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性転換転生『♀→♂』したけど、女の子が好きなので百合ハーレム作りたい!!──最強の変態癖主人公と守護者たちの世界征服物語──  作者: 飯屋クウ
第四章 裏切りと契り

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暴君ヴァルカンの幻想

 超弩級の破壊音がするでもなく、兵士や大臣が抵抗虚しくバラバラ死体になるでもなく、それはそこに()()()()


 異様にも馴染み、誰も声を発せない。まるで最初から空席の椅子に座していたかのような佇まいに、時が止まってしまった感覚を覚えるのは、暴君と言われるヴァルカン。



「お前は……?」



 反応は無いし、見向きもしない。この国の王、しかもSランク能力者で暴君でもあり独裁者とも言われた厄介極まりない相手を、目の前にしているのにだ。

 

 知らなかったとしてもだ。それは、無知を通り越して無礼。ここまで侮辱されたことも初めてで、沸々と怒りが込み上げてくる。



爆裂(エクスプロム・)(インパクト)!!」



 ドォン!っと、けたたましい音が炸裂する。兵士や大臣がいたとて、お構い無しの攻撃。壁が剥がれ、窓が割れ、部屋が外へと剥き出しになってもだ。

 

 幾らでも替えは利く、代用品はある。(トップ)さえ優秀であれば、何も問題はないのだが、しかし───



(なんだと?)



 突如現れた存在は無傷。何事も無かったかのように、座り続けている。

 

 否、既に椅子は無い、木っ端微塵。

 

 当たり前だ。ヴァルカンの攻撃はどれも暴力性が高いのだから。


 能力“爆裂(エクスプロム)(・マスター)”は、攻撃全てに爆破と風刃の両方の性質を合わせ持つ。爆破を回避したとしても、風刃まで回避するなど、そう簡単なことではない。


 ましてや、今のは初見。掠り傷一つないのは、どう考えてもおかしい。現に室内はめちゃくちゃ、原形をとどめている物はない。


 であれば、どうやって同じ場所に()することができるのか。



(空気椅子する変質者?戦場で?バカバカしい)



 ヴァルカンの予想は大いに外れる。空気椅子のように見えていただけであって、男の股下からは()()()()が垂直に生えては、男を支えていたからだ。


 それも数本。


 物理的な方法に一瞬笑いが込み上げてくるも、直ぐにそれが悪手だと気付く。


 黒い何かは禍々(まがまが)しい闘気(オーラ)を発するだけでなく、同じ(たぐい)の黒がいくつもいくつも形成されては、男を包んだり纏わりついたりとしているからだ。


 だんだんと、その形状も見えてくる。



「触手か」



 黒い何かは無数の手、触手は何十何百と出現した。



「………ッ、何者だ?」

「征服王」


「やはりか!無知がノコノコ現れたと思ったら新参者だったわけだ」

「………」


「今頃恐れをなしても遅い。お前が飛び込んだ場所は死地だ。挟撃は失敗したやもしれんが、ここで倒せばいいだけのこと」

「挟撃?」


「何も知らずに逝け!─爆裂(エクスプロム)圧縮(・プレス)─!!」



 角印を結び()を叩く。征服王周辺の空間だけが歪み、圧縮されるように縮まり、高熱の超爆発を起こす、ヴァルカンの必殺技の1つ。


 光が、爆発が、風刃が、一点に集中される。対象を絞らなければ、城丸ごと消し飛んだかのような激しい爆発音に地響き。



「死んだか……」



 激光が収縮していく。

 

 骸を、一目見ようとするも───



「はぁ!?」



 暴君にはあるまじき、歯の抜けた奇声が飛び出てしまう。








◇◆◇◆◇◆







 ジュンの闘い方は酷い。これは体術が下手という意味ではない。


 月華(ツキカ)と組手が出来るくらいなのだ。軽快に動けるし、敵の攻撃を捌くこともできる。拳による殴打や蹴り技も普通。


 であれば何が問題なのか。


 その本質は───



(うわぁ、今日もウネウネしてるぅ)



