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性転換転生『♀→♂』したけど、女の子が好きなので百合ハーレム作りたい!!──最強の変態癖主人公と守護者たちの世界征服物語──  作者: 飯屋クウ
第五章 聖なる九将

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二人酒!?

 小宴は、外で行われる──といっても中庭、屋根付きの小部屋(テラス)と言ったところ。


 石砂利の上に立つそれは、風情(ふぜい)(かも)し出し、時がゆっくりと流れるような感覚にさせる。美女と美男、もしくはそのどちらか両方だったならば、演出は際立っていたことだろう。


 だかしかし、ここにいるのはゴツい竜人と普通顔の男。


 洒落(しゃれ)はどちらにも似合わない。


 ただ、帝王ドラゴはこの日のために、()()()()()してきている。


 接待は数え切れないほど経験している筈なのにだ。今回ばかりは相手のご機嫌取りは必要ないが、客人を(もてな)すには、お(あつら)え向きな場所で、それ相応の対応は心得ているし、帝王の立場も忘れてはいない。


 それなのに、蛇人リカクを使ってまで予行演習(シミレーション)する必要があったのは───



(──やはり、良きかな。我の予想は大体合っていた……というものだ)



 帝王ドラゴの向かいに座り酒を飲む男は、事前に得ていた情報以上に、勇ましく格好良い。


 この席に呼んで良かったと思えるほどに、好み(タイプ)なのだ。


 そうつまり、帝王ドラゴは()()()()


 妻が、子が、跡取りが居ない現状もそういう理由からになる。



(体付きも悪くない。細身過ぎるよりかは、これくらいが丁度いい。それに強さもある。もしかすると、我より強いのかもしれんしな──もしそうなら手(ほど)きは逆になるのか?それもまた一興か……)



 妄想は膨らむ。


 久方ぶりの好み(タイプ)に出会えたからというのもある。だが料理を嗜むだけでは、話は進まない。相手の欲しい情報には答えつつ、自分も情報を得て、誘わなければならない。


 本来の帝王としての振る舞いや見定めも必要だ。



(【聖なる九将(ホーリーナイン)】としてもな)



 では、何から話し始めるか?


 相場は、〈天気から〉と決まっていて───



「──今宵は、空が美しいな」

「ん?ああ」


「風情は(たの)しんだりするのか?」

「時折」


「1つ思ったのだが、ジュン征服王、貴殿は転生者か?」

「……」


「身構える必要はない。名前からしてそうだったのでな。()く言う我も転生者だ」

「ほう」


「強い者は転生者であることが多い。それは、【聖なる九将(ホーリーナイン)】も一緒、我らの中で転生していない者は少数だ」

「ふむ」



(えらく反応が薄いな……もしや、知っている情報だったか!?それだとマズいな。同じ話を何度も聞かされるのは我とて好きではない。ここは、征服王の方から質問を待つか?)



 しかし待つだけでは、何とも言えない時間が過ぎていく一方。


 終わりの時間を決めていない分、まだ猶予はあるが、それでも無の時間は減らすべきで───



(向こうも探り中ということか。中々、腹を割って話すのは難しいな……いやこれも予行演習(シミュレーション)では何度もしてきたことだ。慌てる必要はない。そう、じっくりといこう)



「貴殿はかなりの強者と見受ける。連れたる者達もだ。貴殿らの最終目的も変わらず世界征服で合っているか?」

「そうだ」


「そのために、多くを犠牲にしても?無垢(むく)なる者達を殺しても?」

「違うな、だが(おおむ)ね合っている」


「その返答は分かりづらいぞ──だが、まぁいい、気は知れた」

「すまんな。では、こちらからも質問する。お前たちはどの程度強い?」



(おっと、やっと饒舌(じょうぜつ)になったな。酒が回りだした…ということか?)



「我が序列第七位だからな、それ以外の者達も相当強いぞ」

「能力は?」

「全ては把握しておらん。特に()()はな」

「隠れ家は?」

「ワッハッハ。そのような場所はないぞ、征服王。我らは組織と言うが、隠れ家(アジト)なんてものはない。誰がどこに住んでいるかも把握しきれていない」

「ふむ、そうか」

「他に質問はあるかね?」



(流れは悪くない。次の一手こそが重要──)



 そう思い誘い文句を口に出そうとした矢先、突如として天から飛来する影に帝王ドラゴは気付く。



「むっ…」



 同じく気付いた征服王のその隣に腰掛けようとした人物は、二人の()()()()()


