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性転換転生『♀→♂』したけど、女の子が好きなので百合ハーレム作りたい!!──最強の変態癖主人公と守護者たちの世界征服物語──  作者: 飯屋クウ
第二章 闇の商人

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装甲黒竜術師



 先に動いたのは乱入者、陰牢(カゲロウ)


 瞬時に闇の商人(ダーク・ブローカー)に接近、大鎌で狙うは首、刈り取れる寸前も細剣(ソード)によって阻まれる。



「あら?」



 対して、闇の商人は連れてきていた部下2人と交代(スイッチ)、大振り後の隙を狙うも───



「ぎゃっ……ッ!」


 

 空振りした大鎌では、防御も回避も迎撃も、不可と判断しての連携技も命中はせず、部下一人が足先だけ拷問器具に(とら)われる。


 玩具箱(カオス・ボルグ)により出現させた数多の拷問器具に限らず、陰牢(カゲロウ)が召喚した()()()()()は、召喚者が消そうと思わない限り、永遠にその場に潜む(トラップ)となる。


 万が一、脱出できたとて終わりではない。首には跡が(のこ)るのだ。これは、召喚者本人しか視えない罰則対象(しるし)


 執行猶予が付いただけ、本当の意味で逃れるには召喚者である陰牢を(ほふ)るしかない。



「ははっ」



 美女の笑い声が響き渡る。



「あーごめんなさいね。貴方達を笑ったわけではないのよ、気分悪くしないでね」



 声と共に、黒い闘気(オーラ)が湧き出、(から)みついていく。



「だって嬉しいの、暫く振りよ。今日は雑魚(デザート)じゃない、大物を狩れる(メインディッシュ)。同僚の世話も終わったし、後は()()()()()()()()だけ!ここからは私だけの時間、ねぇ一緒に楽しみましょう♪」



 ダンスの誘いのように手を差し伸べるが、手に取る者は誰もいない。



「ふふ、残念──」



 足下の影が伸びていき、巨大な召喚円が形成していく。



「小物は()()()が相手なさい」



 名を呼ばれた黒い陸竜(コクド)は、その背後から姿を現す。体長4メートルは超える二足歩行の大蜥蜴(オオトカゲ)にも似た召喚獣は、獲物を見つけ咆哮した。








◇◆◇◆◇◆






 闇の商人(ダーク・ブローカー)陰牢(カゲロウ)が剣戟で争う中、召喚獣コクドと対峙するのはシズクとユグル。


 シズクは転生者、能力は“水銀毒(М・P)”。


 城の水道水に異物を混ぜたのは、彼女の能力。致死性のある水銀を判別できないレベルにまで薄め、組織が使う麻痺毒も混ぜ、城の人間に飲ませた。


 ユグルはこの世界の住人で、能力は“写倒(コピー)”。その名の通り、相手の能力を使用できるという優れものだが、いくつかの使用条件がある。


 彼女が現在使用しているのは、霧隠れ(ミスト)


 シンディの護衛ユフォンの能力をコピーしたもの。コピーの度合いは7割程度に留まるも、召喚獣を相手する程度なら有効で、闇の商人であるカイ同様に細剣(ソード)で応戦する。


聖なる九将(ホーリーナイン)】は正義の味方、且つ能力者で構成された()()とよく言われるが、それは認識間違い。


 組織というよりは俗称に近く、【聖九(ホーリーナイン)】で位階付けされているのは全部で9人。その殆どが部下を持たないでいるのに対し、第四位ギルテは部下を千人以上持つほどの、【聖九(ホーリーナイン)】としてのバランスを崩す存在で、好き勝手しては勢力を広めつつある。


 部下は非能力者を含めた人数であるが、その数は圧倒的で、1つの組織と言って過言ではないほどに成り上がっている。


 能力者は戦闘任務に割り当てられ、外任務となると最低でもBランクが派遣される。能力者の平均レベルは非常に高く、千を超える部下の統率は4名の隊長格が行っている。


 カイも、その一人。


 ユグルの上位互換能力を所持する()()はカイの同僚にあたり、隊長格3名はSランク、1名はSSランクとなる。


 更には、ギルテの部下全員が細剣(ソード)を携行するという極めっぷりで、軍隊のように統率がなされている。


 彼女達が召喚獣と対するのも、初めてではない。始めこそ、拷問器具に翻弄されたものの、()()を召喚しない、ただの物理攻撃のみであれば対応は簡単。


 注意するのは、黒い大爪と太い尾による薙ぎ払いに、口から放出されるエネルギー砲。攻略は難しくないと思われていたが、2対1の有利状況を活かしきれず、倒すのに時間をかけてしまっているのは、召喚獣コクドが単体で動けるほどの知能を有していたからである。拮抗状態は続く。







◇◆◇◆◇◆






 二人の剣戟も続いている。

 

