第181話 里の樹連合②
連合の玉座に座っていたイチョウとニリンは、ジュンと紫燕を見るやいなや、同時に立ち上がり深々と頭を下げてきた。
里長に明確な位の違いは無い。第一も第二も、ある意味で同じ王。だが一応は、年齢的にも実績的にも上のイチョウが場を取り仕切っている様子。
「お初にお目にかかりますじゃ、征服王」
顔を隠した装束からは、しわがれ声が伝わる。
里の樹連合を征服した王が遥々やって来ているのに、『隠し事は無礼』と紅蓮なら一喝しても可怪しくないが、ギルテ戦の時も同じような格好だったために、今ここで論じる必要性はない。
指摘箇所は、姿ではない。
「やっぱり、あの時は偽物ね。どうりで魂が揺らいでいたわけだわ。第一よりも第二の里長が強そうに視えたのも偶然じゃなかった………お婆さん、アナタ隠し事が上手いわね」
「ほっほっほ、長生きすればなんとやらじゃ。あの征服王に褒められたなら根性に悔いなしじゃて」
「フン、影武者なんざ使わんでも強さの格は、わっしの方が上じゃ。ババアも、そろそろ引導渡してくれていいんだぞ」
「たわけがニリン!おまんらの時代はまだ先じゃ。あと5年、いや10年は生きちょるぞ」
「本当に老害じゃねーか、クソババア」
態度悪いニリンが捲し立てるも、イチョウは平然と返している。関係性は良くも悪くも普通といったところ。
「ギルテ殿は今も昔も信頼に足らん人物じゃった。勿論、我ら【六根】は殺戮集団。金さえ貰えれば手足のように動くんじゃが、強大な征服王に挟まれるとなると尻尾切りに使われるのは容易に想像できての。影武者を使うしか有り得んかったのじゃ。能力的にはギルテ殿の部下四隊長ルゥ殿に近いがの、あの御方ほどの使い勝手は良くないのは痛い所じゃて」
手招きして横に立たせた者が、おそらくは影武者。イチョウ同様に顔を隠している。
イチョウがギルテに対して敬称をまだ付けているのは、連合の長の一人という立ち位置でなく、殺戮集団のまとめ役の一人として、今後も契約を交わす可能性を考慮しているからだろう。そういう意味で考えれば、他の属国よりも中立的と言える。
たぶんだが、この関係性はこれからも続く。
【六根】という集団を解散しない限りはずっと。
だから属国となっても、連絡なし勝手にシルフの部下と会えるのだ。
「ねぇ、幾つか聞きたいのだけど、さっきのはシルフの部下よね?」
「左様じゃ、知り合いでしたかな?」
「いいえ、容姿を聞いてたから、三人行動でなんとなくね」
「あやつらとは昔から取引をしておってじゃな……今回は薬草を渡しただけじゃよ」
「薬草?」
「そうじゃ。この辺一帯は数多の怪我や病気に効く薬草が多くての。怪我の絶えない【六根】が長年生存できている理由でもあるの」
「ふーん、なるほどねぇ、それをシルフに塗るのか食べさせるのか分からないけど、そういう事よね?」
「左様じゃろう。用途までは聞いてはおらぬが、いつもより量も多かったし、間違いないじゃろて」
イチョウの言葉に嘘がないならば、ここで1つまた疑問が生まれる。
それは、『シルフの居所を知っているのでは?』ということ。
「………知っておるぞ」
「はぁ!?なら早く言いなさいよ!」
怒鳴りつけるも、イチョウは全く動じていない。驚いているのはニリンくらいだ。
「申し訳ない。商売相手の情報を漏らすのは【六根】に於いては基本的に御法度でのぉ。それでも提供する場合、本来であれば数枚の金貨を請求するが、征服王とは今回初めての取引であるし、無料で構わんよ」
「私……【六根】じゃなくて、この国と取引してるつもりなんだけど?普通に考えて無償開示じゃない??」
「それはちと違うのじゃ征服王。【六根】としてなら、里別での行動ゆえ、長一人の権限で問題無いのじゃが、国家となると六人の長全員の証人がいるのじゃ、それが連合」
「うわぁー、面倒くさ」
「左様、面倒くさい。歴史というのは特にのぉ………して、シルフ殿の居場所の話に戻るが、あいにく絶対かどうかは分からぬ」
「というと?」
「我らの隣国、妖国とは真反対側に2つの大国と1つの小国があるのじゃが、その内1つの大国にシルフ殿と縁ある者が国を統治しているそうじゃ」
「それって………巨人が現れたっていう?」
「違うのぉ、そっちではない」
淡々と進む会話。ニリン含めた連合の者達が頷くことで虚言でないのは確実も、信頼に足るかはまだ分からない。
だが有益な情報は集まりつつある。
「………巨人に関連して、ちと小耳に挟んでもらいたいのじゃが良いかの?」
「なによ?」
「巨人の出現で被害の出てない国がもう一つある。〔小国ベリウス〕と言うんじゃが、ここは世界の小国の中で最も国面積が小さく、人口も少なく活気に溢れていない国として知られておる。例の、誰も支配しない腐敗した地域に隣接することが関係しているのか、どこもかしこも廃れておってな。国政があるかどうかも疑わしかったのじゃが、今回の件を受けて、彼の国も征服王の属国になりたいと申しているのじゃよ」
「…………はぁ?なにそれ??」
「ちなみにじゃが、被害を受けた大国………〔仙国ノルド〕も検討しているかもという情報じゃ」
「それが本当なら、世界征服すぐ成っちゃうじゃない」
「概ね事実じゃろて。皆、征服王やその組織【S】の庇護下に入りたいんじゃろ。紫燕殿も優秀じゃしな」
「それほどでもないですよっ」
称賛を真正面から受けた紫燕は照れながら返答。
(可愛いわねぇ。誰も居なかったら頭撫でまくってたとこよ)
ジュンの視線も感じ、一層恥ずかしそうにしている。
「まぁ、その辺りの国政絡みは追々考えるわ。征服する手間が省けるのはこちらとしてもラッキーだしね。ところで頼んでおいた、妖国の方はどうなの?」
「妖国は────」
「………?」
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