 【聖なる九将(ホーリーナイン)】序列第六位、ニシミヤライト、その人であった。








◇◆◇◆◇◆








 呼んでもいない宴席に颯爽(さっそう)と登場したのは、【聖なる九将(ホーリーナイン)】序列第六位ニシミヤライト。


 彼もまた同性愛者であるがために、これは三角関係。


 ニシミヤライトとドラゴは互いの性癖を知っており、今回ばかりは相容れない構図、お互いを敵と見做(みな)している。



「お待たせしました()()、私ニシミヤライト現着しました」

「……陛下?」

「はい!あなた様に仕える下僕(しもべ)でございます」

「おい、ライト!自分が何してるのか分かってるのか?これは戦争だぞ!?」

「ええ、戦争良いでしょう。悪くない響きです。まぁ私が勝って見せますがね」

「我の方が強い」

「下位が何言うんですか?」

「おい、表へ出ろ」

「いいですよ」

「……待て」



 大災害を引き起こしかねない戦争を止めたのは、まさかの征服王。世界は1つ救われたが、この少宴は終わりを迎えようとしている。


 征服王が『帰る』と言い出したからだ。



「なっ、お待ち下さい陛下!まだ始まったばかりですよ。料理だって、まだ沢山ございます」

「そうだ!帰るにはまだ早い。夜はこれから、もう少し楽しもうぞ」



 今度は息が合ったかのように、征服王を席に連れ戻していく。


 終止、『いや、俺は…』などと言っていても、お構い無し。


 ニシミヤライトにも曲げられない想いはあるからだ。ここで引き下がるわけにはいかない。

 

 少宴を終わらせるのは勿体ない。それくらいに気持ちが強いのは、征服王を尊敬し、崇拝し、信仰し、心から愛しているからに違いないのだが、砂漠地帯ジルタフの一件が解決して以降は、雑に扱われてしまい、お目通りが叶うことは一度も無かった。


 近くに居るにも拘らず、擦れ違う日々。恋が、愛が、想いが募るのは致し方なく、心が満たされなければ、行動に出てしまうというもの。



(んっ〜〜やっと、やっと私にも出番が回ってきました!この日をどれだけ待ち望んだことでしょう。この想い、幾星霜ですよ。陛下が内に籠もっているのもあって、中々お目通り叶いませんでした。()()()()厄介すぎて私でも入れないなんて流石としか言いようがありません。感無量でございます陛下……いえ我が君…ふふ)



 2カ月余り一緒の時を過ごせなかった所為で、興奮は収まりきらない。


 能力の特性上、空気に関しても少しばかり操作が可能なニシミヤライトは、悟られないように匂いを嗅ぐ。



(んっ〜、素晴らしく( Amazing!)美しい(beautiful)香りです(fragrance)



 感極まりながらも手足は動かす。料理を装い、美酒を注ぎ、扇子であおぐ。動きに無駄は無く、完成された色男(ホスト)がここに存在する。


 対面の帝王ドラゴが苛立ちを見せるのは、度々勝ち誇った表情をするからだ。



「ライト、一旦そこをどけ」

「何故でしょう?」


「どう見ても征服王は嫌がっているぞ」

「そうなのですか、我が君?」

「我が君!?」

「それに──だ、この場が何の宴席か知らぬだろ?自分が邪魔者だと分からぬか?」

「友好条約ですよね」

「な、何で知って──」

「あなたが考えそうなことくらいわかりますよ。だって私達は()()でしょう?」

「ちっ……ッ、面倒だ。やりづらいことこの上ない」

「ふふん、褒め言葉だと受け取っておきましょう」



 ニシミヤライトが友好条約の話を知っているのは、度を超えたストーキング男だからという理由だけではない。


 言葉は空気を伝う。それこそ、好きな男が関係している単語なら耳に残る。


 それが遥か遠方の地であってもだ。【聖なる九将(ホーリーナイン)】の名は伊達ではない。


 性癖が一般的でない以外は、男としても能力者としても最高峰の()()なのだ。



「──であれば、ライトは征服王に付いた……ということか?」

「ええ、はい」

「認めていない」

「──だそうだぞ」

「私は我が君の、裏の守護者でございますれば」

「……」


「まぁ、その辺はそちらで決めることだ。我は関係せん──だが、同類の(よしみ)で言わさせてもらうならやめた方がいいぞ。征服王、この男はな──」

「ドラゴ、今日の主賓は誰ですか?」

「無論、征服王だが?」

「なら、こんな話より我が君を愉しませるべきでは?」

「……確かに!」



 一時休戦した、帝王ドラゴとニシミヤライト。


 だがここで、征服王が立ち上がる。



「あっ、我が君どちらへ!?」

「……少し、夜風に当たる」

「お供します!」

「いらん!」



 またもや雑に扱われるニシミヤライト。今度は物理的に投げ飛ばされる。普通に考えてダメージは無い筈なのだが、鼻血は出ていた。


 感無量とはこのこと。わざと受けたボディタッチは、功を奏した。



(最高でございます我が君、ふふっ、ふふふふ)



 変態は更にトキメク。





作品を読んでいただきありがとうございます。

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