共同運営者モジャル
亜空間を通り抜けた先、ジュンの視界に映るのは、およそ昼間には放映できないであろうSMプレイ現場。縄で縛られ豚のような風体のネルフェール代表者(仮)モジャルと、本当に物理的に鞭打つ教官、守護者の紅蓮。
(あらまぁ、予想通りの状態ね)
一国の代表者(仮)をあられもない姿にした挙げ句、暴力を振るう様は虐待でしかない。が、性根を叩き直すには、軽いくらいではある。モジャルの父母も、部屋の端で正座しているのだから、息子も耐え成長してもらわないと困る。
「あぎゃっ、もうっ、だべてっ……ギャン!!」
パァンパァンと激しい音が炸裂する度に跳ねる豚。一般人から見れば地獄絵図も、男嫌いなジュンにとっては無価値な物を眺めているような感覚に等しい。この場に、陰牢がいたならば、愉悦に感じていただろうが、あいにく拷問官は別仕事。命奪わない程度の痛みを与え得るには、鬼教官の方が適しているということ。
「調教は順調?」
「ハッ!これといってまだ……やはり此奴は見た目も中身も豚、カス同然ですね」
敬礼し終えた紅蓮は、隙を見て逃げようとする輩の縄をその手で掴みつつ、強引に所定位置へと戻す。元は貴族と言われなければ分からないほどに、家畜同然の扱い方だ。
「そう。お披露目は、もう間もなくの予定なんだけど、大丈夫そ?」
「難しいですね。反骨精神は、ある程度抜き取りましたが、運営者の一人として表舞台に立たせるべきかは判断しづらいところです」
それでも、代表者(仮)含め運営者として引き立てねばならない。ネルフェールの民と呼べる存在は最早、モジャル一家しかいないのだ。他国民を祭り上げる手段もあるにはあるが、先の事を考えれば不適格。この国に詳しい人間を立てることこそが、最適解なのだ。
だがしかし、豚は豚。
縛って、鞭打って、スパルタ指導しても、多少贅肉が落ちた程度。思考や言動が大きく変わることはない。裕福に暮らし過ぎたというのもある。若い頃からもっと厳しく忙しなく生きていたならば、幾らか受け入れるのは早かっただろう。
そういう意味で考えれば、頑固さは長所。
但し、短所とも言える。
長期間拷問など誰の得にもならないからだ(陰牢を除く)。結果、行為を愚の骨頂と理解させるには、多少の脅しが必要になってくる。
「ねぇ、子豚さん?」
「わ……ちきのことかえ?」
「そう。ねぇ、何で拒むの?」
「当たり前だによ、まずはこの縄をほどくぇ……っッ!?」
鞭の音1つで静まり返るのは、モジャルの反抗心。
「何が気に入らないの?貴方にも、多少のお金は入るのよ」
「金の事も分からないような小児に話しても無駄だによ。責任者連れて来るだに、そせて全権を譲るからがはな───」
声が途切れたのは、ここ一番の鞭────ではなく、炎の蹴りが子豚さんの子豚さんに直撃したからだ。
「モ゙ォ゙ォォォンン!!」
『仔牛もいるようですね』とは勿論、紅蓮の言葉。
「ねぇ、仔牛さん?」
「モ゙ォ゙ン?」
「無礼は別に許すわ、だって興味ないもの」
「オォン」
「この国に詳しい人間を引き立てる意図は理解できるわよね?」
「オ、オン」
「貴方が嫌がるなら別にいいの、他の人間を充てがうから……確か、執事さんは別室にいるのよね?」
「オオン!?」
「つまり、貴方は用済み。お母様も、お父様も用済み。廃棄処分の者達が行き着く先はどこだと思う?」
「オ……まつだ……やっ、お待ち下さいだによ!!」
一気に青ざめ顔のモジャル。理由は単純、鬼教官よりも恐ろしい存在を知っているからだ。
「初日の陰牢と代わっていいんだぞ」
「仔牛さんを指導する必要がないなら、バトンタッチよねぇ?」
身震いは、とどまる所を知らない。床を伝い、端にいるモジャルの父母にも、同様な冷や汗。天にすがるかのような眼差しには、哀れみを感じるほどだ。
脅しは秘薬、苦くも辛くもない。
子豚だか、仔牛だか、何方ともでもある輩には、丁度よい。
否が応でも、モジャルが共同運営者になれば、【DS園】の計画は確固たるものになる。あとは、細かな建設作業と物流の確保と仕入れだけ。
お披露目日は近い。
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