こだわり
ジルタフ都市部を出発してから数日、現在地は都市と国境の間、つまりは砂漠のど真ん中で、廃れた建物の近くで休んでいる。
遺跡までの長距離に、“新界”を使用しない理由は、自警団の実力を測っているのと、単純に明確な位置を把握しないと技が不発動に終わるからである。
“新界”のデメリットはそこ、一度行ったことがある場所、もしくは世理の世界観測で事前に位置や地形を把握した場所でないと、始点と終点とを繋げることができない。
また、世界地図でだいたいの位置を把握できたとしても、実際の風景を視認出来なければ使用できない。
これは、ある意味対策でもある。ジュンの技は幾つかあるが、破壊力というよりは術者を最強たらしめる結果に繋がる。
コピーでもされ使われたら、ひとたまりもない。
だから、わざと使い勝手を悪くしている。何処にでも行ける扉が存在しないのには、そういう理由がある。
それに、もし存在したとしても、ジュンはそれを使わない。理由は単純、悪手だと思っているからだ。簡単に現地到着するのは面白くないし、目的地に着くまでの時間にこそ味わえる醍醐味はある。これは、デートに置き換えても同じ。
目的地に着いてからデートが始まるのではない。彼女と彼女が会った瞬間から始まると考えるのが、ジュンとしての説だ。デートスポットを自足で探そうとするのも、そういう理由が関係する。
ただ残念なことに、今回はその醍醐味をまだ、感じられてはいない。何故なら、デートには似つかわしくない、野盗襲撃を4回を受けたからだ。
砂漠地帯は国の目が行き届いていない箇所が至る所にあり、建物が残っている場所には必ずと言っていいほどに野盗が根城にしている。勿論返り討ちにしているので被害は無い。金品は減るどころか増えていく。
その度にヤンが、『取り分だよ』と言ってジュンに渡そうとすが、例のごとく断る。
ジュンが欲しいのは金でも宝石でも地位でも名誉でもない。複数の彼女と自身の女体化だけが願望で、それ以外であるとすれば、世界征服するための人材確保くらいである。
(ナタリーちゃんは候補枠に入れるけどね)
自分の好みは、しっかりとしるしする。デートスポット探し同じく、これも欠かせない。
但し、欲ばかり考えてはいない。自警団の実力をちゃんと測っているし、申し分ないと感じている。野盗襲撃を自警団のみで対処した時もあったからだ。団長のヤンがいなくてもだ。全員が短刀を所持しており、ミズキの指示のもと、能力を使わずとも各個撃破していた。一人一人の練度は高く、人材確保の一環として自警団を丸ごと取り込むのはアリだとも考えている。
(国家の中に軍隊とは別に自警団があるのって便利ね。参考にしよ──っと、ナタリーちゃんだけでなく、ミズキちゃんもいいわね。第一印象はギャルかもって思ったけど、意外とかなりの真面目。ヤンちゃんも素敵)
元女子高生の早乙女純から見れば、ヤンとミズキは年上。
ちゃん付けするのは少しおかしな気がするが、守護者以外の候補枠は、そう呼ぶと決めている。反して守護者に呼び捨てが多いのは、自身の所有対象であると認識しているからであり、これら全ては早乙女純の性癖。
この世の女性は例外(今の所は女王シンディ)を除いて、早乙女純の性対象となりうるのだ。
「さぁ、休憩は終わり、出発と行こう。砂嵐が来る前にね。なぁに、あたしの予想じゃ、あと2日もあれば到着するさ」
ヤンの予測はズバリ的中。
地下遺跡があるとされる目的地には、砂漠には発生しなさそうな、盛り上がった大地が広範囲に渡ってあったからだ。
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