エピソード 陰牢
古城内にある施設の一画、地下には研究所と実験所、それと拷問部屋がある。稼働しているのは実験所と拷問部屋、研究所は稼働していない。研究できるほどの博識な研究員がいないのが理由だ。
勿論それは、今後の守護者創造で配置する予定であるが、ジュンはまだ手を付けない。今は10人の守護者で満足するほど強烈な個性が多いからだ。
そしてここ、拷問部屋にも美女はいる。
黒色長髪で漆黒の衣服を身に纏う拷問部屋管理人、陰牢。
陰牢は賢い。
守護者の中ではトップ3に入るほど頭が良く回転も早い。
また戦闘狂ではないものの、血を見るのが好きで拷問部屋に入り浸ることが多い。
そんな彼女の能力は言うまでもなく、“拷問召術”。
拷問に関する物を瞬時に出現させては敵を甚振る。武器は大鎌を使用しており、黒い陸竜を召喚させ使役することも可能で、紫燕とはまた違ったタイプのバランス型でもある。
普段は酒も嗜むため、“The・大人の美女”を体現した妖艶な守護者。
「う〜ん、硬いわね。いまいち解れてない感じ?」
拷問部屋には数人の人間がいる。
哀れにも、サイコパス気味な拷問官に捕まってしまった罪人達。彼らは古城周辺の街で悪さをしていたのだ。陰牢が気分転換に街を歩いていた際、狼藉を働いた愚かな者共。
「もうすこ〜し、奥までいっちゃいましょうか」
「ギャァァァ!!」
骨が折れ、悲鳴が響き渡るも、お構い無し。
彼らは陰牢の欲求を満たすための玩具。
嬉々として身体を弄くられ、罪人達は、ただ怯えるのみ。
生気を失い、小便をチビる者もいる。
そんな硫黄も立ち込める地下空間の階段をコツコツと歩く一人の男。鼻をつまみながらやってきたのは、古城の主ジュンである。
「お待ちしておりました、ジュン様」
陰牢は丁寧にお辞儀している。
頬にベッタリと付いた血はワザと拭いていない。
「変わりないようだな」
「はい、どうぞこちらへ」
案内された部屋は、罪人達を眺め監視するモニター室。窓越しからでも彼らの様子をしっかりと確認できる。
鍛錬場など共用で使用する場所は施設の拡張などはジュンに申し出る必要があるが、拷問部屋のように管理人がいる場合は、個人判断となっている。
この権限、つまりは管理人として特有の部屋を有しているのは、今のところ頭脳トップ3だけであり、陰牢はそれにあたる。古城を壊さない、経費を無駄使いしないという決まりはあるにしても、その権限があるかどうかは重要性を帯びる。
守護者に地位での区別はない。権限の有無は評価に何も影響はしないが、守護者の間では、そうは思われていない。
羨ましがり、焦りを感じる守護者もいる。
創造者のジュンは、まさかそのような状態になっているとは露ほどにも思っておらず、気分爽快の陰牢に、お茶に誘われてやって来ている。
「どうぞ」
グラスには赤い液体。
頬の血は既に綺麗に拭き取られているが、先程まで罪人達を甚振っていた女性が差し出す飲み物を疑わない理由はない。
「これは?」
「ジュースです」
ジュンが問うたのは、何から抽出したのか。
にっこり微笑み姿を崩さないのは、別の意味で恐ろしい。
(血を見るのが好き設定にはしたけど、飲む設定にはしていないから、葡萄ジュースで確定よね?まさか本当に主に血を飲ませたりしないわよね!?)
ゴクリと唾を飲み込む。
勢い良くグラスを持ち、液体を口の中へと放り込む。芳醇な香りと甘さが口に広がり、美味しさと安心感で満たされた。
「いかがでしたか?」
「美味い!」
「良かったです。葡萄を栽培しておりまして、そちらは今日採れた新鮮な物にございます」
「もう一杯頂こう」
グラスに並々と注がれる葡萄ジュース。
菓子も豪華に用意されており、お茶会は始まる。近くに拷問部屋があるとは思えないほど、華やか且つ異様な空間。
「──では、11人目は創られないので?」
「今は、な」
「畏まりました。いつの日か飲み友が増えることに期待します」
「うむ、暫し待て」
酒を飲める守護者は半数ほどいるが、飲酒を好む者は数人。
式が該当するが、陰牢のような性格ではない。
零は近しい性格だが、多忙で飲み合うような間柄ではない。
あとは可能性として、紅蓮が候補に挙がるが、彼女は一人飲みを好む。陰牢の願いは急を要さないが、理解はできる。
(ミステリアスで色っぽいのって陰牢だけだもんねー。もう一人くらい同じ性格ぽいの創ってもいいけど、私のキャパオーバーなのよね。ハーレムは一旦この10人で、世界征服終わったら追加で5人くらいなら…いや征服中に5人追加しようか……んー悩みどころ)
「──では、そろそろ仕事に戻ります」
要約的には拷問を再会しますということ。
片付け終わった陰牢は悲鳴が飛び交う部屋へと戻る。
その後ろ姿はまさに妖艶。
(あっいい!!お尻エロス!!)
モニター室で守護者の容姿をガン見するジュン───いや、早乙女純だった。
作品を読んでいただきありがとうございます。
作者と癖が一緒でしたら、是非とも評価やブクマお願いします。




