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性転換転生『♀→♂』したけど、女の子が好きなので百合ハーレム作りたい!!──最強の変態癖主人公と守護者たちの世界征服物語──  作者: 飯屋クウ
第二章 闇の商人

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復興支援



 山道で倒れていた少女の家を探すべく、ジュンは一度、古城へと戻る。あの後直ぐにまた、少女が気絶したからだ。


 守護者の世理(セリ)に、山合近くの情報を聞く次いで、食糧と医療品を運ぶ。幸いにも中央部の備蓄は腐るほど有り余っているし、古城内で生産している分の余裕もある。


 大量に持ち運ぶ要員として、(シキ)も荷物運びを手伝っている。



「近場でいうと、この辺りでしょうか。他には集落のような場所は見当たりませんし、強者も近辺には確認できませんでしたので、わざわざ報告する必要もないかと思いました。失礼致しました」

「よい、助かる」



 改めて情報を聞き終えたジュンは、新界(ニューゲート)を再度発動する。


 この行き帰り、さすがに徒歩ではない。少女の命が危機に扮しているのだ。これくらいは大目に見て問題はない。



「待たせた」

「お戻り早々恐縮ですが、紫燕が少し先で人を数名見かけたようです。その辺りに家屋などがあったそうで、世理の位置情報と照合して一致していれば向かいますか?」

「うむ」



 一行は気絶中の少女を担ぎ山を下る。


 暫くして、ジュンも紫燕(シエン)が発見したであろう人の姿を目視する。目が合うやいなや、食糧を略奪するかのような勢い。


 実際には少女の状況を確認しに来ただけであり、事無きを得るも、内心ビクビクしていたのは早乙女純だけで、守護者は誰も警戒していなかった様子。



(ふふ、私も知ってたけどね。敢えて、そう敢えてね、全員無警戒は良くないわよ)



 嘘である。挙動不審を顔に出さないのは、普段の演技の賜物と言えるだろう。


 寡黙な男設定は、なんとか続けられている。

 ただそうはいっても、この状況で何も喋らないのはマズい。


 柔軟に察知するメイドはいないが、ジュンは試しに目配せしてみる。それには陰牢(カゲロウ)も気づいたよう。



「貴方達は、この少女のお知り合い?」

「はい、アリサは私共の仲間、村の者です」



 答えたのは痩せこけた男。



「そうそれは僥倖(ぎょうこう)。私達は少女含め貴方達を助けようと一考しています。よろしければ、村までご一緒しても?」

「願ってもないお言葉!是非ともお願いします!」



 陰牢の交渉は完璧で非の打ち所がない。

 ジュンは改めて采配に間違いはなかったと内心喜んでいた。



(陰牢が居てくれてよかったあぁ。これがもし、零だったら深読みしすぎていたかもしれないし、紅蓮だと高圧的だったかもだし、そもそも式と喧嘩してた可能性があるしで……流石は私、最高の采配ね)



 自分に酔いしれつつ、村人の後をついて歩くこと数分、村落の集会所らしき場所に案内される。室内は人で密集、怪我人もいて、足の踏み場もない。


 装いの違うジュン達を物珍しく見る者もいれば、食糧に驚き唾を飲み込む者もいる。誰かに挨拶することもなく、一瞬にして彼らに持参した食糧や医療品は行き渡った。この辺りでは手に入らない代物もあり、村人全員がジュン達に感謝を伝えている。


 衰弱した少女も目を覚ます。最初こそ、キョトンとした表情だったが、次第に状況を理解していき、空腹状態だったことも思い出し、勢い良く頬張っていく。山で流したよりも大量の涙を目に滲ませ、少女を囲む村人も一緒になって泣いている。


 あれでは折角の食糧も調味料要らずの塩味でしかないが、本人達が喜んでいるならば良し。


 ()()も予定通り作ることができ、お暇しようと考えていた時、村のまとめ役らしき人物が挨拶にやって来る。



「私、ここの村落の(おさ)をしております、ズイと申します。この度は、村人一同感謝しきれません。お礼をしたいところですが、火事で多くを失いました。蓄えていた作物は全て燃え、家屋が灰にならなかったのは奇跡としか言いようがありません。今直ぐに何か礼をすることはできませんが、後日…いえもしかしたら半年以上先かもしれませんが、その際に献上をするということで構いませんか?それと、貴方様の名前をお聞きしても?」

「ジュンだ、礼はいらん」

「で、ですがっ!」



(あれ、これで合ってるよね?借りは作るけど、お礼は受け取らない方針でいいんだよね?)



