第15話 拾った少女の願い事?
「海音…話があるんだ」
俺は夕食を作っている海音を呼ぶ。
「なんですか?」
海音はすぐに俺のところに来る。
「実はな…これから海音には佳奈の家に住んでもらいたいんだ…」
「えっ…?」
「ごめんな」
「ど…どうしてですか?やっぱり私がいるとお金の消費も激しいし…「そんなんじゃないんだ」
俺は海音の言うことを遮って否定する。
「じゃあなんで…」
「俺が海音のことを…襲いそうになってるから…」
「…私は…私はそれでもかまいません!!」
「だめなんだよ!!海音は記憶が戻ったら俺のことを全部忘れる!!それだけじゃない!!出や佳奈みんなで過ごした時間全てを忘れちまうんだよ!!」
「えっ…」
「だから…頼むよ…海音…言うことを聞いてくれ…」
「っ…!!」
海音は家を飛び出す。
「海音!!」
俺は海音を追った。
~海音視点~
私が…私が俊さんのことを忘れる…?
そんなこと絶対にない…!
俊さんは記憶がない私に優しくしてくれた。
俊さんは名前のない私に名前をくれた。
俊さんは真っ白な私を満たしてくれた。
私は俊さんがいてくれるだけで…それだけでよかった。
でも…俊さんは違った。
俊さんは私を大事にしてくれた。
私は大事にしてくれるなら私の願いを聞いてほしかった。
俊さんのそばにずっといたい…
その願いだけを聞いてほしかった。
記憶なんていらない。
私には俊さんがいればそれでよかった。
俊さんがいれば何もいらなかった。
「海音!!危ない!!」
俊さんの声が聞こえた。
その瞬間私の身体が飛んだ。
~俊視点~
海音にトラックがぶつかった。
トラックは悪くなかった。
海音が道路に飛び出してしまったのが悪かった。
俺はすぐに海音のもとに駆け寄る。
「海音!!海音!!」
俺は何度も海音の名前を呼ぶ。
それでも海音は反応してくれない。
「俺は海音が好きだからこうしたのに…!!俺が海音を好きにならなければ俺は海音に佳奈の家に住めなんて言わなかった!!俺が海音を好きにならなければ海音は事故になんかあわなかったのに!!」
俺は海音を抱き上げながら泣き叫ぶ。
「海音!!目を開けてくれよ!!」
~海音視点~
俊さんの泣いている顔が見える…
何度もなにか言っている…
よく聞こえないよ…
でも聞こえる単語があった。
『好き』
その単語だけがはっきりと聞こえた。
私も…私も俊さんが好き…
だから私をそばにおいて…
視界が赤くなってく…
どうしてだろう…
なんか眠いよ…
「俊さん…好き…だよ…」
私は力を振り絞って言う。
それから視界は暗くなった。
~俊視点~
「俊さん…好き…だよ…」
海音が言う。
「海音!!俺も好きだ!!だから…だから目を開けてくれよ!!やっぱりこのまま一緒に暮らそう!!な?」
何度言っても海音は応えてくれない。
遠くにサイレンが聞こえた。