 この触手につきる。


 黒い触手はそれぞれが()()()()を持ち半自動(オート)で動く。


 召喚獣の類に近く、ジュンが攻撃されると何本もの触手が身を挺すかのように守る。


 耐久値はあるが、あってないようなもので破壊されても直ぐに再生、また触先が手の形をしているだけあって、人の身体の一部のように柔軟に動く。


 拳を丸めて打撃したり、首根っこを掴んだり、武器が落ちていれば拾って使ったりと器用だ。


 勿論締め付け技もできるし、ジュンの変態っぷりを体現するかのような(まさぐ)り攻撃も行う。


 痛覚は連動し、感触は伝わる。


 エロオジ目線ではあるが、ハーレムを実現するには相応しい媒体と言える。



(まだ実現してないから、披露してないけどね)




 守護者たちは、誰も触手の存在を知らない。平時は身体という名の亜空間に隠しているためだ。そこまでして秘密にする理由は簡単、触手はエロい。


 変態が扱うとなれば、余計にエロくなる。守護者も美女ばかりで抑えが利かなくなるかもしれない。


 そんな事態を起こさないために、変態を体現した触手はまだ見せられないのだ。


 夢有と月華の要望を断った理由の1つはコレ。


 純粋無垢な2人には目に毒となる。加えて言って、男が使えば品位は下がるし、征服王のイメージはぶっ壊れる。



(だから女体化するまでは見せられないのよ)




 更に詳しく説明すれば、もう1つ理由がある。そもそもの話、ジュンには他に、メインを張れる普段使いできるような攻撃技が無いのだ。


 触手の数は()()だ。


 今は数えられる程度しか出していないが、エネルギーがなくならない限りは無数に生み出すことができる。


 その膨大なエネルギーを、体術等でぶつける攻撃と触手攻撃しかない。


 守護者を創造する力は、あくまでも特殊技。創造の力は自分には反映しない。容姿を変えるのも、強くするのも創造ができる自分以外の存在、つまりは守護者。


 ジュンは紅蓮のように炎は生成できないし、陰牢のように拷問器具は召喚できないのだ。



(私って0か100………いや100か触手しかないのよね。それに、このランクを相手するとなると、ただ触手が動き回ったりするのは煩わしさを与えるだけ………)



 攻撃を振り払い、防御し、翻弄するだけでは、暴君ヴァルカンには勝てない。


 ありったけのエネルギーをぶつければ一番単純なのだが───



(ダメね、被害が大き過ぎる)



 場合によっては、国全域が焦土と化す。他国に2次被害が及ぶ可能性だってある。



(ならやっぱり触手しかないか……)



「顕現せよ、黒き捕食者よ」



 触手の先端、掌に形成されるのは一ツ目と大きな口。


 1本の触手だけではない、全てに目と口が出来上がる。


 数十の触手というよりは、数十の化身。



「喰らえ」



 ジュンの命令により数体の黒き捕食者が、獲物を食そうと飛びかかる。









◇◆◇◆◇◆







 (ことごと)く予想を外している暴君ヴァルカンは戸惑っていた。



(なんだ、あの攻撃は?)



 防御に触手を使うと思いきや、触手単体が攻撃してくる。しかも、それぞれが別行動している(さま)は気色が悪い。意思ある動きを理解できない。



(まさか、触手(あっち)が本体とか言うんじゃないだろうな)



 爆風で“喰らえ”という攻撃を回避することには成功したが、その後も絶えず、ずっと追ってくる。爆破と風刃を身に纏った体術で破壊しても再生は繰り返される上に、伸縮距離にも制限が無い様子。



(ちっ、コレでも食っとけ!)



 適当に投げた家具は直撃───するも、それすらも噛み砕き頬張っていく。まるで、顎の無い生物のよう。



(初撃の技が無意味だったのはこれか?同じように喰われたのか?爆風が!?)



