扉の先に待つ者
亜空間を通り抜け、王城正面入口へと到着する一行。訪問歴がなくとも指定した場所へと行けるこの技は、ジュンの中でもかなり重宝されている。
世理が行う世界観測により、位置情報を事前把握しているからこそ可能としているが、これもまたぶっ壊れ技と言えよう。
王国中央部の街並みは至って普通の洋風。
普段であればもう少し活気のある城下町も、戦時下で敗戦が色濃く伝わっているためか閑散としている。
窓を閉めた家々が多く、人通りも少ない。
一行は歓迎されていない城門を潜り抜け、対話する者の下へと歩を進める。
城内は静寂。
理由は不明だが、守衛の兵士は一人もいない。
待ち伏せ奇襲の可能性はない。
殺気を感じないからだ。
であれば、彼らは何処に行ったのか。
他の戦場へ行く必要はないし、王国がすでに陥落していることもない。
まだこの国の王は生存し、征服者の訪れを待っている。
その王の待つ部屋の扉前で、ジュンに声掛けたのは守護者の零。
「新界を使用していただけますでしょうか?」
零の発した言については、全く意味を解せない。
(どゆこと?なんで、今ここで?今から王様と会うのよ、分かってる?)
無言の主に対して、零は要望を引き下げる素振りも見せない。純粋に丁寧に懇願している。
「何故だ?」
「準備をしておきたいのです。事前情報は仕入れておりますので、唯壊をこの場所に送っていただけますか?唯壊本人には先程承諾いただいております」
(へ?どゆこと?ますます分からないんだけど。読心術?念波?そんな会話いつしたのよ。何かのサプライズ??)
「あんたの指図受けるの、今日だけだから」
「ええ、構いません」
(ん~〜分からない!承諾してるなら、使用するのはやぶさかでないけど、後でちゃんと教えなさいよね!)
再び亜空間が出現する。
唯壊用に小さい扉。
手を掛けたドアノブから一旦手を離した唯壊は、ジュンに行ってきますの抱擁をする──もとい、無い胸を擦りつける。
ジュンが心の中で、『おっほ♡』と発したのは言うまでもない。
「過度なスキンシップは懲罰ものです」
すでに唯壊はいない。
(え゛っ?私?唯壊?どっち??ねぇ零……いや零さぁん、教えて〜!)
モヤモヤを抱えながらも、彼女達の主であるジュンも重い扉に手を掛ける。
待っていたのは、この国の王と王妃に護衛が一人、ジュン──いや、早乙女純にとっての大一番が始まる。
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