 再度目配せを試みるも、頼みの綱の陰牢は何も言わない。


 村長ズイは、『それは困ります』などと言い、ずっと膝を付き頭を下げている。


 このままでは堂々巡り。仕方なく、自分の中で考えうる限りの回答をしていく。但し、寡黙設定は忘れない。



「献上品は不要」

「では何をお求めで?」

「何も求めぬ」

「もしや、()()()ですか?」

「!?」

「連れている方達を見れば一目瞭然ですぞ。お連れ様ほどの美形は無理でしょうが、もしよろしければ、私共の仲間、アリサはどうでしょうか?彼女は身内もおりませぬゆえ、ジュン殿のお眼鏡に叶うならと思うのですが、御一考いただけませんか?」



(おおっとぉ、そうきたかあぁ。これで私のハーレムライフ大躍進ね───とはいかないのよね。守護者の10人で今は手一杯だし、キープならありだけど、今直ぐお持ち帰りするのはねぇ。唯壊あたりに怒られそうだし、なにより女子を持っていくって大悪党がやりそうじゃない?世界征服することは了承したけど、略奪心はあまりないのよ)



「私でよければ喜んで、この身お渡しします」

「!?」




(いやいやちょっと待ってねぇ、アリサちゃ──んだっけか。そんな眼差しで見つめられるのはすっごく嬉しいのだけど、私は男じゃないの、女なの。だから、アリサちゃんが考えてるような白馬の王子様みたいなことにはならないからね)



 とは言うものの、2人の気持ちは変わりそうになく、折れそうにない雰囲気を察してか、やっと陰牢が横入りする。



「脇から失礼します。このままでは(らち)が明きませんので、この件は一旦保留でよろしいですか?それと場合によっては、別の形で支援を請いたいと思っております」

「別……支援…?」

「はい」



 陰牢はジュンの耳元で、『あとはお任せください』とだけ言い、ズイとアリサを連れ、別室へと向かう。


 残された3人はというと、ポツンと集会所で(たたず)んでいる。村人達から身分やら色々と根掘り葉掘り聞かれるも、世界征服の途中などとは決して言えない。


 口が裂けても言えないが、(シキ)は危うい。際どい発言をする度に、紫燕(シエン)が止めに入り、それでも止まらない場合は、見慣れない武器を見せたりと村人の目を引くようにしている。


 その光景にジュンは、紫燕が苦労人であることを知った。


 陰牢が戻ってきたのは、それから少し経ってからだった。村長ズイとの話はまとまったようで、笑顔でジュンの隣へとやって来たが、これで終わりではなく、今度は別の場所へと案内される。


 そこは村の中心ではなく、山合にほどよく近い場所、まだ焼け焦げた匂いの残るその場所には、何かの建物が建っていた形跡があった。



「ここは教会だったようです」

「……私が住んでいました」



 悲しそうに、思い詰めたように言うアリサ。



「こちらの提案をのむ代わりに、この教会を再建してほしいという申し出を受けました。聞いた所によれば、この建築様式に近い資材は中央部にもあると思われますので可能かと。私達の中で建築に秀でた守護者はいませんが、知識で言えば紫燕は妥当であると判断しますし、人手は式1人で十分かと思われます」

「なるほど」

「それと──」



 陰牢は、少し離れた所で話したいと主のジュンに伝える。承諾したジュンは、式と紫燕がアリサに建物の構造を聞いている間に、距離を置いて話を聞く。



「あの者達に、お願いした1つは関所の役割です。ここは一番我が国の南部に近いですから、丁度よいと思った次第です。関所の雰囲気は、まるでありませんので、その辺りは追々にでも。もう1つは支援物資の供給です。今直ぐではなくとも、恒久的に集荷した作物を卸すという契約です。こちらについては、正式な文書は後日としています。最後に彼女自身のことですが、どうやら能力者で人への回復ができるそうです。おそらく、Eランク程度で能力者としては不要な存在ですが、普通の兵士の治療には役立てるかと。南部にはグラウスという都市長がいるとか、零が使いっぱしりにしていると聞いておりますが、その者と引き合わせ南部復興、ゆくゆくは部隊を持てるまでに成長させられればと思っております。それと現段階では、ジュン様の傍付にはなりえませんとも答えております」

「ふむ」



(あらやだ有能すぎる。逆に怖いわ。零じゃなくて陰牢を横に置こうかしら?いやでもやっぱりメイド服は零が一番似合っているし、陰牢は漆黒が似合ってるものねぇ。難しいわん)



「私達が、征服者であることは伝え済みです」

「え?」



(え??私達があんなに口止めしたのに!?紫燕の頑張りが無駄になっちゃったじゃない)



「ですが、ご安心ください。山火事は旧バルブメント王国の兵士が独断で実行したと伝えています。詳しい設定としては、窮地に追い込まれた南部軍は、打開作のために商国シンディの軍を雪崩込ませ、戦場を拮抗化、停戦に持ち込むべきと思案し、放火作戦に至った、としています。これで、グラウスに非難が及ぶこともないでしょう」

「さ……すがの手腕だな」

「いえ、ジュン様には遠く及びません」



(いや何が!?私何にもしてないよね!ただの女子高生だから、買い被りはよくないわよ)



 陰牢が何を言っているのか、ジュンは心当たりがないが、なにはともあれ一安心、采配も完璧だったと言える。


 村への訪れはきっかけに過ぎないが、これにより商国シンディ攻略物語は進んでいく。






作品を読んでいただきありがとうございます。

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