第5話 拾った少女は思い出がない?
俺は大学が終わると警察署に向かった。
海音をすぐに警察に預けるのではなくて女子高生の捜索願いが出されているかどうか確かめるためだ。
もしも出されていたら海音はすぐに家族のもとに帰れるので1人にはならなくてすむ。
それでいい…
そうやって自分に言い聞かせながら警察署に向かった。
夕方。
俺は家に帰るために帰路についていた。
「早く帰らなきゃな」
俺はそう言って足の速さを早める。
警察署に捜索願いは出されていなかった。
そのことに俺は少し喜んでしまっていた。
好きになってはいけない…
なぜなら彼女は思い出したら全部忘れてしまうから…
変な馴れ合いもだめだ…
しかし俺は心のどこかで仲良くなりたいと思ってしまっていた。
「ただいま」
俺がドアを開けるとすぐに海音がやってきて俺に飛び付いてくる。
「み…海音!?」
「淋しかったです…」
「ごめんな」
俺は海音の頭を撫でる。
すると海音は気持ち良さそうに目を細める。
「あっ!俊さん!見てください!」
そう言って海音は俺の手を引く。
そして部屋まで連れられる。
「こ…これは…」
部屋はきれいに掃除されていた。
「淋しさを紛らわすためにお掃除してみました!どうでしょうか?」
きれいだ…
きれいなのはいい…
だけどなんか嫌な予感がする…
この嫌な予感は一体…
「うん。きれいだよ」
俺は一応そう言っておく。
「あっ…それとですね…」
海音は頬を赤らめる。
「いかがわしい本なんて私見てませんから!俊さんがポニーテールの女の人の本ばかり持ってるなんて知りませんから!」
嫌な予感はこれか…
「…」
「…」
沈黙が続く。
「ご…ご飯作ったんで食べませんか?」
最初に沈黙を破ったのは海音だった。
「あ…ああ」
俺は席につく。
「「いただきます」」
そうして夕食を食べ始める。
「あっ!俊さん」
「ん?」
「冷蔵庫に食材が無いんですが…」
そうだ…
俺はあまり料理なんてしないから冷蔵庫に食材が残っているのが奇跡に等しい…
「明日買いに行こうか」
「はいっ!」
海音は笑顔で言う。
うーん…
料理とかポニーテールの知識はあるのに思い出がない…
きっと思い出の記憶がなくなっているんだ…
早く記憶を戻してあげたいという気持ちと記憶が戻ってほしくないという気持ちが俺の中でうずまいていた。