知力2
放課後、太一は自宅に戻るなりベッドにダイブした。
「ふぅ……なんとか今日も生き延びたぜ……」
田中先生の怒りを鎮め、無事にクエストをクリア。
その結果、念願のステータスポイントを1ポイント手に入れることができた。
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現在のステータス
•体力:6
•筋力:4
•俊敏性:3
•知力:1
•魅力:1
•運:1
•保有ステータスポイント:+1
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ベッドに仰向けになりながら、太一は宙に浮かぶステータス画面を眺める。
「さて……この1ポイントをどう使うかだよな。」
前回は体力と筋力に振ったことで、身体能力は少しだけマシになった。
俊敏性も3に上がったことで、走るのも以前よりは楽になったはずだ。
しかし──
「この知力1ってのは、さすがにヤバい気がする……」
今日の授業中の苦しみを思い出す。
田中先生の視線が再び脳裏に蘇り、背筋がゾクリと震えた。
「……次、もし先生が本気で俺を指名してきたら、確実に詰むよな。」
そう考えると、知力を上げるのは妥当な判断のように思えた。
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知力に振るべきか?
しかし、迷いもある。
「知力を1から2にしたところで、俺が天才になるわけじゃないよな……」
2になったところで、普通の人間の**“足りないレベル”**にしか届かない。
どうせなら、もう少し即効性のあるステータスに振るのもアリではないか?
例えば──
•俊敏性をさらに上げて運動能力を向上させる。
•筋力を強化して、ケンカや力仕事で無双する。
•体力を増やして、さらに無理がきく体にする。
どれも魅力的だ。
そんな葛藤の中、突然、頭の中にあの電子音が響いた。
《ピロン!》
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《ステータスポイント振り分けのアドバイス》
•知力を2にすると、簡単な計算や暗記が少し楽になります。
•教師からの指名にも、わずかながら対応しやすくなるでしょう。
•また、知力を上げることで、会話や交渉時の言葉選びがスムーズになります。
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「……交渉? 言葉選び?」
数学の授業だけじゃなく、日常生活でも役立つのか?
今までは考えなしに失言したり、うまく説明できずに誤解されたりすることが多かった。
知力を上げることで、そういったトラブルも減るかもしれない。
「……よし、知力に振るか!」
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ステータスポイントの振り分け
•知力:+1 → 計2
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ステータスポイントを使った瞬間、全身に温かい感覚が広がった。
「おお……なんか頭がスッキリしたような?」
もちろん劇的な変化はない。
だが、視界が少しクリアになったような気がする。
せっかく知力を上げたのだから、少し試してみたくなった。
太一は部屋の隅に積まれている教科書を取り出し、パラパラとめくった。
「えーっと、二次関数の公式って……確かx = -b ± √(b² - 4ac) / 2aだよな。」
自然とスラスラと公式が頭に浮かんでくる。
「おお! これは……すごいぞ!」
もちろん、問題を解くにはまだまだ努力が必要だ。
だが、以前のように公式すら思い出せない状態とは雲泥の差だった。
「知力2……馬鹿にしてたけど、案外悪くないかもな。」
それに、知力が上がったことで会話の受け答えも少しスムーズになりそうだ。
明日以降の授業でも、もう少し落ち着いて先生の話を聞けるかもしれない。
「よし……明日も頑張るか!」
ステータスポイントを使い切った太一は、満足げにベッドに転がった。
だが、その胸の内には、また一つ新たな不安が生まれていた。
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「……次のクエスト、何が来るんだろう?」