第七夜「誘い……?」
突然、ユウからプロポーズを受けた絢。だが、 バン!
「てんめー!くそ親父!何勝手に、俺の婚約者に手ぇ出してんだよ!」
「あー、とにかくジン。落ちつけて……。」
「本当にユウ様の子には思えん……。」
「多分、あれは元奥さんの悪癖で……。」
大きな音共にジンは大声をあげて話に割り込んできた。
止めに入ってくれるであろう大人三人だが、途中から悪口になってきているような……。
「洸!時雨!妻の事を悪く言うな!大体、ジン!誰がお前の婚約者だと決めた?私は話など聞いておらん!」
「当たり前だ!俺が決めたんだからな!」
「きーさーまー!(怒)」
洸達に講義をした後、ユウとジンは親子喧嘩を始めてしまった……。
「はぁー、まったく。」
「……あ、あの洸さん。」
「はい?」
「少しだけでいいんです。一緒にで、デート……しませんか?」
「え?」
「「えーーーーーーーーーーー!」」
突然の絢からの誘いに洸は硬直……ジンとユウは真っ白な灰になってしまった……。
「おーい?大丈夫かー?ジンー?」
「うむ、これは燃え尽きたな。」
「ていうかまずいんじゃないですか?」
「うん、僕もそう思う。」
この四人だけは平然としていた。
仕事を終えてから、デートをすることになった洸と絢。外はすでに暗く「新月」ということもあるせいか、星がきれいに見えた。
「わぁー、きれいですね。」
「ええ、しかしよろしいのですか?こんな夜遅くまで。」
「ええ、大丈夫です。私の事なんて……。」
「……君はよく似ているね。お蝶さんに。」
「え?母に?」
「ああ、こんな夜に……」
心配する洸だが、絢は何かを隠している、そんな姿を洸はあの人と重ねて……絢の母・蝶を思い出す洸。寂しげに悲しげに洸は空を見上げる。その横顔に、胸を締め付けらえるようなそんな気持ちを絢は……泣きそうになった。
洸はある場所へ向かっていた。絢もそのことに気が付いたが……
ガサッゴソッ ガササッ ごそごそっ と、何者かが尾行していることに気付いた二人。
「絢君、大丈夫かい?」
「は、はい。大丈夫で、……わぁ……。」
追われている間にある小さな丘に着いていた。
「ここは僕のお気に入りの場所なんだ。」
「すごく綺麗です。」
「……うん。」
洸はそっと絢の肩を抱いて自分の方へと寄せる。ビックと、体を震わせるが、洸の冷たい体のはずなのになぜか、なぜだか、温かい温もりに包まれている気がした。
ガサッ、ゴソッ
「ひ、姫君……(涙)」
「あーあー、すげー見せつけてくれるよな。」
「父上、………やはりあの技を身に着けようかな……。」
つけていたのは、ユウ・ジン・慎也。更に奥のほうには皐月・狭雲・時雨・松風がいた。
「こうも遠いと」
「聞こえませんね。」
「全く。」
(やれやれ……)
そう思っている間にも洸と絢は昔話をしていた。 洸と蝶が出会ったとき、本当は駆け落ちをする約束も、「今でも洸は蝶を愛していた。」ということも。
絢は胸が締め付けられるような痛みを感じながらも、洸の話を聞いていた。
話している間が短く感じ、いつの間にか朝日が近づいていた。
「あ……。」
「……もう朝か……あの時も……。」
洸は少しだけ顔を上げ……フッと笑みをこぼすが、その横顔はもう寂しげな顔などしてはいなかった。 どこか、どこか遠くを見つめているような気がした。
が、何かふしぎ…… ガサッがざざざっ!
「「!」」
後ろからの音にびっくりする、洸と絢。
振り返るとそこには松風がいた。
「洸様、そろそろ出勤のお時間です。」
「あぁ、松風か。わかったすぐ行くよ。……絢君、またね。」
洸はもう少し絢といたかったのだろうか、惜しむようにその場を離れた。
絢は洸が離れた後もただ、ただ一人その場に残っていた……
あの時の 母と 同じように
絢とわかれた洸は会社へと出勤していた。副社長室の部屋ではジンと慎也が仕事をしていたが、社長室は書類に埋もれていた。
「……こ、洸。」
「ハァ、兄さん。よくこんなに溜めたね、書類を。」
「ぐふっ……。」
二十分後、お茶を飲んで回復したユウと話をする洸。
「それで、どうだった洸。姫君と話して……。」
「別に、あの人の娘だと思っただけど、……どこか違うよね。」
「そうか……(……どうして、重ねてしまうんだ……洸は。)」
「それで、あの件はどうなっているの?兄さん。」
「あぁ、それは大丈夫だ。時雨たちが見に行っている。」
「それはよかった。……あの子のために。」
「わかっている。あの者たちが幸せに暮らせる時代を願って……」
ユウと洸の言葉の意味とは……ユウが願う時代の幕開けと共に花弁が一枚
一枚と舞い降りる……それは近づいていることは知らない……
一方、洸と別れた絢はフラフラと、街を歩いていた。母もこんな風に歩いていたんだろうかと思いながら……
「絢!」
「?、紘!」
紘に呼ばれ我に返る絢。
なんとなく絢は、帰りを待つ者がいるんだと……少しばかり自覚をする。
「どこ行ってんだよ!お前のおやっさんすげー心配してたんだぜ!!(怒)」
「ご、ごめん、昨日、木戸さんと藍須さんの家にお邪魔してて……」
「……お前……なー、わかってんのかよ!あの家はダメだって!!!」
「ご、ごめん。どうしても聞きたいことがあって……本当にごめんなさい、紘。」
どことなく懐かしいやり取り、絢はなぜか生きていることに実感を覚えた。
紘の怒りの声に、涙をながす。必死に謝る絢を見て、紘は慌て始めた。
「わ、わりぃ。そいうことで泣くなって……俺はそんなに怒ってねぇから……って、あれ?」
「え?、あ!」
絢と紘が見る先には時雨と松風が……。だが、絢たちは何も知らない、後ろに怪しい影が……
「声掛け……絢!」
紘の声が聞こえる前に 鮮明な赤が地面を覆った………。




