第161話 一件落着?
ギルテ戦を終えたジュンは【DS園】入り口へと戻って来ていた。散らばっていた守護者もである。元々園の入り口を集合場所に指定したわけでなく、今しがた念話で伝えたばかり。当然ながら、古城を守っている博たちや共和国の紫燕、砂漠地帯ジルタフのヤンらは除くかたちとなる。
ついさっきの招集に拘らず、呼んだ者たち全員が集まっているのは創造主ジュンの日頃の賜と言っていいだろう。
だが、二人は違う。
変人は呼んでいない。念話対象から外したのにだ。おおよそ、戦っていた紅蓮が移動したからだろうが、ジュンにとっては面倒臭さしかない。行方不明だったのも、関係ない。位置はだいたい把握していた。
「我が君ぃ!!不肖ニシミヤライト、貴方様のもとに只今戻りましたァア!!」
大声且つ大振りな舞い、ステップまで踏むほどの機嫌の良さは久方振りだからだろうが、ジュンにとってはやはり煩わしい。
「ウルサイ!あんた、キモいのよ、ホント」
「ガビーン、でございますが久し振りの再会、良ければ抱きしめても?」
「却下、虫酸が走る」
「というか貴方、ジュン様の御姿に嫌悪していたんじゃない?」
「まさしくその通りでした陰牢……殿、ですが離れてようやく極地へ辿り着いたのです。ヒトは見かけでなく魂であると!存在そのものが、私の愛すべき尊き御方なのであれば、どのようなカタチになれど生涯を尽くすと!そう、心に決めたのです!!」
「あー……不要却下」
「我が君ィイ゙イ!!」
ライトの発言に月華は激しく頷き、式は『気に入ったぞ、お前!』と肯定する。端の零は睨みを利かし、疑問投じた陰牢は『敬称略されかけたの何故かしらね?』とボヤき、その横の唯壊は興味無しの雰囲気。型は見向きもせずの日向ぼっこ中。
(見た目は超重要よ、ホントムカつくわね、この男何言ってるのよ)
全否定は創造主ジュン本人。
だが、言葉には出さない。これ以上付き合ってられないからだ。それに、気掛かりもある。
「紅蓮は、大丈夫そ?」
いつもならば、真っ先に場を取り仕切ろうとする鬼教官が静かだからだ。何か問題があったかのように、嫌に静か過ぎる。
「いえ、大丈夫です、ジュン様」
ジュンの能力で、その者の魂状態は可視化する。守護者であれば、現在の魂魄値もだ。しかし紅蓮に症状は見られない。魂魄を大幅消耗しているわけでもない。
であれば、大人しい理由は何なのか。先の戦いで、変人と何かあったとしか考えられない。
「大丈夫です、本当に問題ございません。ただ少し………」
「少し?」
「いえ、目眩がしたような気がしただけです」
「本当に?」
何かの障害が起きたのであれば、魂を弄くらねば原因までは判明しない。それは、解剖と一緒。紅蓮が紅蓮でなくなるかもしれない禁じ手。だから出来ないし、したくない。つまりは、前回同様に様子見対応ということになる。
「私に休暇など必要はありません」
後方、見つめるその先には【DS園】。腐蝕が進み、半壊状態へと被害は拡大する一方。復旧作業をしなければと、紅蓮は言っているのだ。
だがジュンは否定した。
不必要だと。
それこそが建設途中に、式と紫燕にだけ伝えた別作業、【DS園】に関する特別事項。
“黒の捕食者”が大きく、更に大きく口を開け、別の触手が喉奥へと突っ込み引っ張る。“黒の捕食者”たちの体内は亜空間。“新界”使用時と同じ別空間が広がっている。
敢えて名付けるならば貯蔵庫もしくは保管庫。能力の源である魂や欠片も、別棚に蓄えられている。
勿論、大きさも自由自在。“新界”使用時は人が通れる大きさに限定しているが、本来は制限無し。やろうと思えば、亜空間内に国を作ることも可能。個室部屋もお手の物。守護者の翠が個人鍛錬用に生活する部屋が、それに該当する。
だから誰しもが驚愕した。
完成状態の【DS園】が、一瞬で出現したことに。
半壊状態の【DS園】は、ある種供物として、また別の“黒の捕食者”たちに、啜り飲み込まれ綺麗に消失。その真っ平らな地面の上に、恰も今出来たばかりのホヤホヤ【DS園】が乗っかった。
「世理の能力は何度も使えないでしょ?ちょっかい掛けてくる不届き者が居てもおかしくないから、同じものを造っておいてもらっていたのよ」
称賛の嵐。『凄いです』とは零の言葉。
但し、敢えて言うならば、凄いのはジュンではない。亜空間内と言えど、たった二人で同じものを造り上げた式と紫燕を称賛すべきだろう。彼女らの建築技術は職人の域を超え神域にまで辿り着いたと言っていい。
当然に二人とも、ジュンからの誉め言葉を待っている状態。鼻高々の式に負けじと紫燕も胸を張っている。
だがまずは、古城へと戻らねばならない。
共有事項は数多ある。
「彼らを生かしている理由は、今後の統治に関係しているので?」
「そうね、それも追々話しましょう」
「ならば我は一度戻るとするか、ライトも元に戻ったようだしな。ちと調べたいところではあるが………」
「………て、アンタは誰よ!!」
絶対に呼んでいない者がもう一人。このおっさんを見知る者は居ない───否、誰もが知っている。だから誰も驚かない。守護者たちは彼の佇まいから、ジュンは魂を通して、目の前のおっさんが誰か認識できる。帝国の王ドラゴなのは確定している。
「そいえば変身を解き忘れておったわ」
『失敬失敬』と謝りながら、元の姿へと戻るドラゴ。
「………」
「………」
しかし完全には戻らず、おっさん顔のまま竜の手足と翼が生える。
「時間をかければ大丈夫、だろう……」
「なんとかなるのそれ?」
国民や衛兵に驚かれ偽物と追い出されやしないかやや不安ではあるが、直属のリカクやガンキも居るのだ。声や口調が変わらないのであれば同一者と見做すのは容易いだろう、たぶん、そう、絶対。
それに一応は友好国であるのだ。証人を出せと言われれば対応する気持ちはジュンにだってある。【聖なる九将】を1人退けた御礼くらいはして損はない。
無論それも一度帰ってから。
「さぁて、まずは一休みしましょうか」
「それでは美味しい紅茶を淹れましょう」
「では私はそれに見合う菓子を用意します」
「アンタは来んな!」
「そんなぁ〜〜我が君ぃぃィィ!!」
零に抱えられ、ライトの顔を蹴り飛ばす、渾身の幼女蹴りに舞う血しぶき。
先行きは不透明かもしれない。
予断は許さないかもしれない。
だがここでの戦いは間違いなく終息し、適当に思いついた世界征服もまた1つ進み、完全なる女体化の夢も前に進んだ………に違いない。
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次回は今回の章のサブ登場人物紹介となります。章の振り返り、深掘りにご活用くださいませ。




