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性転換転生『♀→♂』したけど、女の子が好きなので百合ハーレム作りたい!!──最強の変態癖主人公と守護者たちの世界征服物語──  作者: 飯屋クウ
第一章 蹂躙開始

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月下に咲く

 守護者の中で、毎日欠かさずに鍛錬する者は2人、(スイ)月華(ツキカ)である。


 武術による戦闘方法(スタイル)に変わりないが、彼女達が一緒になって修行することは殆ど無い。戦力差があるのは理由の1つだが、端的に言って基本的な考え方や趣味嗜好が異なるのだ。


 例えば、翠は1日の半分以上を鍛錬に費やすが、月華は1〜2時間程度。強さを求めることは互いに同じでも、月華は全ての時間を注ぎ込むようなことはしない。それは彼女が、ちゃんと()()だからである。


 身だしなみは整えるし、流行は気にする。 

 体型の維持は当たり前で、柔軟にはしっかりと時間を使う。


 早乙女純の居た世界の学生基準で測れば、翠は部活に明け暮れる系で、月華は文武両道で学校生活を満喫しているような上位階層(カースト)(たぐい)


 ここまで性格(タイプ)が違えば、一緒に汗を流すことが無いのは理解できるだろう。


 但し、先にも述べた通り、強さを求めるのはどちらも同じであり、月華も単なる女磨きのために鍛錬しているのではない。


 未来永劫、主のジュンに仕え、役に立ちたいと思っているからである。そのためには、毎日の鍛錬を欠かすなど到底できない。


 到底できはしないが、任務中は継続化した鍛錬(ルーティーン)をする余裕もない。


 それゆえ彼女、月華は任務をその一環として置き換え行動しているのだ。



「と、とうちゃーく!!」



 少し息を切らしながらも目的地へと到着した月華は、片手に持つ水筒で水分補給しつつ、任務について思い出す。



「よし!」



 頬と太ももを軽く叩き、休憩は終わり。


 先に待つ陰牢(カゲロウ)のもとへと気配を消しながら移動を開始する。


 月華の現在地はバルブメント王国の東にあたる、東部都市オーディスから少し離れた隣国との境界線にある要所、基地の外れ。陰牢と落ち合うのは、その近くだ。


 月華は、南部制圧戦に続いての戦闘任務となる。

 紅蓮たちと別れたあとは指示通り東へと向かい、予定時刻に東部基地の外れの森へと到着した。



「確か、この辺りに……あ、あった!」



 陰牢は迷わないようにと目印を残していた。

 眼前には、白い布地に覆われた()()がいくつも木にぶら下がっている。


 拳で少し触れると、『ん~!!』という濁った叫び声が聴こえてくる。これは陰牢の拷問を現在進行形で受けている者達であり、足を上にした状態で数時間吊るされている。



(あー、これはもう()()()()って言うしかないよね)



 月華は悪人ではない。

 創造される際、善悪の度合いは善のみの構成となっており、この光景を悲観するのではと思われるかもしれないが、そのような感情は抱かない。


 主が目指す世界征服を阻むなら、それは敵、(あわ)れむ必要もないと思っている。他の守護者も同意見で、彼女達が現状、一端(いっぱし)の憐れみを向ける相手といえば、古城のある街、レムハの住人達だけ。


 王国の民間人や軍人は、お達しがない以上は倒すべき敵なのだ。



「ご愁傷さまです」



 月華は彼らに合掌する。


 これは、せめてもの手向け。



「──あら、もう来たの?早いわね」



 茂みから姿を現す陰牢。

 定刻であるにも拘らず行動開始しないのは、単純に拷問を続けたいという意志の表れ。


 『多少遅れても良かった』と、あとから言葉を継ぎ足すのには、そういう意味がある。



「それなら、攻めは明日?」



 今は夕刻前、まもなく日が沈み、月が顔を出す。

 夜戦は2人とも得意ではないが、できないこともない。



「んー、闇夜に乗じる必要はわざわざないけれど、夜の方が悲鳴が気持いいから、沈み切る前に攻略しましょうか」



 東部攻めの司令塔は陰牢、月華には基本的に拒否権はない。



「合点承知!先鋒はボクでいい?」

「ええ、それと()()()()()()()でおくわよ」

「了解!まぁ、ボクの技で人が死ぬとは思えないけど……」

「ふふ、謙遜しないで、貴方は強いわ」



 同僚に言われるのは何ともむず痒い。


 一呼吸した月華は、気を引き締め直す。

 東部基地に死神2人が現れたのは、それから直ぐのことだった。






◇◆◇◆◇◆






 基地に肩を休める時間は、ほぼ無い。

 バルブメント王国東部は計3つの国と隣接しており、南北も1つの国とだけ対立する境界線はあるが、東部の比ではない。毎日忙しく、交代要員の休憩もままならないほどだ。


 そのため、夜間も監視人員を配置し、抜かりはない状態を保っている。能力者は、Cランク2人とDランク3人の計5人を(よう)しているが、その力を借りずとも、屈強な兵士に、一糸乱れぬ軍隊としての連携が東部基地には備わっている。


 王国の最前線を張ってきた彼らだからこそできる所業。ネズミ一匹、基地内への侵入は許さない堅固な要所ではあったのだが、その誇りある歴史は今日、2人の侵入者により瓦解していた。



