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性転換転生『♀→♂』したけど、女の子が好きなので百合ハーレム作りたい!!──最強の変態癖主人公と守護者たちの世界征服物語──  作者: 飯屋クウ
第七章 計画通り

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吠える

 (レイ)が【六根(ルーツ)の幹部と接敵する少し前、いつになく(シキ)は焦っていた。



「ぜぇ、はぁ……ちっくしょう」



 肉体の強度と俊敏さ、体力と破壊力に自信を持っていただけに、苦戦な状況に追い込まれるのは精神が削られる。



「ちっ、あの野郎ムカつくぜ」



 一緒に行動していた夢有(ムウ)は一時離脱と言う名の気絶状態。


 身体も、元の幼女体型に戻り、近くにいる。


 目覚めれば、いずれ“半自動治癒(オートキュア)”が発動して復帰となるが、勝算の低い戦いに身を置けるかというと微妙。


 であれば、まだ意識ある自分が、まとめて二人相手するのが妥当というのが、式の見解、もとい野生味ある直感なのだが、その式の身体も傷だらけだった。


 このような状態にも拘らず“半自動治癒(オートキュア)”を使わないのは、秘匿性が高いと認識できているからである。


 ジュンの言い付けが守られているのは忠犬らしいと言えばらしい。


 しかし、戦況は劣勢。普通に考えて全快してから臨ぶべきなのだが、たとえ全回復したとしても、倒せるかは判断に迷うために行動できていない。


 知能の低い獣が、本能的に相手を難敵と捉えているということ。


 あまり使わない知能とやらを、式はフル回転させているのだ。



(重くなるやつと、大きくなるやつと、折ってくるやつ──か、他にはないよな……?一番面倒なのは重くなるやつだ!急に変わるし、なんであっちはひょいひょいって動けるんだ?わけわかんねー)



 古城の鍛錬場には重力負荷のかかっている部屋もあるが、あれほどの比ではない。


 ましてや重力反転の経験もなかった。


 軽くなった身体は勢いがつき過ぎて制御が効かない。



(重くなるやつは慣れりゃあいい、大きくなるやつは的がデカくなるから問題ねぇ、折ってくるやつは耐えりゃあいい……まだ行ける、まずはちっこい奴から倒すとするか)



 弱い者を狩り、数的不利を覆す常套手段だったが、これは思わぬ方向へと向かう。








◇◆◇◆◇◆








「──キリク」

「はい、なんでしょう?」

「そろそろ終わりにするぞ」

「遂に、死ねるのですかあぁ!?」

「いや──」



(ギルテ様申し訳ございません、我々は華々しく散ることができそうにありません。敵は脆弱でした。今から征服王に突撃死するのは可能かもしれませんが、()()()を発動させる役のネル殿の気配があやふやとなっています。おそらく交戦中なのでしょう。ですが、死軍は残り半数を切る勢いです。花火を上げるに必要な生贄は多い方が良いと思います──ゆえに、あの犬っころ討伐後、私がスイッチを押し、死は次回へ持ち越しと致します)



 遠くの崇拝する主へ、深謝を述べるルゥ。


 その心内は部下キリクにはしっかりと伝わっているようで───



「ええぇ〜、ここで死ねないんですかあぁ?折角、兄の遺影を持ってきたのにぃ」



 遺影とは名ばかりのキリクお手製の似顔絵は、兄ダリィとは似つかない。


 なのに、ケラケラと笑う。



「それも次回だな、今度は色塗りをするといい」

「センス無いの知ってるのに酷いっすよ」

「ふん、知ったことか──始めるぞ」

「アイアイサー」



 ルゥは、4つ目の能力を発動する。


 自分が()()()()を押し、キリクに戦わせるためだ。


 4つ目の能力は、“運次第の貸与(ルーレット・ギフト)”。


 3つある能力を第三者に貸し与える能力で、その割合は博打、まさに運次第。


 その間ルゥは能力を使用できない悪条件(デメリット)付きだが、装置までの距離はそう遠くない、目と鼻の先。



「ルーレット・オン」

「何が出るかなぁ、どうなるかなぁ」



 数字は1〜10、出た目は5。



「ふむ、まぁ行けるだろう」



 “重力(グラビティ・)操作(コントロール)”、“巨大化(クラッシャー)”、“枝折り(クラフト)”、写し度数8割の更に半分、つまり4割しか使えないが、能力が複数あることには変わりない。


 それに、キリク本人の能力もある。


 兄の能力“異物看破(シャット・アウト)”は半径10m以内の異物を発見次第消滅させるものだった。


 力量の差によって消滅できないものもあったが、優れた能力だった。


 反して、弟の能力は“異物突破(シャット・ヒット)”と言い、半径1m以内の異物に反応迎撃する能力。


 兄には劣るようにも見えるが、物理系能力者とは相性が良く、今回はルゥの貸与もあるため、押し負けることは無い。



「くふ、ふはははハハハ!死んじゃえ、死んじゃえ死んじゃえぇ!!」



 手負いの獣には丁度よいと判断したルゥの読みは的中していた。







◇◆◇◆◇◆







(なんでだ……)



 弾かれる斬撃。


 回避される拳。


 空を切る爪や尻尾。



(よえー奴が、急に強くなった。しかも、さっきの奴と同じ能力使えんのはどういう理屈だ?)