 Sランク同士のぶつかり合いは終わらない。

 

 武器の強度で測れば大鎌の方が有利になるが、陰牢(カゲロウ)には(シキ)のような筋力は無い。それで考えれば、男のカイの方がやや有利になるも、技術面は然程(さほど)変わらず、勝負を決するとすれば能力の差。


 カイは、“付加師(エンチャンター)”。


 火・水・雷・風などの効果をもたらす(ふだ)を自身と武器に付加(エンチャント)する能力。付加重複もできるため、あらゆる応用が可能。


 但し、陰牢のような特殊攻撃には対応しづらい。


 普段有効打となる属性耐性もあまり意味を成さないため、圧倒的な火力で押しきるのが手っ取り早い。カイの火力が勝つか、陰牢の特殊が勝つか、二つに一つ。



火札(ファイヤ)風札(・ウィンド・)付加(エンチャント)



 熱風が細剣を包む、カイ自身の闘気(オーラ)変化する。



弐葬撃(ダブル・ジン)



 時間差のある火と風の斬撃が陰牢(カゲロウ)を狙う。初手の火の斬撃のみ直撃し、風の刃はいなされる。



「何!?」



 斬撃による出血はあっても、火傷は負っていない、火を吸収しているまである。



「耐性を有していると?」

「ご名答、熱いの好みなの」


「面倒ですね、一つ一つ調べていくのは…」

「良いじゃない、時間はたっぷりあるわ。朝まで踊り狂いましょう?」



 誘い口上を拒否するカイは、火の代わりに水を付加する。



「これは効果ありですか……」

()()()、ね。ふふ、殿方からの誘いは受けましょう──天縛の蔦(スケア・ホールド)──」



 カイの頭上には召喚円。


 触手のような無数の白い(ひも)が、自由意思を持って縛ろうと掴みに来る。斬るか避けるか、咄嗟の判断により、後者を選んだカイは正解を引く。


 前者を選んでいた場合、細剣もしくはカイ自身が囚われていた。


 天縛の蔦(スケア・ホールド)は物理攻撃ではなく精神攻撃、紐に触れたら最後、術中に(はま)っていた。



「っ惜しい!もう少しで面白いものが見れたのに!」

「ちっ、本当に面倒ですよ。貴方のような性格(タイプ)と殺し合うのはね」

「そう?私は楽しいわよ」



 カイ達側に、継戦の余裕はない。想定よりも長い時間、城内で戦ってしまっている。目撃者が増える確率は上がり、問題も生じやすくなる。 


 そうなっては不本意、長期戦は不可、遊びに付き合うのも不可、一刻も早く決着をつける必要がある。


 ゆえに、カイは水・風に加えて雷を付加する。



参葬撃(トリプル・ジン)!」


月夜の踊り子(ムーン・ワルツ)



 水風雷の斬撃を上下左右の4層と計12本の刃を放つも、舞踏会のような踊りと満月のような弧を描く回転斬りにより、全てが弾かれ、(えぐ)られたのは壁や飾りなどの無機物の(たぐい)。渾身の連撃は(かす)りもしない。



「っ……」

「ねぇ、こんなもの?まだあるわよね?」


「ふぅ、大変申し訳ありませんが、()()()を使わせていただきます──」



 カイは黒白の札を出す。



生死札(ライフ・デス・)付加(エンチャント)



 そして───



「えっ───」



 ドスッという鈍い音が室内に響く。カイの細剣が貫いたのは、ユグルの背中、心臓部。



「あっ──っ……さ、ま…」



 倒れ込むユグルに、シズクは慌てる。



「カイ様!恐れながら、お止めください!」

「心配しないでいいですよ、これは()()()()しか使えませんから」



 細剣を伝うのはユグルの血───だけではない。そのエネルギーと一定時間は()()も得る、カイの必殺技。

 

 ユフォンの霧隠れ(ミスト)も使用可能。

 カイの基本値(ステータス)は増々上昇していく。



「へぇ、意外とこっち側なのね」

「それはどういう意味でしょうか。そもそも貴方に評価される(いわ)れはありません」



 強化したカイは疲労も回復し、掠り傷も治癒。

 

