知力4
──次の日。
太一は全身筋肉痛だった。
「ぐ……うぅ……いってぇぇぇぇ……」
ベッドの上で悶絶しながら、昨夜の1キロランニングの地獄を思い出していた。
体力6とはいえ、普段から運動をしていない太一にとって、筋力4の暴走は完全にオーバースペックだった。
「でも……ちゃんとクリアしたんだよな……」
再び視界に浮かぶステータス画面を呼び出す。
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《ステータス画面》
•名前:田中 太一
•年齢:17歳
•体力:6
•筋力:4
•俊敏性:3
•知力:3
•魅力:1
•運:1
•ステータスポイント:1
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「よし、来た! ステータスポイント1!」
目の前にキラキラと輝く**【+】**のボタン。
好きなステータスに振ることで、また一歩強くなれる。
太一は嬉しさのあまり、ベッドの上でバタバタと足をバタつかせた。
「どうする? どうする!? 何に振る!?」
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ステータスの選択肢
とはいえ、闇雲にポイントを振るのはよくない。
昨日のランニングで思い知った通り、バランスの悪いステータスは悲劇を生む。
太一は布団の中で腕を組み、真剣に考え込んだ。
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① 体力に振る
「体力7になったら……もうちょっとマシになるんじゃね?」
体力が上がれば、昨日のような疲労感は軽減されるだろう。
筋力と俊敏性の暴走に耐える体力があれば、もう少し楽に走れるかもしれない。
「でもなぁ……ただでさえ体力バカっぽいのに、さらに体力偏重ってのもなぁ……」
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② 筋力に振る
「筋力5!? いやいやいや、バカか俺は!!」
昨日の悲惨な転倒を思い出し、太一は頭を振った。
これ以上筋力を上げたら、日常生活でも扉を壊したり、椅子をぶっ壊したりしかねない。
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③ 俊敏性に振る
「俊敏性4か……」
俊敏性を上げれば、走る時の速度をうまくコントロールできるようになるかもしれない。
それに、普段の動きも機敏になり、体育の授業で恥をかくことも減るだろう。
「でも、まだ俊敏性3の感覚にも慣れてないしなぁ……」
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④ 知力に振る
「知力4……」
昨日、知力を3にしただけで、明らかに頭の回転が速くなったのを実感している。
もし知力をさらに上げれば、テストの点数も上がるかもしれない。
「でも知力だけ上げたら、ただの頭でっかちになりそうだよな……」
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⑤ 魅力に振る
「……魅力2。」
その言葉を口にした瞬間、太一は空を見つめた。
「……ないな。」
自分で言っておきながら、秒で却下。
今さら1ポイントでどうにかなるほど、自分の顔面は甘くない。
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⑥ 運に振る
「運……」
現在の運は1。
もしここに1ポイント振っても、たかが運2。
「運って実感できるのか?」
宝くじが当たるわけでもなく、急にラッキーな出来事が起こるわけでもない気がする。
少なくとも今は実用的とは言えない。
「……やっぱ、知力だな。」
知力3の恩恵はすでに感じている。
昨日の翔太のサポートでも、的確に言葉を選べたのは知力の上昇があったからだ。
それに、何よりも勉強に直結するのは大きい。
「よし、知力に1ポイント振るぞ!」
太一は意を決して、知力の【+】ボタンを押した。
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《知力が3 → 4に上昇しました!》
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その瞬間、再び頭の中に稲妻が走るような感覚が広がった。
「うぉっ!? なんだこれ!?」
視界がさらにクリアになり、思考の速度が一段階跳ね上がる。
例えば、机の上に置かれた教科書の内容が、一瞬で頭に入ってくる。
周囲の音、光、空気の流れさえも、以前より細かく認識できるようになっていた。
「これが……知力4の世界……!」
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次なるクエスト発生!
興奮冷めやらぬまま、太一の視界に新たなクエスト通知が表示された。
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《新クエスト発生!》
•クエスト名:知力を活かせ!
•内容:せっかく知力を上げたのに、勉強しなければ意味がない! 放課後の図書室で1時間以上勉強せよ!
•目標:1時間の学習
•報酬:ステータスポイント +1
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「勉強……か……」
知力を上げた今の太一にとって、勉強は苦痛ではなくなったかもしれない。
「よし、今度は頭脳でクエストクリアしてやるぜ!」
太一は拳を握りしめ、新たな挑戦に向けて立ち上がった。