今日は忙しい。忙しくないと困ります。
部署に戻ると、捜査一課の面々は出勤していた。
昨日、容疑者を確保出来たので、取り調べやら送検の準備やらでバタバタし始めていた。
しかし、1人見当たらない人物がいた。
「おい、山崎は?」
近くにいた篠田に聞いてみた。
「山崎なら係長がコンビニ行かせました。
コーヒーのシュガーが切れたみたいですよ。」
コーヒーにミルクとシュガーを入れる草壁にとっては、それはタバコが吸えないのと同じぐらい重要だった。
シュガー切れたのは困る。
「主任、ここ印鑑お願いします。」
強行犯係の最年少の東野が、書類を持ってきた。
「おう。」
こりゃ今日は忙しいな。
そう思いながら、仕事に取り掛かろうとディスクに戻ると丁度、買い出しに行っていた山崎が戻ってきた。
その顔は何処かスッキリしていた…。
(こいつ、吸ってきたな!?)
一言文句を言いたかったが、それを篠田が遮ってしまった。
「山崎!こっちお願い!」
「はぁい。」
篠田に書類の束を渡された山崎は、コンビニ袋を自分のデスクに置くと、書類に目を通した。
自分が吸えてないからといって、山崎に当たるのはちょっと大人気ないか…。
「容疑者が吐きました!」
「裏もバッチリ取れてます!」
「おし!揃ったな。じゃ、送検の用意や!」
「はい!」
うん。今日は忙しい。こう忙しいと逆に助かるかも知れない。
タバコの事を考えずに済みそうだ。
午前中はあっと言う間に過ぎて行き、気付くと時計の針は1時を刺そうとしていた。
「よし!お疲れさん!各自、昼飯行ってくれ。でも何があるか分からんから、電話忘れてんなよ?」
「はい。」
はぁ…疲れた。
「主任、お昼行きますぅ?」
斜め向かいから山崎が声を掛けてきた。
「そうやな…。」
「じゃ、行きましょ。吸えるとこ知ってるんで。」
係で喫煙者が居て良かった。と今日、初めて思えた。




