修復完了
ルドルフを代表に置く、商国の城の修復は完了した。
今回の破壊が天井部だけだったのも救いで、そう時間は掛からなかった。
「ありがとうございます、式様、紫燕様」
「おうよ!」
「これぐらい簡単です」
守護者二人の技能が大幅に向上したというのも、理由の1つ。
建築の場数は、かなり踏んだ───慣れてきたというのは良き事だが、受け身のままになっている商国を、流石に心配するのは当たり前。
「オレが言うのもなんだが、ちったあ職人増やした方がいいんじゃねーか?」
「御尤もです──が、人口が増えなければなんとも……元々数も少ないのですが、属国になって以降は技術者の流出も多いので困ったものですよ。施策は一応なりとしているんですが、いまいちといったところですね」
「流出って、何で?」
「征服王様が怖いからではないでしょうか?」
「ジュン様が??」
「怖いだとおぉ!?そいつらの眼は節穴かぁ!?」
「多くの人間は、征服王様の御姿を知りません。性別も、その変化さえも知る由ではございません。だから畏怖しているのではないでしょうか?」
「あぁん?ルドルフ、まさかオメェもそんな事思ってんじゃねーだろうなぁ?」
「いや、私がですか!?そんな失礼な事思っているわけないじゃないですか!神に誓っても、命賭けても、絶対に、断じて、限りなく、御座いません!!」
「ふーん、ならいい」
そっと胸を撫で下ろす、ルドルフ。
詰め寄られ失禁しかけたのは言うまでもない。
「それで、流出先……亡命先は判明してるんです?」
「さぁ、私も全ては把握しきれておりません。帝国の可能性もあるかもしれませんし、もっと東の……妖国グリムアステルより先の国かもしれません」
「んじゃ、当分はオレたちかよ」
「はい、ご迷惑おかけします」
「人が流出してる割には、メイドさんは増えたんですね」
「あっはい、城の従事者もそれなりに増えつつあります。有り難いことですよ」
「へぇー」
「その、えっと、挨拶……させましょうか?」
「いいですよ。シズクだってまだ会いたくないんじゃないですか?思い出しゲロ……はないと思いますけど、そういうとこ気にした方がいいですよ。それとも新しいメイドさんの方ですか?」
「両方のつもりでした……」
「なら、またの機会ですね。今忙しいんですよ」
『あっ』と、呼び止めたのはルドルフ。
遠ざかり、物言わず退室する二人に声掛けたのは、あの日の会議を思い出したから。
心友のグラウスは居残り会議があったのに対し自分は無し、この対応が他国と何ら変わらないのは至極当然も、ルドルフの個人的観点から言えば、これまでの濃密な関係性から、他代表と同じ扱いは御免被りたいと思っているよう。
あだ名に〈失禁王〉と付けられるぐらいに、存在を認知されているのが、濃い関係という証拠。
無論、誇れる名でないのは一目瞭然だが、他に二つ名を持ち合わせる代表者はいない。
唯一無二。
ある種、ルドルフという個人の表裏は、全て出し尽くしてしまっている状況。
(グラウス殿にも負けられん)
加えて、心友に対抗心を燃やしている。城務めに戻って、意識や責任感が増してもいる。征服王であるジュンに対しての感情変化も起こっている。
国民同様の畏怖から尊敬へと、そして忠誠心も芽生えつつあると言っていい。
(除け者でいるのは、今後に影響を及ぼすかもしれません。是が非でも、何の会議をしたのか聞いておかねば……)
振り向く紫燕たちに話を聞くも───
「んー、今はシークレットだから無理です」
情報は得られない。
「そこを何とか……」
「お披露目したら、ルドルフも遊べると思いますよ」
「あそぶ……ですか?」
「おう!首長くして待っとけ!これから仕事だ!」
「承知しました。もし、手伝う必要があれば何なりと仰ってください」
「うん、その時は宜しくぅ───ただその前に、ルドルフは城が破壊されないよう気をつけるべきですね」
「ゔっ、不可抗力です」
「だとしてもですよ、代表者だったら、知恵働かせて下さい、元商人さん」
「ゔっ……善処します」
「その意気です。では、また来ますよー」
シュッと一瞬にして姿消す者たち。
声の届かない彼方。
「──お披露目とは、一体全体、何ができるんでしょうね」
二人の行き先を聞けば良かったと後悔したルドルフは、一頻り考え、情報を得るため心友に文を送るのだった。
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