ステータス振り分け
レースに勝利した翌朝。
目覚まし時計が鳴り響く中、太一は布団の中でゴロゴロと悶えていた。
「はぁ……筋肉痛ヤバい……」
体力6とはいえ、昨日の全力疾走の代償は大きかった。
脚は鉛のように重く、階段を降りるだけでも涙目になるほどだ。
だが、痛みとともに確かな充実感もあった。
「俺、やったんだよな……」
西村に勝ったこと。
桜井の笑顔を守ったこと。
そして──
ステータスポイントを手に入れたこと。
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現在のステータス
•体力:6
•筋力:3
•俊敏性:2
•知力:1
•魅力:1
•運:1
•保有ステータスポイント:+2
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ステータス画面を見つめながら、太一は腕を組んだ。
「さて……この2ポイント、どう振り分けるかだよな。」
前回は体力に全振りして何とか生き延びたが、次も同じ手が通用するとは限らない。
「まず俊敏性を上げるか?」
俊敏性が2のままでは、今回のようなレースが再びあったときに不安が残る。
だが、一方で筋力や魅力も捨てがたい。
「……いや、ここは思い切ってバランス型にするのが良いか?」
悩んでいると、突然脳内に電子音が響いた。
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《ステータスポイント振り分けのアドバイス》
•俊敏性を上げると、走る速度や反射神経が向上します。
•筋力を上げると、物理的な力が向上し、重い物を持つ際や戦闘時に有利です。
•魅力を上げると、人間関係の改善や交渉ごとがスムーズになります。
•知力を上げると、学力や思考力が向上し、難問への対応力が上がります。
•運を上げると、偶然の幸運に恵まれる可能性が高まります。
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「……運って、本当に役に立つのか?」
どう考えても運にポイントを振るのはギャンブルすぎる。
それなら確実に自分を強化できるステータスに振るべきだ。
「よし、決めた!」
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ステータスポイントの振り分け
•俊敏性:+1 → 計3
•筋力:+1 → 計4
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「ふぅ……これで少しはマシになるかな?」
筋力を上げたことで、力仕事や運動全般が多少楽になるはず。
俊敏性を3にしたことで、次のレースがあってももう少し善戦できるかもしれない。
「やる気も湧いてきたし、今日は一日頑張ろう!」
登校後、クラスに入ると、太一はすぐに桜井の姿を見つけた。
「おはよう、佐藤くん!」
「お、おはよう……!」
昨日のことが思い出され、少し照れくさい。
だが、桜井はそんな太一の気持ちを察したのか、微笑みながら続けた。
「昨日は本当にありがとう。なんだか佐藤くん、ちょっとかっこよかったよ。」
「か、かっこよかった!?」
脳内で何度もその言葉を反芻する。
「これ……俺、もしかしてフラグ立ってるのか?」
心の中でガッツポーズを決める太一。
だが、その瞬間――
――ピロン!
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《新たなクエストが発生しました!》
•クエスト名:先生の怒りを鎮めろ!
•内容:今日の授業中、先生の機嫌を損ねずに過ごす
•報酬:ステータスポイント +1
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「……は?」
思わず声が漏れた。
「先生の怒りを鎮めるって……そんなのどうすればいいんだよ!」
しかし、クエストはすでに発生している。
授業開始まで残り数分。
「やるしかない……!」
再び太一の挑戦が始まる。