「信じられるかぁ!─爆裂(エクスプロム)砲撃(・キャノン)─!!」




 丸印を結び()を叩く。


 2m近くあるヴァルカンの身体を超える、大球の爆弾が征服王へと着弾す────ることはなく、途中阻んだ触手の大口によって一瞬で飲み込まれる。



「ゲプゥ」

「は、は……はぁ!?」



 これもまた、ヴァルカンの必殺技の1つだった。口をあんぐり状態にしてしまうのも無理はない。それくらい理解に苦しむ状況だ。培ってきた、磨いてきた技が意味を成さないのだ。更には、口ある触手がヴァルカンを煽るように嘲笑う。




「はぁはぁ……ッ」



 恐怖を感じ、頭から敗戦の二文字が離れない。



「くそったれ……、ネル!ネルはいないのか!」

「………はい、ここに」



 静かに声を発したのは、ひっそりと裏の別室にいるヴァルカンの妻ネル。爆発で天井が剥がれ、風の通り道ができているため、声がよく通っている。



「加勢してくれ!」

「それは、無理なご相談です」


「なに!?まさか……」

「はい……」


「何をしているのだ!」

「何って、自分の身を守ったに過ぎませんよ。巨人が現れた直後に能力は発動しました」


「お前、それでも俺の妻か!?」

「ええ、まぁ、残念ながら………」



 壁一枚の会話。互いに顔は見えなくとも、声は届くし、表情は予想できるし、何を考えているかも分かる。ヴァルカンの見出した光が絶望へと変わったことすらも。







◇◆◇◆◇◆







 ジュンは急に始まった夫婦喧嘩を黙って見ていた。そもそも、もう一人居たことに、今になって気づいた。最初に居た兵士たちは、爆発で消し飛んでいるため、誰もいないと思い込んでいたのだ。



(奥さんがいたんだ、へぇ。それにしても、すごい能力ね)



 ジュンは守護者の魂魄を視る要領で、一般人の魂を視ることができる。それすなわち、存在を感知できるといっても過言ではなく、隠れていても位置を把握できたりするのだが、今回は全くもって気づけなかった。



(壁1つ向こう側とはね、奥さんは一旦無視しましょうか──さて……)



「喰らえ」



 再度命令した触手が喰いにかかる。おもむろに反撃したヴァルカンだったが───




「うがああぁぁ!!」



 その手丸ごと食い千切る。


 (ひる)んだ瞬間に足を絡め、胴を締め付け、身動き取れない状況にまでする。



「待ってくれ、頼む、俺には夢があるんだ……」

「………」


「諸国を征し、世界を思うままにする!聖なる九将(ホーリーナイン)だって関係ない!俺と手を組もう征服王!お前となら理解し合えるはずだ!!」

「気持ち悪い」

「なっ……ッ」

「男の涙なぞ特にな、幻想(ゆめ)のまま逝け」

「たすけ──」



 ガブリと喰らいつくのは容赦無用の触手たち。ものの数秒で、ヴァルカンは人でなくなる。血も綺麗さっぱり、ジュースのように吸われ尽くす。頭も残らなければ、骨も残らない。



(うわあぁ、グロい。こんな風になっちゃうから無理なのよ)



 酷い闘い方とはまさにコレのこと、見方を変えれば戦いですらもない。


 ただの残虐。他の誰かに見せられるものではない。



(壁で隔たれてるから見られてない……わよね?本当はあの人も殺るべきなんだけど、それじゃあ誰が統治するのかって話、人材確保もままならない今は、まだ生かしておきましょう。それより──)



「挟撃か」



(きな臭いわね。何故か、紅蓮(グレン)は戦ってるみたいだし、ちょっと様子見に行きましょうかね──にしても、()()()()()、出す必要あるの?超強い敵がいるならまだしも……ねぇ?)




 ネルフェール中心部から遥か遠く、砂漠地帯ジルタフ南部上空には超弩級の火の玉、紅蓮(グレン)の技の1つ、真なる光球(The・Sun)が発動されていた。






作品を読んでいただきありがとうございます。

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