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第五夜「暴走」

 

 (?、あれ?お……母さん?どうして……周りが紅いの?どうして?……あなたは……だれ?なんで……そんなかおをするの?どうして泣いているの?ねぇ……どーー)


 「  や、   あや   絢!」

 「っ!……こ、絋? あ、あれ?私……。」

 「良かった。」


 絋の呼ぶ声に目を覚ます。だが、何故絋・ジンが悲しげな顔、ホッとした顔をしていた。絢には何が起きたのかわからずに、上半身を起こそうとするが ズキッ!


 「いっ!」

 「お、おい!大丈夫か。お前ーー」

 「ジン様、絋様。少しお下がりを」

 「け、けど。」


 心配するジン・絋、そんな中執事の格好を、男が中立するが、絋は絢から離れようとしない。


 「臨也。」

 「ああ、わかってるって。松風さん、俺も手伝います。」

 「よし。頼むぞ。行くぞ!幼馴染み!」

 「はっ!!って、お、おい!」


 ジンは二人きりにさせるのはまずいと思い後は臨也に任せ、絋の襟を引っ張りながら部屋を後にする。 バタン。


 「この度は洸様が大変ご迷惑をかけました。私は洸様に仕えし執事の松風 陸と申します。」

 「(松風……)い、いいえ。大丈夫です。あ、あの洸さんは?」

 

 ジン・絋が部屋を出た後、松風は絢に紹介したが、絢は洸が気にしているらしい。なんと言えばいいのだろう。松風・皐月は戸惑い…… 

 

 「………洸様は。」


 一方、洸は?


 「………っ!どうして、どうして!」

 「父上、落ち着いて。あの子は大丈夫だから。」

 「慎也、もういい。」

 「……兄さん。」


 絢の血を吸った後、洸は突然、何かに取り憑かれたように暴れ始め、その場にあった、食器・家具・カーテンに壁を壊した。まるで鋭利な刃物で切り裂いたように二つに壊れた。

 その姿は、何かを欲しがっているのだろうか、それとも飢えた獣のように洸は…… 今は落ち着いているのかはたまた、薬がきれたのか部屋の隅でうずくまるようにそこにいた。

 慎也の声など届いていないのか、ユウの声だけは答えるように返事をした。


 「洸、お前の苦しむ姿は何度見てもいいな……。」

 「このドS!いいから薬を……。」

 「ああ……解っておる。」


ユウから渡された薬を飲む洸。扉から複数の視線を感じた、その視線はなんとも言えない程の痛みで……。


 「!、おお。姫君、体の方は大丈夫か?」

 「は、はい。だ、大丈夫です。」

 

 先ほどまで別室で休んでいた絢。手当を終え松風・皐月と共に戻ってきた。絢達より先に戻っていたジン・絋は慎也と一緒にいた。


 「姫君。この度は申し訳ありま」

 「いいえ。私は大丈夫です。それより、どうして……。」

 「………君には本当の真実を……話さなくては……姫君、心して聞いてくだされ。」



  運命の歯車が加速し始めた。




 「僕には混血の吸血鬼でありながらも純血に負けないくらいの力を持っているんだ。」

 「だが、その力があまりにも強く、洸の力では止めることも出来ず、理性を失ってしまう。」


 落ち着きを取り戻してところで、事件の……洸と絢の真実を語り始めた。そんな中、絢は少しずつあの日のことを思い出していく、それは十一年前のあの日の夜………。



 絢は母と共に、<女性だけで吸血鬼を捕まえよう作戦>を実行していた。


 「いい?絢。お母さんに何があっても、あなたは逃げ切るのよ。」

 「いやだ~、母様も一緒に~。」

 

 母親の言葉を理解しているのだろうか、絢はギュウと手を握りしめる。母親は絢をなだめようと絢と同じ目線に腰を下ろす。


 「絢。泣かないの。あなたはー私のだ」

  

 音もなく黒い闇を纏い吸血鬼は現れた。そして、絢の母“蝶”の首筋を噛み付いた。絢の目の前はきれいな赤い色が黒い何かが母を襲っているように見えた。それでも絢は状況を把握しようとしたが、それすらも追いつかず、その場に座り込む。


