エピソード 月華①
古城敷地内には様々な施設がある。
鍛錬場もその一つ。
地上だけでなく、地下にも複数の鍛錬場が整っており、守護者の面々は日々研鑽を積んでいる。
重力負荷のかかる部屋には一人の守護者。
茶髪ポニーテールがトレードマークの格闘家、月華である。
月華の能力は“組み込み武術”、格闘ゲームにあるようなコマンド技やコンボ技を予め設定し、攻撃時はその組み合わせをなぞることで、必中の効果を得るというもの。
そのため、固定した武術はなく、あらゆる宗派を覚え使用することを可能にしている。
左キック+右パンチ+左回し蹴りなどの攻撃だけでなく、防御・回避・逃走など、あらゆる状況下において、それぞれに対応できる技を何パターンにも用意している。
必中効果では決して相手を倒しきるとは言えないが、彼女ならではの強みであり、短期決戦に強い。
その代わり長期戦は不得意で、その場合の勝敗は運に左右される。
誰しも、得意不得意はある。
長期戦を苦手とする守護者として創造されたからといって、それに甘んじる必要はない。
守護者は成長できるように設定されているのだ。
苦手を克服しようと色々な武術本を読み漁り、自分の戦闘方法と照らし合わせ組み込もうとするのには、そういう理由がある。
「ふぅ、これは相性がよくないかな?」
月華は比較的ポジティブ思考でもある。
無理な技の組み合わせも、時と場合によっては上手くハマるのではと考えたりする。
ゆえに実践が重要視されるのだが、鍛錬場には誰もいない。
組手相手が必要だと考えていたちょうどその時、鍛錬場には、主のジュンが訪れる。
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