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性転換転生『♀→♂』したけど、女の子が好きなので百合ハーレム作りたい!!──最強の変態癖主人公と守護者たちの世界征服物語──  作者: 飯屋クウ
第三章 砂漠の姫

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小国からの来訪者

 レムハの市場を歩く者が二人、小国レジデントからの来訪者、ユージーンとエリカである。ユージーンとエリカは血の繋がらない兄妹(きょうだい)で年齢は17と16、二人とも腰に双剣を携えている。


 市場に出荷されたばかりの魚や野菜を物色しては、考え込んでいる。



()()()()なら、大丈夫そうだ」

「鮮度も味も勝ってる」



 二人は食材を探しに来たのではない。市場の商品値段を自国と比べているのだ。



「父さんは?」

「分からない、朝から見かけてない」


「またあの、だーつっていうやつかな?」

「かも」



 (シキ)の提案を受け入れ作った娯楽施設の1つ、ダーツ場はかなり人気を博している。客入りは連日止まらず、2号店を出店してほしいとせがまれているほどだ。将来のデートスポットを多分に加味しての製作は、予想を遥かに超えるほどの盛況ぶりで、街の住人からの感謝も増えるばかり。


 式の人気は勿論上昇、あまり街へと降りてこない古城の主ジュンの評価も、更に一段階上がる。そのことを本人が知らないにしても、外部からの来訪者は、ジュンという男が住民に慕われていることに気づく。何故なら、街の中心部には、その男を模した銅像があるからだ。



「立派だよな」

「住民から、また同じような話された、もうお腹いっぱい」



 この銅像、ジュン本人の了承は得られていない。そもそも、知られていない。街の職人が製作したいと申し出て、守護者の(レイ)が承諾しただけに終わっている。




「父さんに打診すべきかな?」

「ウチは賛成、どうせなら()()()()のも作るべき」

「確かに、な」



 母国に銅像を作りたいと話し合う中、遠くから二人の名を呼ぶ者が現れる。



「おーい!お前たち、ここにいたのか」



 二人の父親、モウリである。エリカにとっては義理の父親になる。モウリは、異世界からの転生者でありながら、小国レジデントを治めている。エリカも転生者である可能性が高いが、彼女は記憶喪失を起こしており、自分の名前以外は何も覚えていない。数年前、倒れているところをモウリが拾い、養女としている。エリカ同様に、ユージーンも実の息子ではない。先代の王を失脚させた際、王妃もろとも自害されてしまったため、残された赤子を救っただけだ。当初、赤子の名を変えるべきかは悩んだが、結局はそのままのユージーンとして育てている。


 モウリは医学に精通しており、小国レジデントの医学発展が目覚ましいのは、その伝授のおかげである。レムハに来訪したのも、その医学を伝授しようと考えているからである。


 見返りは求めていない。純粋に属国としての援助であり、他にも献上できる物があればと思い、若い2人を連れて来ているのだ。




「何か良案はあったか?」

「食材を卸すのはどうかな?」

「名案だが、街の産業を潰すのは論外だ。適正価格を見極めてからでも遅くない」

「確かに、浅はかでした」

「ウチは、銅像を作るのがいいと思う、手のひらサイズのとか……」

「悪くない──が、鉱物などの資源はどうするのだ?我が国で量産できるほどの資源はないぞ。それこそまた、外交的な交渉が必要になってくる案件だ」

「むむむ…」

 


 若さとは偉大であり、考えさせるほど想像力は豊かになる。モウリの教育方針は、とても理に適っている。




「──では、改めて散策でもしてくると良い。集合は1時間後に宿屋だぞ」

「「はい!/うん!」」



(そろそろ、出迎えの準備をする頃合いか…)


 ダーツで勝利した景品を袋いっぱいに詰め込んだモウリは、先に宿屋へと行くのだった。








◇◆◇◆◇◆







 古城を経由せずに、レムハへと移動したジュンは、住民への聞き込み後、宿屋へと向かう。住民たちの多くは、かなりの驚きっぷりで賑わいを見せるも、慕われているとは全く思っていないジュンは、何が何だか分からない。芸能人みたいなものと思い込むことにして手を振るが、それが更に熱狂(エスカレート)させているとは露ほども思っていない。



(もしかして、この顔がいいとか?イケメンでもないのに、この世界の人達って単純ねぇ)



 街へ降りたジュンではあるが、実のところは、小国の来訪者について快く思っていない。属国とはいっても、外交官のような職柄ではなく、一国の王が子供を連れて、アポ無し観光しているからである。式典はしていないし、挨拶程度で事が終わるとも思っていない。一人で対処できれば良いが、無理難題な提案を押し付けられ、更にハーレムライフが遠のいてしまうのではと、内心ひやひやしている。



