第179話 ネルフェール国③
事前連絡なしの登場に驚くジュン。アポ無し訪問を得意とする者が不意打ちを受けると呆気にとられる例である。
対して同じ守護者の型は首傾げる程度。
「1名追加だニャン」
一緒に戯れ合う仲間が増えたくらいにしか思ってない。
翠と型の二人が初顔合わせなのも理由の1つ。
翠はジュンの懐刀。最強守護者と創造主本人が認めている存在。
翠は基本的に、ジュンが創り出す亜空間内で過ごしては鍛錬の日々。表舞台に出ることも少なく、ジュンが呼び出す以外では守護者間でのやり取りも生まれないために、存在は認知していたが、会ったのは初めてという状態。接点もない。
だが、互いに『初めまして』を言う雰囲気にもならず。
無表情無口の翠はともかくとして、型も礼儀正しい性格ではない自由奔放な猫ゆえに当然ではある。
「……………」
「じゃ、どっちが素早いか勝負ニャンね」
挨拶も無しに始まる会話───正しくは型からの一方的な提案。
だがしかし成り立っているようにも見える。
但し、この状況下の中、未だ納得していない者が一人。彼女らの創造主、ジュンである。
『どういう?』『なぜ?』の自問自答を繰り返し続けている。
(まさか………ヤキモチ、とか?)
そして、捻り導き出したのは適当で拙過ぎる回答。
しかしながら、それは真に的を得ていた。
翠が現れたのは二人のやり取りが気になったからである。同じ亜空間内ではないものの、“黒の捕食者”が使われたことも、大いに影響している。
ジュンの直感は実に正しい。
普段気にならない筈の他の守護者、型をジッと見ている、その所作に気付けるのは彼女らを創った創造主だからこそ。
しかし、だ。
創造主であっても守護者の全ての感情を読み取ることはできない。守護者のプライベートも守らねばならないため、その辺りは感知しない方向で創り上げている、ジュンの気遣い。
つまりは、会話でしか得られない本音があるということ。
翠が無口と熟知したうえでの会話方法と言えば、“念話”。
『何かあった、翠?』
『……………』
『ん?気になることでもあったとか……?』
『……………』
『おーい、スゥイィー??き・こ・え・て・る??』
『……………』
いつにも増して、無口無反応無表情。主に対しては初かもしれないほど。
だからか、ジュンは余計に迷ってしまっていた。
正解に辿り着いているのに掴みとれないまま。
あろうことか────
『ボッチは嫌ニャン、二人して密会かニャン??』
『エ゙ッ!?』
突如として“念話”に介入してきた型。
通常、守護者間同士の“念話”は、互いの距離が離れ過ぎていない場合のみ使用可能で、それはジュンに対しても同じ効力範囲。
創造主からの場合は距離制限は発生しない。いつでも可。
型の割り込みは何ら問題無いように思えるものの、今回に限っては無理、のはずだった。
何故なら、現在の効力範囲が、ジュン本人の意思により、ジュンと翠のみの二人に限定されていたからだ。
割り込まれた時点で可怪しいのである。
単に能力系統が一緒だからとか、才能が有るからでは形容し難い。
『どうやったの型?』
『何がですかニャン?』
『今、割り込み出来ないようしてる筈なんだけど……』
『んー、ジュン様がボケたとか、ですかニャン?』
『…………』
『あらー型、もっと遊びたいみたいね』
『勿論ですニャン!』
『…………』
ジュンと型の話に翠は混ざらず相変わらずの無口。三人での会話が成立している(?)以上は念話である必要性も無いのだが────
『…………』
何も発さず、挙手した翠。
これが何を意味するか、ジュンは唐突に理解した。
いや、型の方が早かった。
『やっぱり素早さ勝負ニャンね』
『2対1ね、手は抜かないから安心しなさい』
『…………』
翠が頷いたことで意思表示は確認された。
“黒の捕食者”たちは増殖し、再び始まる戯れ合い。
三人の戯れは日が沈むまで行われた。
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