知力3
放課後。
翔太と桜井美咲の会話は無事に続き、最後には**「また図書室で話そうね」**という次の約束まで取り付けることができた。
その結果──
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《ピロン!》
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《クエストクリア!》
•恋のキューピッドになれ!
•目標:翔太と桜井美咲の距離を縮めろ!
•達成度:100%
報酬:ステータスポイント +1
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「うおおおお! ついにやったぞ!!」
太一は心の中で歓喜の叫びを上げた。
教室に戻ると、翔太が照れくさそうに報告してきた。
「……なんか、夢みたいだよ。まさか桜井さんとあんな風に話せる日が来るなんてさ。」
「お前が頑張ったからだろ! 俺はちょっと後押ししただけさ!」
翔太は照れ笑いを浮かべ、太一の肩を軽く叩いた。
しかし、太一の頭の中はすでに次のことでいっぱいだった。
「ステータスポイント……知力に振るか……?」
教室の隅で、太一は視界に浮かぶステータス画面を呼び出した。
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《ステータス画面》
•名前:田中 太一
•年齢:17歳
•体力:6
•筋力:4
•俊敏性:3
•知力:2 → 3
•魅力:1
•運:1
•ステータスポイント:0
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太一は迷わず、「知力」にステータスポイントを振った。
《知力が2 → 3に上昇しました!》
その瞬間、頭の中に電流が走ったような感覚が広がった。
視界がクリアになり、思考が以前よりもずっと速く、鮮明になっていく。
「こ、これが……知力3の世界……?」
目の前の光景が、まるで違って見えるようだった。
周囲の物事のつながりが、一瞬で理解できるようになっていた。
例えば、窓の外を飛ぶ鳥の動きを見て、風の流れを推測できる。
廊下を歩く生徒たちの足音から、誰がどの方向へ向かっているのかを読み取ることもできた。
「な、なんだこれ……!」
それは、まるで自分が別人になったかのような感覚だった。
しばらく放心していた太一だったが、翔太が不思議そうに顔を覗き込んできた。
「おい太一、大丈夫か? なんか急にぼーっとしてるけど……」
「あ、いや、なんでもねぇよ!」
動揺を隠しつつも、太一は必死に笑顔を作った。
「それより、次のクエストが気になるよな!」
翔太は少し怪訝そうだったが、特に突っ込むことはなかった。
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新たなクエスト発生!
そして、太一の視界に再び通知が表示された。
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《新クエスト発生!》
•クエスト名:太一、己を磨け!
•内容:体力6もあるのに、無駄にしていては意味がない! 軽い運動をこなして、少しはまともな身体を作れ!
•目標:1キロメートル走る
•報酬:ステータスポイント +1
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「……は?」
思わず、声が漏れた。
「走れって……俺に?」
以前の運動神経1時代の悪夢がよみがえってくる。
だが今は違う。体力6、筋力4、俊敏性3。
「……もしかして、いけるんじゃね?」
太一の脳内には、根拠のない自信が生まれていた。