す。

 少年が用意した飲み物に薬が仕組まれていたのだろう。茶髪の男の子はそれに気づき、少年を睨め付けたがすぐに意識を手放してしまった。

 瞬間、一陣の風が吹いた。少年が魔法をかけたのだ。周りの風景が赤煉瓦の部屋から大理石の部屋へと姿を変える。木でできた机も白色のソファも、まるで幻想だったかのようになくなった。

 そして、全く違う部屋になった時には、もう少年はそこから姿を消していた。


 日が昇った早朝、茶髪の男の子が目を覚ました。続いて、黒髪の男の子もゆっくりと身体を起こす。

 ぼんやりと辺りを見渡した茶髪の男の子は、はっと思い出したかのように扉に視線を移動させた。そこには、話していた少年の姿はない。男の子はぐっと拳を握りしめる。

 しかし、もう一人の男の子は何があったのか覚えていなかった。拳を握りしめている兄を目にし、首を傾げている。

 そんな弟に茶髪の男の子は驚きを見せたが、詳しいことは話さなかった。ただ何でもないという風に首を振ると、手をつかんで部屋から出て行く。もう、親がいない二人にとってはこの場所――自分達の家では暮らしていけなかった。暮らしていける、安心できる居場所を探すのだろう。

 優しい日の光の中を歩いていく、そんな幼い兄弟を見ながら私は立ち上がった。あの子達は放っておいても成長できるだろう。でも、支えてくれる仲間が必要だ。そして――。

 私は、男の子達と反対の方向に歩いていく紺色の髪の少年を見つめた。少年はこちらには気づいていないようだ。これから何をするのか、何の目的であの子達の親を殺したのか、見当も付かない。けれど、このことはわかる。

 ――あの少年は、危険人物だ。

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