第4話 拾った少女は1人が嫌い?
「じゃあ俺大学行ってくるから」
俺は家を出ようとする。
キュッ…
服がつかまれる。
「ひ…1人に…しないでください…ひ…1人は怖いです…」
海音が悲しそうな声で言う。
海音の手は震えていた。
人を拒絶しているのに1人になるのが怖い…?
でも大学行かなきゃいけないしな…
どうしよう…
「うーん…管理人さんもいるから大丈夫だよ。それに海音がピンチになったら俺がすぐに駆けつけるから」
俺は海音の頭を撫でる。
今度は拒絶されなかった。
「本当…ですか?」
「うん。本当だよ」
そう言うと海音は服をつかむのをやめた。
「は…早く帰ってきてくださいね…」
「できるだけ早く帰ってくるよ」
「いってらっしゃい!」
海音は笑顔で言った。
「いってきます」
俺も微笑みながら言う。
なんで今回は頭を撫でるのを拒絶しなかったんだろう?
俺が怪しい人じゃないと思った?
こんなに早く?
まあいっか。
そして俺は大学に向かった。
~海音視点~
こ…怖かった…
もし叩かれたらどうしようかと思った。
俊さんは優しく撫でてくれた。
俊さんの手はすごくあったかかった。
すごく安心感を得られた。
でもやっぱり1人は怖い…
俊さん早く帰ってきてくれないかな…
よし!怖いのを紛らわすために掃除をしよう!
そして私は掃除を始めた。
~俊視点~
「俊~」
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえる。
「なんだよ出俺は眠いんだよ」
後ろから俺をよんだのは高校からの友達の日向出。
「眠いだと!?まさか昨日の夜彼女とあんな事やこんな事を…!!」
「別れた」
「へっ?」
「だからその彼女とは別れたって言ってんの」
「またかよ~」
「フラれたんだからしょうがないだろ?」
「それはお前がちゃんと彼女を愛さないからだよ。ってかそれならなんで眠いんだよ」
「朝早く起こされてな…」
「起こされた?誰に?」
「それが…昨日女の子を拾って…」
「エイプリルフールは終わったぞ?」
「いやマジなんだが…」
「…」
「…」
出が俺の肩に手をのせてくる。
「ギャルゲーだな?彼女にフラれたからってギャルゲーに手を出すのはどうかと思うぞ?」
「いや、現実なんだが…」
「…」
「…」
「どこに落ちてたんだ?」
「海で倒れてた」
「警察に届けなさい」
「その子記憶喪失なんだが…」
「なら尚更だ」
そうだよな。
警察に届けなきゃいけないよな…
でもあんなに人を怖がってて大丈夫か?
1人でいるのも怖がってるし。
でも警察のほうが安全だよな。
はあ…
ん?なんでそんなに俺は残念がっているんだ?
まあいっか。
「俊、1つ言っておくぞ。その子は記憶喪失なんだよな?」
「ああ」
「なら絶対に好きになったらだめだぞ?」
「ならないだろうが一応理由を聞いておく」
「俺が狙いたいから」
ゴン!!
「い…痛い」
「これは正義の鉄拳だ」
「まあ冗談はおいといて、記憶喪失ってのは記憶が戻ると記憶喪失中の記憶がなくなるらしい。だからお前がどんなにその子を好きになろうと記憶が戻ったら全部忘れられちまうんだよ」
「そうなのか…」
俺はこの時ショックを受けていたのかもしれない。
多分俺の存在を忘れられるのが嫌だったのかもしれないな…
「とにかくちゃんと警察に届けろよ?」
出はそれだけ言うと帰ってしまった。
あいつ…
かっこつけて今日の講義忘れたな…?