(ふぅ、荷が重いわぁ。もう少し、政治に精通した守護者を創るべきか、そういう人材を確保しないと、これからもっと大変になってきそうね)



 破壊行為ばかりでは、貴重な人材を失うだけ。アリサやグラウスのような者達の確保と育成は、今後の王としての業務を減らすには必要不可欠。



(求人応募でもしてみようかしら?アルバイト感覚でもいいから、数を増やすのはありよね。私だって頑張って挨拶くらいはしようと思うもの。そういう役割だけで雇うのもありかもしれないわね)




 考えを巡らせ、求人応募の案内(デザイン)(レイ)に一任させようと決意するも、これが思わぬ方向へ行くのはまた別の話であり、暫く歩いて宿屋へと到着したジュンは、目的の来訪者の部屋を訪れる。



「お待ちしておりました」



(あら?こっちもアポ無し訪問したのに気づかれてるなんて、やるわね)



 モウリが凄いのではない。窓から街の様子を見ていれば、大方の人間は騒ぎに気づくし、挨拶目的で来訪していれば準備万端というもの。鈍感なのは、変態的なエロい事ばかりを考え脳が侵食されているジュンだけである。



「お初にお目にかかります。私はモウリ、微力ながらレジデントで王の役職に就いております。こちらは息子のユージーンと、娘のエリカです。以後お見知り置きを──」



 丁寧な挨拶に対して、丁寧な返事はできない。寡黙設定は変更しない。ゆえに──



「うむ」



 いつも通りの一言、簡単な作業。挨拶自体はこれで終わりと捉えても差し障りないが、帰る雰囲気には到底ならない。モウリから献上品やら何やらの話が、一向に終わりそうにないからだ。




(はぁ、医学ね。()()()()()()だけど、国民には必要だから受け入れましょう。(レイ)には一応報告しないとだから、戻らないといけないわね。産業面は分からないからパスしておくけど、銅像ってなに?そんな物、了承した記憶ないんだけど……?)




「──でして、同じような物を我が国に作りたいと思っております。紅蓮殿の銅像も建てたいと考えます」

「ほぅ」

「はい、あの御方の強さ、威厳、崇高なお気持ちはどれも感服致しました。3人がかりで挑んだ勝負も完敗でした。紅蓮殿は、能力を使わなかったにですよ」

「ならば許す」

「ははぁ!有難き幸せ!」




(各国の人材確保は、紅蓮に任せていいかもしれないわね)




「それと……でございますが、お聞きしたいことがございます。ジュン様は異世界からの転生者でお間違えないですか?」

「何?」




 異世界転生というワードや、その知識は意外にも世間に広まっており、基本的一般知識として浸透している。これは、この世界で読まれる絵本に転生者についての記述があるからで、絵本の中では『聖なる九将(ホーリーナイン)』の一部が転生者と描かれている。現在も『聖九(ホーリーナイン)』のメンバーに転生者がいるかどうかは世間的に知られていないが、世界に一定数以上存在することには変わりない事実。



「どう思う?」

「中性的なお名前ですので、どちらの可能性もあり、分かりません──ああ、私と……恐らくはエリカも転生者でございます」

「恐らく?」

「エリカは記憶を無くしていますので……」



(記憶喪失かぁ。つまり何を教えてもいいってわけで、教育のしがいがあるってことよね、ふふ、ふふふ────ハッ!イケない、危うく我を忘れるところだったわ。私にはまだ手つかずの守護者たちがいるのよ。エリカちゃんはアリサちゃん同じく、まだ先、そう当分先!)




「なるほどな」

「それでジュン様はどちら──」


「必要か?」

「え?」

「不要だろ」

「まさかそういう……」

「あぁ」

「流石でございます」




 このやり取り、実は全く噛み合っていない。ジュンは『早く帰らせて』という意味を多分に含むも、モウリは『実力こそが物を言う世界だ、身分や出生はただの飾りであり関係ない、暴力こそ秩序であり正義なのだ』、という風に捉えてしまっている。


 それは、連れているユージーンやエリカもそう。目を輝かせてしまっているのが証拠。


 不用意に言葉を減らすことで、勘違い祭りは勃発してしまう。


 寡黙設定をやめない限りは、その可能性が飛躍的にアップするのだが、早乙女純がそれに気づく日は、まだ当分先の話になる。





作品を読んでいただきありがとうございます。

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