 その一方、陰牢は初撃の斬撃で服に血が滲んでいる。これで、カイの勝利は揺るぎないものと思われたがしかし───



「なら私も少しは…、そう少しは本気を出しましょう──装甲(アーマード・)黒竜術師(ブラックマジシャン)──」



 召喚獣コクドが黒い光に包まれたと同時に、陰牢もまた黒い光に包まれる。


 嵐のような渦巻きのあと、やがて生まれ()でたのは、漆黒の鎧に身を包んだ竜人。


 顔と爪はコクドに似た|()()()、陰牢の必殺技である。






◇◆◇◆◇◆






 戦況は一方的。

 防戦一方なのはカイとシズク、押されるがままになっている。



「──ぇ!」



 重量は増し───



「ねぇ!」



 爪撃は硬く───



「ねぇねぇ!!」



 砲撃を放ち───



「ねぇねぇねぇ!!!」



 器具も変わらず召喚し───



「聞いてる聴いてる効いてる???」



 更には飛行も可能とし───



「ははははハハハハ破破破破!!!」



 縦横無尽に連撃をくり返す───



「痛い?悲しい?楽しい?好き?嫌い?生きたい?どうしたい?ねぇ!ねぇ!ねぇ!!」



 狂喜乱舞の貴婦人。



「この姿になると醜いのよ、でもやめられないのよ、楽しいのよ、世界が!今!私の!手の!中に!あるの!」



 カイの霧隠れ(ミスト)は全く効果なし。


 理由は単純明快。


 初手の玩具箱(カオス・ボルグ)を受けたユグルの罰則対象(しるし)を、カイが引き継いだからだ。


 隠れても離れても居場所は特定される。狂人からは決して逃れられない。



「あれれ??お嬢さんは、もう終わり??」



 シズクは虫の息。カイも、立っているのがやっとなくらいに疲弊している。



「本国には……はぁ、連絡しているんですよ」

「だから?」


「それを取り止めてもいいんですよ。こちらの、条件さえのむなら──」

「それってあの、()()()()()()()のこと??」

「なっ──んで……?」



 

 祭事(イベント)が終わってから、カイは本国へ情報伝達員を走らせていた。その者は能力者であり、失敗に終わる可能性は無いに等しかった。



(ならばいつから……)



 気づかれ監視されていたのはどの段階からか、場合によっては、組織【S】の脅威度を大幅に引き上げる必要もあると思うカイだったが、もうここから逃げ延びる方法も思い付かなかった。




「そんなのどうだっていいじゃない。今は私と貴方、あの男はもう……死んでると思うわよ」

「……っ、のようですね」



 望みは絶たれた。生きて本国へ帰還することは不可能。ただ、カイは絶望はしない、命乞いもしない。


 それが、ギルテに仕える隊長格としての器。加えて、まだ良心もある。



「貴方には負けましたよ。ですが、1つお願いが──彼女……シズクは助けてもらえませんか?」



 ユグルを手にかけたにも拘らず、シズクは見逃してほしいと懇願する。傲慢不遜と捉えてしまうが、あの時は勝利するには必要な行為と判断した。


 結果は惨敗も、カイにとっては考えうる最良の手立てだったのだ。部下を刺して愉悦するような、狂気染みた趣味は彼には無い。


 それに部下を助けることができれば、自分の敬愛する御方のために働いてもらえるというもの、カイの選択は、理に適っているが、しかし───




「いいわよ──有実の誓約(リアル・ペイン)──」



 直後、シズクの首筋に()()が浮かび上がる。まるでそれは、黒蝶の入れ墨の様。



「な、何を!」

「別に大したことじゃないのよ、ただ向こう10年真面目に働いたら還してあげるって条件を付けただけよ」 


「それでは──」

「貴方の願いは聞き入れたでしょう?たかが10年、私達のために働いてくれればいいだけじゃない」

「──っ、この悪魔、いや魔人め!!」





 陰牢は、嘘を言っていない。


 有実の誓約(リアル・ペイン)を受けた者は、術者の陰牢(カゲロウ)が死なない限り、死ぬことは無い。10年間シズクが受けたダメージは陰牢に入る。


 無論、()()()()()()()。黒蝶の入れ墨により、働く間は命を保証され、衣食住も与えられる。


 今回、事が上手く運ばなかったのは、紛れも無くカイ自身の所為(せい)、陰牢の本質を(いま)だ見抜けていなかったのだ。



「さぁーて、縁も(たけなわ)!今宵は締め括りましょう!」



鉄の騎士(アイアン・ナイト)

終わりの歌(エンド・ワールド)



 カイは鉄格子(てつごうし)に囚われ、竜人化した陰牢の咆哮は、超巨大なエネルギー砲と化す。


 吊るされたカイもろとも包み込み、天井を破壊、空にまで届く砲撃は雲を晴らした。半壊した城に差し込むは、月光。




「きれぃ……」



 ポツリと呟くのは、少女。



「貴方も風情が分かるのね──そうだわ、()()()()()()、これからは切磋琢磨しなさい。貴方()にも、ジュン様に貢献できるチャンスを与えましょう」




 轟音響く中、運良く生を掴んだ彼女もまた、数奇な運命に巻き込まれる。


 大会のブチ壊し、【聖九(ホーリーナイン)】との接敵、城の半壊、商国シンディ征服における事の顛末をジュンが知ったのは、それから数日経ってのことだった。






作品を読んでいただきありがとうございます。

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