エピソード 月華②
創造主であるジュンが、鍛錬場に赴くことはあまりない。
鍛錬する必要がないほどに強く自己完結しているからだ。
「おつかれ様です!ジュン様!」
溌剌とした声。
さっきまで激しい動作をしていたにも拘らず、響かせることができるのは修行の成果ではなく、彼女の性格による。
その明るさは心を満たす。
ジュンも一つ大きく頷くことで応える。
「もしかして、ボクを手伝ってくれるんですか?」
「たまには、身体動かさないとな」
そうは言うものの、本体[中身の早乙女純(♀)]は全く別のことを考えている。
(くおおおぉぉぉぉ!!元気で天真爛漫な美少女、いつ見てもいいぃ!!しかもボクっ娘属性もGood!!夢有ちゃんと一緒で健気な眼差しなのも好き!太ももの肉付きなんかも丁度いいわぁ、美味しそう…ジュルリっ!イケない!我を忘れるところだったわ!)
相変わらずの変態性。
ジュン(♂)は無表情なので心内はバレていない。
「来い」
「お願いします!」
組手が始まる。
月華の連続技はジュンにクリーンヒットする。
重音が響くも、普段のように顔色一つ変えない。
それもその筈、攻撃を受けた箇所は瞬時に自動治癒される。
月華も理解しているので、構わず攻撃を続ける。
上段フェイクからの下段足払い、右脇腹への蹴りに加えて左からのアッパー。
一見、サンドバッグ状態の一方的ないじめにも見えるが何ら問題はない。
寧ろ、中身の早乙女純は気持ち良く思っている。
(躍動する筋肉!しなやかな脚!揺れる胸!飛び散る汗!吐息と体臭!曇り無き眼!全てが完成されているうぅ!!美少女が至近距離にいるだけで、こんなにもいい匂いがするものなの!?合法的に肌が触れ合うのはありだけど、今の私はジュン(♂)、ほどほどにしないと変態だって思われちゃうかもしれないわね。男の変態ほど気持ち悪い生き物はいないのよ)
「締め付け技もいいですか?」
「……遠慮はいらん」
更なるご褒美に、思考が止まる。
興奮は抑えきれない。
(フゥー、フゥー、フゥー、呼吸を整えて、ここが正念場よ)
密着度は増す。
鍛錬場には2人しかいないことで、今なら襲ってもバレないのではと考えてしまう。
(はぁ、はぁ、はぁ、変な事考えちゃダメよ早乙女純、今は男なんだから、我慢よ我慢。勃起も絶対ダメよ)
月華の考案した締め付け技は見事にキマる。
ジュンは自動治癒で物理も精神もダメージを回復するが、月華と目と鼻が近いことで昇天した。
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