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性転換転生『♀→♂』したけど、女の子が好きなので百合ハーレム作りたい!!──最強の変態癖主人公と守護者たちの世界征服物語──  作者: 飯屋クウ
序章  創造主と守護者

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エピソード 翠



 古城内の鍛錬場はいくつもある。

 大部分は共用で守護者同士、切磋琢磨していることが多い。


 個人専用の鍛錬場も数個用意してあるが、それは古城内の地下にも地上にもなく、ジュンにより異空間へと切り離され、常に監視されている。


 鍛錬場から出る場合は管理するジュンに声を掛ければ何時(いつ)でも可能。主のジュンが実体として近くに居なくても名を呼べば、別の場所の本人へも届く仕組み。


 現在、個人専用鍛錬場を使用するのは(スイ)のみ。


 彼女は鍛錬しかしていない。

 たまに食事や風呂の利用で主の名を呼び退出するが、用が終わればすぐに鍛錬へと戻る。


 世理(セリ)の次に、守護者同士の付き合いが少ない。


 翠はかなり口数の少ない、ボーイッシュな緑髪短髪女子。女性っぽさはあまりなく、顔だけなら男と見間違うかもしれないが、ちゃんと胸の膨らみはある。


 また、主のジュンに対してのみ見せる照れや微笑みといった可愛らしい一面もある。


 これは、他の守護者は知らない。


 二人っきりの時にしか見せない姿であり、他の守護者が居た場合は、無愛想で無口、付き合いの悪い印象を抱かさせる。鍛錬場に籠るのも、主との時間を確保するためではと考えてしまうが、それは思い違いである。


 彼女は基本強さしか求めていない。


 唯壊(ユエ)のような弱者軽蔑主義者とはまた違い、己を強くすることしか考えていない。


 そんな翠の能力は、“暴嵐(レイジ)─世を拓く者─”。


 風・雷・土を自由自在に操り身に纏う能力。


 世理の改変能力にも対抗できるよう、空間や次元への変化にも耐性を持つ。また忍耐力は最も高く、骨が折れる程度でも表情を一切変えない屈強な精神の持ち主。


 闘士であるため武器は持たないが強さは神級。

 

 ジュンの中では守護者最強であると考えているが、彼女達同士を戦わせるような検証はしていない。そうは言っても信頼に足る守護者の1人であることに間違いはなく、日々の労いのため彼女専用の鍛錬場へと足を運んでいる。


 訪問に気付いた翠が、駆け寄り抱擁するのは当たり前。



「……」



(うほほほほーぃ!!美女からの熱い抱擁ナイスナイスぅ!!汗かいてる筈なのに無臭て素晴らしいぃんわん!!肉体最強なのに筋肉隆々じゃないのもいい。あっはーん、ずっとこのままでいたいけど、そうもいかない。もどかしいわね)



 翠は無口だ。

 それは主を前にしても、さほど変わらない。

 離してほしいと言わなければ、組んだ腕を解くことはない。



「翠、そろそろ……」



 静かに離れ、名残惜しそうな雰囲気。



(──っ、会話が続かない!無口な守護者と寡黙な主が並ぶのはホント良くない!何か労いの言葉掛けないと以前みたいな()()()だけで終わっちゃうわ)



 前回訪問した時も同じような熱い抱擁をされた。

 但し、それだけで終わったのだ。ジュンが腕を回すこともなければ、会話もしていない。


 スーハーしただけの寡黙な主だったのだ。

 変態な主と言われてもおかしくないが、彼女達にそう思われてはならない。女性という存在を性欲を満たすだけの対象と考える野蛮な男にはなりたくない。



 それは、早乙女純の最も嫌う男性像。



 一般的な男も基本興味ないが、現状自分は女になることができない。ハーレムを本当の意味で堪能するのは女の身体を手に入れてから、それまでは無害な寡黙な男を演じると決めているのだ。たまに設定がブレてしまうこともあるが、直すよう努力はしている。


 ただ、ここに来て、会話が続かないという問題がまたもや発生。


 世理の時以上に、何を話して良いのかも分からない。


 (レイ)が近くに居ることもない。


 抱擁で考えてきたセリフも吹っ飛ぶし、翠は顔を合わせてから一言も喋っていない。またしても抱擁されて帰るという、詰みの事案が起こりそうになっていた。



(コミュニケーション、コミュニケーション!コミュニケーション!!コミュニケーション!!!会話、会話!会話!!会話!!!会話をするのよ!!早乙女純、いやジュン!)



 心でいくら念じたとて相手には伝わらない。


 想いは口を開けなければ届かない。



(お喋りってこんなに難しいものだったかしら?“そろそろ”って言ってからだいぶ時間が経つんだけど、次は何を言うべき…?)



「天気がいい、な?」



(ちっがーう!!ここは異空間!!天気なんて自由に変えれるでしょ!忘れちゃったの早乙女純!?コントはやめてちょうだい!)



「はい」



(いやぁー!!翠も無理に返事しないでえぇぇ!!私が間違えたの、そう私が悪いの!だからこれ以上、無意識精神攻撃してこないでえぇぇ!!)



 表情を変えぬまま2人の男女が立ち尽くす。


 (はた)から見れば異様な空間。



(うぷっ………このまま帰ろうかしら?いやもう一度チャレンジ?まだ救いはある??)



「感謝、している」



(もうこれでいくしかない!届け私の想い!!私の恥を上書きさせて頂戴!!)




 苦し紛れに伝えた言葉は、ほんの一言。


 ただそれは、翠の頬を赤らめるのに十分だった。



 嬉しさに、翠も小さく頷いている。



(よし、流石は私!!クリティカルヒットオーバーキルダメージ!!)



「おぶっ」



 寡黙な男らしからぬ声が口からこぼれる。


 再度、腕を回されたからだ。


 その温もりに癒される。



(ああぁいいぃこれえぇ。ずっとこのまま時も止まってえー!)



 しかし、そうはいかない。

 理性を忘れ(とろ)け顔をさらし出しそうになった時、ハッと気づく。



「翠」


「はい」


「そろそろ………」



 翠はまたしても寂しそうな顔をしながら、主を見送る。余韻は異空間を抜け出ても続く。



(危なかったわ。もう少し長引いてたら私も腕を回していたかも。それを受け入れられたらもう、終わりね。これまでの演技が意味をなさなくなっちゃう。はあぁ、早く女体化したいわぁ)



 早乙女純の願い叶う日はいつか、それまで欲望を我慢し続けることはできるのか、葛藤の日々は続いてゆく。






作品を読んでいただきありがとうございます。

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