第2話「こちとらまだ3歳児だぞ?(色んな意味で)①」
魔法。
それは俺の憧れであり、苦痛である。
何故そうなったのか、
その話をするには数日前に戻る必要がある。
──────数日前。
俺はメイスの提案で魔法を教えて貰うことになった。
「じゃあ教えてあげましょうか?」
「お願いします!」
という会話をした後、
メイスは
「着いてきてください」とだけ言い、
どこかに向かった。
数分後着いたのは荒れきった地下室であった。
(うおっすげぇなまぁ予想はできていたが)
ここに来るまでに幾つもの蜘蛛の巣を見てきたことか。
そんな俺の気も知らずにメイスは嬉しそうに話し出す。
「ここは私が子供の頃に坊っちゃまのお母さんと共に遊んでいた超特殊結界防護室です」
(え?『超特殊結界防護室』ーッ!!?)
なんだそれはゴ〇ラとかそういう奴から逃げるために作られた部屋なのか?
とにかく名前がゴツイ。
「あの、、メイスさん?ここで何をするですか?」
「魔法練習です。」
即答。
ニッコリと微笑みながら答える。
(ですよねこんな部屋でやるのか、、と思ってたけどですよね)
そう納得しかけていた所にある一冊の本を渡される。
先程の本だ。
「まずこの本を開いてください」
と真剣な顔で赤髪を上下に揺らしたながら話す。
余りにも簡単な指示に
「こんな事でいいんですか?」と答える。
事実簡単なことなのだ。
超難問の用に言われたので聞いてしまう。
本に手をかけ、開けようと力を入れる。
開かない。
本を破る勢いで力を入れ、歯を食いしばる。
その後数分間どんな方法でも開けることはできなかった。
「まず、魔法というのは魔力があって始めて扱えるものなのです。」
メイスは続ける。
「この本は魔法と同じです。
この本を開くには魔力が必要なんです。」
と俺から本をとりあげ簡単に開いてみせる。
「普通、魔力を感知し始めるのが5歳頃です。」
絶望。
メイスから放たれた言葉によって膝から崩れ落ちる。
(つまり俺には魔法は使えないのか)
悔しさのあまり、拳を無意識に握る。
ただ、メイスは言葉を続ける。
「ただ、魔力を感知しなくても魔法を使えるお手頃な方法があります。」
その言葉に一筋の希望が見えた。
「なんですか!?その方法って!」
顔を上げメイスの顔を純粋な目でみる。
その目にすこしプレッシャーや圧を感じたのか少し目を逸らす。
フゥと息を吐いてこちらを見て口を開く。
「──それは、〝眼〟を変えるんですよ。」
眼を変えるという驚きの選択肢に俺は吐きそうになる。
「実はこの部屋、昔は実験室として使われていて」
メイスはヘラヘラしながら話を続ける。
「この世界には〝魔眼〟と呼ばれる30万人に1人程の確率で産まれてくる特殊な眼が、あるんです。」
余裕そうに聞いていたがどうやら相当やばいことらしい。
実験室。
という単語が出てきた時から警戒心があった。
ただ、メイスはまだ話を続ける。
迷惑な長話だ。
「その魔眼を研究していたのがここです。」
ガチャッとどこかの扉を開け何かを取り出す。
どうやらガラスでできた筒のようなものだった。
中身がよく見えない分、気味が悪い。
「研究の結果魔眼は強制的に魔力を感知させるらしいんです。
どうです?やりますか?」
この時だけメイスの事が血塗られたメイドに見えた。
まぁメイスはあくまで手段を提示しているだけだろうけど
まぁどっちみち5歳まで待つよりは100倍ましだ。
気づけば俺は
「眼を変えたいです」
とメイスに言っていた。
この時の俺は洗脳に近い状態だと思われるほど、無意識に言っていた。
俺の言葉を聞いたメイスは微笑みながら
再び話し始める。
「では坊っちゃまには〝分割眼〟と〝天眼〟の二重構造魔眼はどうでしょう?」
(に、二重構造魔眼だと!かっこよすぎる。
特に名前が)
「はい!それがいいです!」
身を乗り出し、メイスに言う。
「では左眼を見してください」
言われた通り、顔を近づける。
その瞬間。
言葉に出来ない激痛が俺の左眼を侵食する。
「がっああっあ゛ぁああぁぁ」
声にならない叫び声を上げながら、
既に血の海と化した足元に座り込む。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い)
「大丈夫ですよ、坊っちゃまは」
