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第16話 拾った少女の失った記憶?

ここはどこ?


暗い…


俊さんはどこ?


俊さん…


『海音』って私を呼んで。


海音…?


ちがう…


私の名前は海音じゃない…


私は…


坂本真由さかもとまゆ


「……」


私は机を見ていた。


机には酷い言葉の落書きや切り裂かれた教科書がある。


それを私は無言で片付けて席に座る。


「ちょっと視界に入らないでくれない?」


1人の女子に言われる。


「…ごめん」


私はそれだけ言ってそれからその女子を無視した。


「まじうざいんだけどあいつ!!」


はっきり言ってこれは『いじめ』だった。


クラスだけではない学校全体でのいじめ。


教師達も私がいじめられているのに気がついているのに何もしない。


これだから大人は嫌いだ。


私の唯一の味方は友達の平塚麻美ひらつかあさみちゃんだけだった。


麻美ちゃんはいつも私を励ましてくれる唯一の味方だった。


「ひどいよね~なんであんなこと言うんだろうね」


麻美ちゃんは私の席の前にあるイスに座り後ろを向いて言う。


「大丈夫だよ。私はずっと真美のそばにいるから!」


麻美ちゃんは笑ってそう言ってくれた。


「でも…私といると麻美ちゃんまで…」


「大丈夫!私強いもん!」


いつも麻美ちゃんはそう言ってくれる。


麻美ちゃんは私の味方だ。


「ありがとう…」


私は顔を赤らめてそう言う。


「真由かわいい!」


麻美ちゃんは私に抱きついてくる。


こんな生活の中でも私のそばにいてくれる人がいる。


私はそれが唯一の救いだった。


放課後。


家に帰るのがいやだ…


家に私の居場所なんてない。


お父さんが再婚してから私の居場所は再婚相手の居場所となってしまった。


家にいても私の存在は無視される。


学校にも家にも私の居場所なんてない。


それでもこの世界で生きていけるのは麻美ちゃんのおかげ。


麻美ちゃんがいなかったらきっと私はこの世界からいなくなっている。


もうすこしだけ学校にいようかな…


私はそう思い教室に引き返す。


教室ならもう誰もいないはずだから落ち着けるはずだ。


そう思って教室に向かった。


教室から話し声が聞こえる。


やだな…


まだ教室に残ってる人がいたんだ…


私は教室から立ち去ろうとする。


あれ?


麻美ちゃんの声?


私はまた教室に近づく。


「そろそろ裏切ってもいいと思う?」


「あんたあんなに信頼されてるからそろそろ裏切ったら心折れるわね」


「自殺までいくかな?」


「いくんじゃない?」


「じゃあそろそろ裏切ろうかしら」


裏切る?


なにを…?


私は動揺して物音をたててしまった。


「あら?真由じゃない。もしかしてさっきの話聞いてた?」


麻美ちゃんがこっちに来る。


「聞いてたなら好都合っ!私ねあんたのこと大っ嫌いなの!」


麻美ちゃんは笑顔で言う。


「だからわざと真由と仲良くなってそれで裏切って真由の心折って自殺に追い込もうってなったの!」


なにを言っているの…?


「まさかあの時私がじゃんけんに負けるとは思わなくてさ~」


麻美ちゃんが笑顔で言う。


「とにかくあんたそろそろ死んでくれない?」


「っ!!」


私は走り出した。


後ろから笑い声が聞こえた。


やっぱりこの世界には私がいていいところなんてなかったんだ…


私はいつのまにか崖に来ていた。


下は海。


落ちれば死ねるかな…?


私は崖から飛び降りた…



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