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性転換転生『♀→♂』したけど、女の子が好きなので百合ハーレム作りたい!!──最強の変態癖主人公と守護者たちの世界征服物語──  作者: 飯屋クウ
第七章 計画通り

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各地の情勢③ 東部基地編

 ユージーンはアリサの心情を知っている。落ち込んでいた理由も、今奮起している理由も。


 だがそれは、歯痒い。


 早々に切り替え、他を探す行為に走れば楽であるのに、諦め切れてない。



(2番手に落ち着くのは癪だけど……)



 『僕ならそんな思いさせない』、などの常套句は言えない。格好いい台詞は今じゃない。



(揺らいでる間は、あしらわれる気がするんだよね)



 それを理由に眼中に無くなれば、元も子もない。


 言葉選び(タイミング)は至極当然。



(僕も、今はこの戦いに集中しないと──ね!)



持続する剣(ドレイン・ソード)



 活躍が続けば、信頼は重なる。


 いつも隣にいると理解(わか)ってもらえる。



「──悪いけど、君にはその糧になってもらう」


「五月蝿い!姉さんの仇!!」


双剣斬撃(クロス・スラッシュ)



───ザンッ!!



「なっ……にぃ!?」



 倒れ行く鳥人間。イリムの再度の捕縛に成功する。



「弱いと思ったかい?僕だって成長してるんだよ」



(父さんには追いつけないけ……ど───っと、次なる敵は彼か……厄介だな)



 化け物に超変異した個体は、並の兵士を圧倒している。薬の重複効果であることは確認済みでも、倒せるかは別。



(ふぅ。能力のおかげで体力に余力はあるんだけど、僕のパワーであの巨体を崩せるかどうか……)



 肉に剣が入るか、斬り切れるかという問題。


 人間から化け物へと姿形を変えたクルシュアという存在は、今のユージーンにとって脅威でしかない。



(こんな時に父さんか居て──いや、甘えちゃダメだ。格好いい所、魅せないと!アリサは僕を、見てくれないっ!)



 化け物の爪と剣とが交わる。


 力負けすると思われた剣は折り重なる。


 敵の攻撃を受け止められたのは、もう一つの剣。


 同じ双剣。



「父さ……ん??」


「違う、ウチ」



 加勢に来たのは、ユージーンの義妹エリカ。



「エリカぁ??どうして!父さんは??」

「本国に残ってる。ここに来たのはウチと護衛兵だけ」



(はは……本当に凄いや……)



 化け物の攻撃は弱まる。


 少し、退()()()()ようにも見える。



(この可能性を読んでいたとしたら……いいや、これこそ国を治めるに必要ってことだよね。父さん、ありがとう、僕はまた一つ勉強したよ)



 “解呪する剣(ディスペル・ソード)”は、エリカの能力。


 剣で斬った相手の呪いを解く力。今回は、呪いではないために退化という判定に留まるも、攻略の(すべ)は成る。



「行くよ、エリカ」

「うん」



 後は息を合わせるだけ───



「「双剣斬撃(クロス・スラッシュ)!!」」



───ザザンッ!!!



「ギュアオエェェェ!!」



 悲鳴か、雄叫びか、判別つかない鳴き声を発した化け物は倒れる。


 ここに、ユージーンの勝負は決する。


 あとは────




 敵首魁と戦う本隊のみ。







◇◆◇◆◇◆






 アリサは東部軍を指揮する。ノートンは反乱軍を指揮する。両軍の指揮官は兵士を鼓舞する。


 声が絶えないのは、勢いある証。


 だがアリサは回復行動ができる、そこに明確な差が生まれる……はず、なのに───



(敵の侵攻が衰えないのは何故でしょうか?)



 ユージーンが敵の主力を倒した一報は届いている。エリカの加勢も視認している。



(まだ化け物になれる人がいる……とか?)



 見落としが何かは分からないが、心配する兵士も出る始末。



「軍隊長も、敵勢力が衰えないのを危惧しているので?」



 声を掛けてきたのは先ほどの伝令。



「──そうですね」

「心配は無用ですよ。我々の方が兵力は上です。仲間には私の方からも伝えておきます」

「宜しくお願いします」

「そういえば軍隊長、もう一つお耳に入れてほしいことが……」

「ん?ちょっと待ってください」



 そこで、アリサは気づいた。



「あなた……今とさっき、()()()って言いましたか?」



 アリサは軍の指揮官であり、軍隊長という階級に間違いはない。正式には、東部・南部軍大隊長という称号になり、伝令の言うように軍隊長という言い方に問題があるわけでもない。


 しかし、アリサはその堅苦しい称号を煩わしく思っている。


 だから誰も、正式名称では呼ばない。


 兵士も上司にも、()()()()で呼んでほしいと伝えているからだ。


 つまり、この伝令は命令違反。足並み揃う軍には異物。

 


「はっ、そうかい。バレちまったら仕方ねぇ──な!」

「いつっ………」



 心臓部に襲いかかる刃物を完全に避け切れなかったのは、後衛専門だから。致命傷ではないが傷は深く、白い服が赤く染まる。呼吸もきつい。



「俺の変身(ドッペル)を見破ったのは流石だが、も少し周りを見ろよ」



 護衛兵がいないのは、ノートンが何らかの手を打ったからだ。


 ただ戦闘音が無いため、倒したとは考えにくい。



(内密の話をするから、とでも言ったんですかね)



「お前が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってのは知ってる。情報は戦いにおいて重要だぞ」

「……ですね」

「恨むなら自分の不出来を呪え」



 首を狙う一撃───



「何だと!?」



 それをアリサが避け切れたのは、()()()()()()から。



「甘いですね、情報が古いですよ。戦いにおける情報の有能性って知ってますか?」

「糞が!うるせぇんだよ!!」



 突きを払えたのは、訓練の成果。



「私も、いつまでも後衛支援ばかりじゃダメなんです」

「うるせぇアマ!死ねっ!!」

「今まで通りじゃダメ、変わらなきゃいけないんです!」



 渾身の打撃(アッパー)がノートンの顎に入る。



「ぐはっ……」

「だから、乙女のパンチ味わってください!私はまだ失恋なんてしていませんから!!」

「知らね──ゴホッ!」



 回復と打撃。殴った痛みは回復で取り除く。



「ちょっ、やめ……やめて……」

「やめません!!諦めません!!私の恋は成就させるんです!!」



 この場に、他の兵士がいなかったのは正解だったかもしれない。








作品を読んでいただきありがとうございます。

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