 考えはまとまらない。


 その暇もない。


 挙げ句の果てに、最初の一人は何処かへ行こうとしている。



(はあ?フザケンじゃねー、待てよ!まだ勝負は──ぐふぅっ……ッ)



「よそ見厳禁なんだよ、ワンワン」

「オレはワンワンじゃねー!(シキ)だ!!」

「ふーん、シキワンワン、俺はキリクって言うんだよ──ロシク」

「あ゙ぁん?大概にしろよ!てめぇの次はあいつだ!」

「この程度で苦戦してる奴がルゥ様に勝てるわけねーじゃんよ」

「苦戦してねぇよ!」

「証明してみろよ!」

「してやるよ!!」



 打ち合いを止めた式は、今日初めて能力を発動する。


 能力“全我全俺(アイム・シキ)”の通常技の1つに倍返しがあるが、これは重力の壁で軽減された上、巨大化による防御増で効果無しとなった。



「はっはー、弱いんだよ!ワンワンは大人しく寝てろや!」

「ちぃ………ッ」



 だが、“全我全俺(アイム・シキ)”の真骨頂は別物。


 本来の能力効果は、超強化(バフ)



「オラァ!!」



───バキンッ



「なっ………」



 これは、肉体の向上を意味するものではない。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことを意味する。



「ラアアァ!!」



───ガキンッ


───ピシッ



「まさか……」



 どんな困難な状況も、いつかは踏破することができる。


 式に出来ないことはない───というのがこの能力の魅力であり、力そのものなのだが、本人は能力効果を知らない。


 永遠に知り得ない。


 そういう風に創られているからだ。



「ハハッ、隙ありだぜ!」



───バリンッ、ザシュッ!



「つッ……急成長しているってのか!?」



 だから、重力に慣れればいいと思える。

 だから、自分よりも大きな身体に立ち向かえる。

 だから、骨が折れても耐えようと考える。


 壁を越えようとする限り、式の成長は止まらない。



───ズバンッ!



「対ありだ」

「グハッ………ッ」






 勢いそのままに駆ける猛獣は次の獲物に追いつく。



「おい、はぁ待てよ、まだ勝負ついてねぇだろが!」

「これはこれは、キリクを破ってくるとは……どえらい気配(オーラ)の変わりようだ」

「オレにできねぇことはねぇーんだよ」

「素晴らしい素材であるのは実に羨ましい───が、舐めすぎている」

「あ……?」



 瞬間、式の身体は硬直する。



「私がお前の猛りに気づいてなかったと?」



 重力波の壁は用意されていた。



 ここは鳥籠───



 更には───



 後方からの羽交い締め。



「な!?テメェ、生きてたのかよ!?」

「おにぃ……の、かげだ……」

「オイ、離せ!」



 4割効果だったものが一気に8割と戻れば、順応は難しい。



「キリク」

「俺ごと、ヤッちゃってください!!」

「良いだろう、華やかに死ね。お前の死は尊い」

「ありがとうございます!」

「ヌガアァァ!」



 身動きとれない式が被るのは、重力と内部破壊の連続。


 大技の連発。


 ミシッという音が絶え間なく続く。


 骨が折れているのか、空間が割れているのか、最早分からない。


 理解っていることは、キリクがぐしゃぐしゃになったこと、それと溢れんばかりの血が大地を流れていることくらい。



「ガフッ………」



 血は身体の至る所から吹き出ている。片膝付いても尚、意識あるのは奇跡としか言いようがない。



「しぶとい──が次で終わりだ」



(ヤバい!!無理だ、立ってられねぇ)



 意識が遠のくのを実感した。



(もう使うしかねぇ!!)



 言い付けを破るのは忍びなかったが負けるよりは断然いい。



「何?回復だと!?」

「おうよ!これで振り出しだな!」



 しかし、傷は治ったが精神は困憊状態、要するに治ってない。


 精神治療を拒んだのは、回復に魂魄(エネルギー)を使うよりも、()()に使って倒した方がいいと判断したからだ。


 今のままでは、現状を打破する友好的な攻撃手段はない。


 8割への適応はまだ先であり、時間をかけるよりは一瞬の勝負に懸けることを決めたのだ。



(確か、これ使う時は……はぁ、えと主に伝えないとだな………どうすんだっけ??)



 疲れがピークを迎え、思考は止まりつつある。



(めっせーじ………どうやるんだ?)



 覚えが悪いと裏目に出る。



(伝わればいいか、オレが得意なのは……やっぱコレだな)



 遠吠え───とまではいかないが、大声で(シキ)は叫んだ。



「主……ふぅ、使うぞ。オレは使うぞおぉーー!!」



 無論、分散する声が届くはずも無い。


 だが、気配は変わる。


 異様に変わる。


 誰の眼にもはっきりと、()()()視える。



「今度は何だ?」



 纏わりつく気配(オーラ)が赤黒く変化する。


 ビリビリと大気も揺れる。



「あ……りえ、ん」



 式の筋力が攻撃力が防御力が速度が2倍以上に増幅する。



限界突破(バーストモード)



 数分間の荒技、魂魄(エネルギー)を全使用しての秘技。

 

 使用後は数秒無防備となるが、戦況を覆す大きな一手。



「アアアァァァ!!オレは負けねぇ!!第3ラウンド行くぞオラァ!!」



 赤き獣が咆哮する。







作品を読んでいただきありがとうございます。

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