シスター『アリサ』
村落の朝は早い。食事の準備に、家畜の餌やりなど、全員が早くから起きている。
彼らの多くは農業に従事しており、自給自足の生活。作物を販売するなどして稼ぐ者は殆どいない。ここは辺境の地、街や都市部からは随分と離れており、行き来するための交通手段は徒歩が主流となる。馬車などを購入・貸借すれば楽にはなるだろうが、そもそもの話、その資金がない。
したがって、費用の安い徒歩での移動となるが、売れる物があるとすれば、保存期間の長い作物のみ。その多くは旬などの無い作物ばかりとなるため、売れる見込みも少ない。
結果、効率や相対費用から鑑みても割には合わない。外に出る必要がなければ、自給自足をするしかない。世代を重ね、人が変わってもそれは同じ。村落の生活様式は昔と何ら変わっていない。
そんな村落でも1つの景観と言うべきか、他とは一線を画す建物がある。白塗りの壁に所々には小さな窓、正面に扉が一つあり、敷地内には花が植えられ、それらを囲うように柵がある。村長宅よりも高い丘に建てられており、かなり目立つ。ある意味この村落には似つかわしくないといえる、その建物の答えは教会。
住むのは少女、名をアリサ。
彼女の家は、代々神父の役割を担い、教会の習わしを行ってきた。以前は他にも家族がいたが、現在は彼女一人だけ、受け継がれてきた祭服を着ては、毎朝毎夜、彼女の信仰する神に祈りを捧げてきた。その信仰心もあってか、村落が災害に見舞われるなどの大事は、彼女が産まれてから15年間だけでなく、数十年発生しなかった。
しかし最近になって、村落を揺るがす大事件は起きた。安心しきっていた部分はあった。備えを怠っていたというのもあった。
その大事件とは山火事。
村落の後方にある山々が燃え上がったのだ。一瞬の出来事に彼女達は慌て、火の手の届かない場所へと避難、炎が鎮火してから村落へと戻ってきた。幸いにも家屋は燃えておらず、被害は作物と火傷を負った者達かと思いきや、教会だけは跡形もなくなっていた。
原因は、教会が一番山合に近かったから。
思い出は燃え尽きたが、アリサは途方に暮れない。そうする暇があるならば、一人でも多くを救うよう父親から言われてきたからだ。
運命的にもアリサは能力者だった。
しかも能力は、“回復師”、傷を癒す能力である。この一大事に最適な能力であり、知恵と植物だけで治療をしてきた村落にとっては貴重な人材と言えよう。
但し、残念なことに、彼女は能力者としての技を磨いてこなかった。戦場に身を置くわけではないのだから致し方ないが、それでは能力は成長しない。つまり、彼女の治療技では、重症者の延命はできても完治には至らない。
これでは宝の持ち腐れ。都市部の医者に任せる方が良いが、資金もなければ移動手段もない。
そして、さらに事態は悪化する。作物が焼けた今、備蓄品だけでは村人全員の食糧を確保できない。空腹はしだいに飢えへと変わっていった。
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