 「……こう……さま……あなたを……愛して………。」 

 「………っ。…………蝶殿。」


 母親は最期の言葉を残し、息絶えた。 ドサッ 絢の母“蝶”が倒れたところから、あかくあかく、何かが流れ、絢の小さな手をあかく染めていく。


 「お、かあ、さま?」

 「……大丈夫。君もすぐに。」


 突然、明るく見えた世界が暗くなり、緋い色の瞳が悲しげに見えたと思ったら夜を照らすはずの月が真っ暗の中、紅く輝いていた。

 その後、痛みに襲われ、気を失うかと思われたその時!


   声が   聞こえた。


 「洸!」

  「洸様!」

 「来るな!これは私の!」

 「洸様!おやめください。その方まで失ってしまったら……」


 言い争う声が響く。その声は絢には聞こえない。そんな中ユウは絢に近づく。


 「申し訳なかった。だが、今日という日は何もなかった。君の母親は病死した。わかったか?」

 「……。」

 「大丈夫。もう、痛くはない。」


 そして、ユウの力により絢はその時の記憶を忘れた。それが……



 「それが、あの日の出来事……これが本当の真実だ。」


 ユウから語られた十一年前の真実。これだけ「真実」だと言われ続けられると混乱する、それは彼女たちもそうだ。


 「う、嘘」

 「それじゃあ、絢もいつか吸血鬼になっちまうのかよ!?」


 確信はないが、吸血鬼に噛まれた者は吸血鬼になる。絢が吸血鬼になってしまったかもしれないという疑惑。


 「それはない。あったとしても、私達吸血鬼の血を飲む、それか他の方法でなることだ。だが、女性の吸血鬼は短命で長生きをしているものは数少ない。」


 色々なことのショックの事に声も出せない。


 「けどよ、それ言ったら、臨也達に失礼じゃねぇか?人間さんよ。」

 「は?」

 「確かに、彰たちだって好きでなったわけじゃなんだから。」

 「!」


 絋は絢が吸血鬼になるんじゃないかと、心配するがジンと慎也から「吸血鬼になってしまった者達」の気持ちを聞かされた。


 「ジン!」

 「慎也様。」 

 

 皐月と狭雲は主人であるジン達を呼び止める。本人たちもそれはわかっていることだ。


 「確かに、この血のおかげで、何千年と生ている。そのせいだろうね。」

 「え?」


 臨也は気楽にいうが絢にはなんの事なのか解らない。いや、解るはずもない。


 「さっきの話だ。君の母・蝶さんとは逢引きをしていたんだ。」

 「あ、逢引き?」

 「ああ……。」


 ユウと洸は何かを思い出し、洸は自分とお蝶の関係を話し始めた。


 「洸様……。」


 洸の心配をする付き人・松風が止めに入るが、スッ と洸は手を挙げる。


 「蝶とはただの愚痴をこぼし合う仲間だった。話している内に彼女に惹かれてしまってね。………結婚の話を聞いた時は、その時にでも………。」

 「洸!もう……やめておけ。」


 だが、話をしている途中、洸はすこしばかり怖い事を言い始めた。ユウはそれ以上他の者達に聞かせたくないと思ったのだろう、大声で止めた。 


 「我が姫君よ、申し訳ないが今日はここまでにしてもらえないだろうか。」

 「……は、はい。こちらこそ申し訳ありません。」


 気づけば時間は午後四時をさしていた。

悲しい思いと共に鐘が鳴り始めた。





 「いいのかよ、親父。あいつら……」

 「大丈夫だ。それよりも、こちらの方が面倒事になりそうだ。」

 「?」


 ユウはジンに難しい事を言い、自室へと戻っていく。ジンは首をかしげながらも絢達が通って行った道を眺めていた。




  “あいつは俺のものだ あいつらなんかに   誰がやるもんか! ”



 ガッ!  闇の中、引き裂く音が聞こえる。



 

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