「カハッ──ッ!」



 鼻から血を吐き倒れたのは休憩から戻ったばかりの兵士、彼は見事に顔面へ裏拳を受ける。



「ドゥホッ──ッ!」



 横腹にカウンターをもらったのは休憩にいく予定だった疲労困憊(ひろうこんぱい)の兵士、彼は何も考えずジャンプ攻撃を行い、簡単に避けられ、腹部に重い一撃を受ける。



「オブッ──ッ!」



 首元に手刀をお見舞いされたのは、陰牢の妖艶さに見惚れていた兵士、戦場でのよそ見は厳禁。


 一瞬の隙は見逃さない。

 鎌を持つ者だけが死神ではないのだ。


 この基地に死を蔓延させる死神は2人。

 月光に照らされ、基地内を悠々と歩く。


 襲い掛かる兵士は次々と倒されていく。


 普段彼らの戦場とは平地、屋内ではない。

 閉所空間での戦闘は得意としていない。

 熟練の連携も無意味。


 解決の糸口は見えず、伏す兵士は増えるばかり。

 敗色濃厚と誰もが思ったその時、東部側の1つの戦力である能力者達が現れる。


 瞬時に、2チームに分かれていると気づいた陰牢は、人数の多い方を月華に譲る。5人まとめての対応も問題はないのだが、それは論外。


 基地に攻め入って幾ばくかの時間は経過したが、残る兵士は半数を切った。その割には、陰牢たちは互いに消化不良、余力は残り過ぎている。


 人数の少ない方を陰牢が受け持ったのは、強そうな能力者(メインディッシュ)は譲るから、雑魚と残存兵士(デザート)は頂くという意味合いが込められている。


 この提案を承諾しない理由はなく、陰牢の手招きで敵の2人が移動を開始、月華の横を通り過ぎ、建物内には計4人の能力者が残る。近くにいた普通の兵士たちはすでに退避、両陣営とも静かに攻撃の構えをとる。



 月華の前方にいる3人の内、中央の橙髪の女性はCランクの能力者、名をモニカ。


 彼女の能力は、“喧嘩上等(バトルマニア)”、自身がやる気に満ち溢れている間は、基本値(ステータス)が上昇するという能力。


 大斧を振り回せる膂力(りょりょく)は脅威と言って良い。


 右の白髪の男性はDランクの能力者、名をベルテ。

 彼の能力は、“白き者(ホワイトベール)”、指定した対象を強化させるバフ系能力。


 左の黒髪の男性はDランクの能力者、名をベルタ。

 彼の能力は、“黒き者(ブラックベール)”、指定した対象を弱化させるデバフ系能力。


 ベルテとベルタは兄弟。


 個々の武技は並の兵士に劣るも、基本は後方支援の役割を担う。


 そして、ベルテにより強化されたモニカは、Bランク同等の能力者にもなる。

 国の最前線を張るには相応しい者達と言えよう。


 敵の基本値が上昇したことに加え、(たたず)まいにも余裕の表情が見られたとしても、月華のやるべきことは変わらない。


 動揺する必要はない。


 普段取り組んでいることを実践するだけ。

 この戦いもそう、毎日の鍛錬の一環。


 “組み込み武術(コンボスター)”は、必ずヒットする。



(攻撃パターンは②番と④番の組み合わせ、それと⑤番の攻撃中に①番の回避に③番を組み合わせればなんとかなるかな。それでも倒れなかったら、⑦番をカウンターの要領で使うのもありかも。よし、うん、これでいこう!)



 準備は整い、息を1つ大きく吸う。



「いざ尋常に、手合わせよろしくお願います!」



 威勢の良い声が木霊(こだま)する。





◇◆◇◆◇◆





 月華と離れてから三十分も経たない程、陰牢は基地の中央、外部にて夜風にあたりながら一人涼んでいた。


 相手した能力者2人は、出現させた器具により拷問を受けている。まだ死んではいないが、その命は救えるものではない。骨は折れ、肉は剥き出し、身体はあらぬ方向へと曲がっている。雑魚処理と言っていた残存兵士も等しく拷問を受けている。


 恐怖や出血多量により息をしていない者もいるが、未だ助かる可能性があると信じて止まない猛者もいる。


 しかしそれは、陰牢にとっては恰好の的で、より精神や肉体を(いじ)くる対象へと成り下がってしまうため、大人しくする方が賢明。狙われた時点で最早遅いが、楽になるには死ぬしかないのだ。



「──あら、早かったわね。お楽しみはこれからよ。月華もどうかしら?」

「あーうん、大丈夫……かな」

「そう?勿体ない」



 『何が?』とは言わない。


 趣味は人それぞれ。

 文句を言う資格は他人には無い。

 たとえそれが、非人道的だったとしてもだ。


 そもそもの話、月華はベタベタで気持ち悪い程度にしか思っていない。嫌悪もしていない。


 ただ、自分の好みに合わないから遠慮しただけのこと。


 それを、陰牢本人も理解している。



「──にしても、強かった?」

「まぁまぁかな」

「その裾、破けてるわよ」

「意外と彼女の反射神経も良かったから」

「でも貴方が勝った」

「うん、日頃の鍛錬のおかげ。でもボクはまだまだ弱いから頑張るよ」

「そ、頑張りなさいな──で、()()()()



 月華は首を振る。



「じゃあ、()()()()

「どうぞ、任務の司令塔はボクじゃない」

「ふふ、ありがとう。それと、()()()()()()




 月明かりに照らされた影がなびく。

 そこには面妖な化け物が映ったと、後の伝承に記されることとなる。








作品を読んでいただきありがとうございます。

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