第177話 ネルフェール国①
ネルフェール国内はルクツレムハ征服国の、ひいてはジュンの私有地と化している。統治する者が基本居ないのだから仕方ない。国民は4人、旧貴族一家と執事のみ。国内全土を使ってのDS園は、まさにそれを体現している。まだ建設途中の箇所は幾つかあるものの、啖呵を切っての全土使用は秒読みと言って間違いない。
DS園の運営は順調そのものではある。収益に関しては、建設途中の場所も含むため、今期に限り赤字決算かもしれないが、長期的に見ればプラスとなる見立て。知名度は徐々に上昇しつつあり、他国との境界線を含めた歩道の整備および開通など順次課題を解決していけば損する可能性は限りなく低い。
それもこれも、この世界には存在しなかった知識の活用や純然たる技術力を行使した結果。
とまぁ、前置きはこのくらいにしておくとして現在、園敷地内で悠々自適に寛ぐ者が一人、共同運営者のモジャルである。
しかしながら共同運営者とは名ばかりで、ほとんど業務には携わってない。管理のみ、くらいの仕事量である。
従業員の多くが、ルクツレムハ征服国の東部軍から排出されているからでもある。同共同運営者のグラウスがモジャルに代わって奔走している、と言っていい。
開園前後は、このような状態ではなかった。
鬼教官と恐れられる紅蓮に見張られていたから、モジャルは真面目にするしかなかったからだ。
だが拷問調教されても一時的、仕事するフリ期間が終えればいつものように自堕落に過ごすだけ。
自由奔放な型がネルフェール国の管理者であるのも、モジャルというダメ人間を野放しにしている理由でもある。
(あにょ猫娘のおかげで、ゆっくり過ごせるだによ。ホント、勝ち組だにえ)
昼間っから酒を飲んでもお構いなし。必要経費で計上すれば良し。あいにく執事は父母実家の家政で不在だが、悪事を知る者がいなければそれは好都合、隠蔽は容易。
(酒を自分で用意するのが面倒くらいだに、どうにかならんか───)
「どええぇぇぇェェェーーー!!!」
素っ頓狂な叫び声を発したのは、予期せぬ来訪者が突如となく出現したから。
「───ゲート閉じてっと、うわっ、何ここ……物凄く臭い!うえっ、気持ち悪ッ、てか酒クサッ!」
「おにょにょにょぉぉォォ」
亜空間から現れのは、ネルフェールそのものを支配する征服王とその守護者の型。
「陰気臭いニャン」
「カーテンくらい開けなさいよ」
悪の当主ばりの雰囲気を装っても、所詮は不出来のデブ当主モジャル。本物の主が登場すれば否応なしに現実に戻らねばならない。酔いも覚めるほどである。
(どっどうして、こやつらはいつもいつも自分勝手だにか??礼儀がなっとらんだによ)
モジャルを知る貴族連中でも、アポ無し訪問はまずしなかった。共同運営者のグラウスであってもだ、分別くらいはある。
だがその貴族連中は過去の話。ネルフェール民ほぼ消滅の今、モジャルに敬意払う者はおらず。頭垂れるは本人のみ。
「きょ、今日はどういう了見だに……ですかん?」
全身全霊の敬語かつ丁寧語。調教されても尚、口癖はあまり治っていない。
(まさか、抜き打ち検査的なやつだにか?)
ゴクッと唾飲むも、要件は違ったようで────
「今、絶賛遊覧旅行期間中なのよね」
「ゆう、らん………ワギャッッ!!?」
自分と同じく自堕落満喫していると思ったのがいけなかったのか、はたまた疑問系でなく鼻で笑ったような雰囲気を醸し出したのがいけなかったのか、取り敢えず猫に引っ掻かれたモジャル。掠り傷ながら血は垂れる。
「ぎゃくたぃ───」
「何か言ったかニャン?」
「………にゃにもございませんだに」
まるで、ニャンコが二匹いるかのよう。
(にょおぉぉォォォ、理不尽過ぎるだによ)
不憫は否めない。しかし、これが彼の人生。ネルフェールで生き残った男の末路。
「今日は園内とか色々回るから」
「覚悟するニャン」
「にょぉぉぉォォォッ!」
当たり前であるが貯蔵していた酒瓶は全て没収されたのだった。
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