と優しい声で囁き
メイスは先程取り出していたガラス上の筒から何かを取り出し、
普段ならば左眼があった場所に
生々しい音を立てながら何かをはめ込む。
ただ、痛みは治まらない。
するとメイスは俺に手を近づけ、
「フルスペル。」
と、唱える。
すると周りが緑の光で覆われ、
痛みが引き、左眼が馴染んでいくのを感じた。
「え?」
何事も無かったかのような感覚に陥る。
俺は早速立ち上がり魔眼の効果を確かめようとすると、バタッと倒れてしまう。
慣れていないのだろうか、全く自分の体と思えない。
「では開けてみてください。」
そう言ってメイスから本を手渡される。
先程の本だ。
俺は本を開くために力を込める。
すると本を持っている手に何かが通っていくのを感じる。
「わかりますか?」
メイスが優しい声で聞いてくる。
先程までは狂気としか感じなかったが今では天使のような微笑みを感じる。
まるで人が変わったかのようだった。
恐らく急なことで頭が混乱していてあんな悪魔のように見えたのだろう。
本が開く。
先程とは50歩ほど前進した気持ちだ。
「よかったですね」
と俺に向けて拍手をする。
そして間髪入れずに
「では次は魔眼を使いましょう」
と言われる。
「この坊っちゃまに埋め込んだ分割眼の方は特徴的で、もう〝発動〟しています。」
驚いた。
何も変わっていないからだ。
「変わっていないと思いましたか?
この魔眼は1秒を60分割するという能力があります。
つまり今坊っちゃまが見ている1秒は60分割されたものということなのです。」
そこでメイスはすこし息を吸い言葉を発する。
「ですが、それでは意味がありません。
ただ坊っちゃまの記憶の1秒が60分割されているだけです。
そこで〝天眼〟が役に立ちます。
天眼は2、3秒先の未来が見える眼、
つまり、2、3秒先の未来を60分割し、
相手の細かい動きを見逃しにくくなり、
次の攻撃を避ける精度が高くなります。
まぁ坊っちゃまに避けるための身体能力があればの話ですが、」
話は大体わかった。
つまり攻撃が避けやすくなった、、と
天眼の恩恵がデカすぎるし、
分割眼も無能ほどでは無いが弱すぎる気がするな、、、
俺の痛みはこの程度かよ
「魔眼は使いたい時に魔力を込めれば使うことができます。ちなみに私は〝神喰眼〟という魔眼を持っているので魔眼についての説明は私に聞いた方がいいかもしれません。」
神喰眼ってこれまたかっこいい名前だな
「神喰眼ってどんな能力なんですか?」
と聞いたが教えてくれなかった。
どうやらとんでもないものなんだろう。
「では次は坊っちゃまが魔眼を埋め込んだ理由でもある、魔法ですね」
ゴクリ、
つい息を呑む。
「魔法とは、魔力を使い発動するもののことです。」
といいメイスは手から火を出す。
「魔法には詠唱が必要です。
鍛錬すれば必要なくなることもあります。
では、ここに書いてある詠唱を口に出してみてください。
〝出す〟というイメージをしてみるとやりやすいですよ、坊っちゃま」
天使のような微笑みで本のページを開き渡される。
俺はページに書かれている通りの文を口に出し魔力を片手に込める。
「我が炎の片鱗よやがて朽ち果てるまで全うせよ!」
詠唱を唱える。
かなりセンスのある詠唱な気がする。
ただほんとに成功できるのかだけが心配だ。
「ファイヤーボール!」
勢いよく片手を前に突き出し呪文名を叫ぶ。
すると突き出した片手から拳ほどの炎の玉が放たれる。
「凄いですね坊っちゃま!」
とメイスはすぐに駆け寄り頭を撫でる。
ものすごい達成感だ。
嬉しい。
ただ、段々と意識が薄くなる。
「坊っちゃま?坊っちゃま!起きてください」
メイスが必死にゆするが動けない。
数十分後目が覚める。
「大丈夫ですか?坊っちゃま魔力切れを起こして倒れたんですよ」
(まじか3歳児弱すぎるだろ
まぁ、魔力を感知し始めるのが5歳ってところでバランスを保っているんだろうが、)
そんな事があり、俺は無事魔法を習得した。
ただ一つ嫌な予感がすることがある。
「これってあと何回するんですか?」
「50発ほどファイヤーボールを撃っても大丈夫な程ですね」
メイスは冷静に答える。
そうして魔法を使っては気絶の
地獄のトライ&エラーが始まるのだった。




