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第66話:音楽部、それとも音楽同好会

 紆余曲折あったが、どうにかバンドメンバー全員が目標としていた公立高校入学し、いよいよ本格的なバンド活動をはじめるべく動き出していた。


 時は放課後、場所は一番集まりやすい位置に教室がある一年四組の教室に、武夫たちバンドメンバーは集まっていた。窓際後方の自分の席の机の上で膝を立ててその膝に肩ひじついて座っている雄二が問いかけた。


「やっぱ俺たちだけでやりてぇよな」

「それよりもまずは練習場所だろ?」


 即座に正彦が反論したが、千佳子が下を向いたまま首を振り、あきれ顔で二人に告げた。


「雄二も正彦も解ってない。顧問が先」


 そのやり取りを、きちんと椅子に姿勢よく座って見ていた雅美は、確認するように千佳子に問いかけた。


「顧問が必要ということは部にするつもり? 雄二君はメンバー増やしたくないみたいだけど」

「同好会でも学内活動に顧問は必須」


 いつもどおりに言葉が少ない千佳子に対し、皆の疑問を代表するかのように雅美は聞いた。友子は皆の発言にいちいち真剣そうな顔で頷いているが、それはただのポーズで、全く関係ないことを考えているのだろうということが、最近武夫には分かってきた。


「でも、生徒手帳にはそんなこと書いてないよ」

「生徒指導の先生に聞いた。部にする場合は生徒会の承認と顧問が必須で、入部希望があれば受け入れも必須。同好会に生徒会の承認は要らないけど顧問は必要」


 武夫は生徒手帳を確認してみた。たしかに同好会に顧問が必要とは書いてない。というか、部活動のことすら生徒手帳には書かれていなかった。書かれているのは校則と生徒会についてがほとんどで、あとは校外活動というか生活のことについて一般的な注意事項が書かれているだけだ。


――それにしてもアホな校則が多いな。


 生徒手帳に書かれている校則は、二〇二〇年代でいえばいわゆるブラック校則と言われるものが多い。けれどもこの時代はこれが普通だったし、身に降りかからないなら、武夫自身はどうこうしようと考えていない。


「そうなんだ。じゃあわたしたちの場合は同好会?」

「そうともかぎらない。部になれば部費が貰えるし、部室が与えられる。生徒会議での発言権も貰える。同好会にはどちらも無いし、部室も無い」


 千佳子の言葉を聞いて雄二と正彦は考え込むように目をつぶった。武夫は見逃さなかった。千佳子が「部費」と言ったところで彼女の瞳がキラリと輝いたことを。友子は相変わらず真剣な顔でウンウン頷いているが、騙されてはいけない。


 しばらくして、雄二が顔を上げた。


「でも、俺たちだけでやりてぇよな。いままでそうしてきたんだし」

「新入部員で別バンドを組めば問題にならない」


 どうやら千佳子は部費目当てで創部したいようだ。けれども雄二と意見が対立している。普段からこんなふうに意見が割れたときには、彼ら、彼女らはたいがい武夫に意見を求めてくるようになった。


 他のバンドメンバーは知る由もないことだが、武夫の人生経験は、彼がいくらリア終だったとはいえ豊富であり、それが彼の言動に出ることが多い。そしてそれはたいがい良い方向に物事が進んできたという実績があった。


「武夫はどう思う?」


――やっぱり来たか。


 雄二も千佳子も期待感丸出しで瞳を輝かせて武夫を見ている。武夫もこうやって頼られることをわりと楽しんでいる。前世でボッチ生活が長かっただけに、同世代でリア充組の彼、彼女らとの関りが新鮮だし、なにより頼られるということに喜びを感じているからだ。


「部は止した方がいいかな。ロックバンドとかライブハウス自体が頭が固い古い教員には受けが悪い。というか、やつらライブハウスとか不良のたまり場って勘違いしてやがるからな。たぶんだけど、部は教師の反対で認められないと思うよ。それより理解ある教師を探して味方になってもらったほうが良さそうだ」


 武夫の意見を聞いて雄二は拳を握りこんで歓喜し、千佳子は両肩を落として項垂(うなだ)れた。


 アニメとか漫画とかライトノベルでは創部のために部員を集めるイベントが必ずと言っていいほど起こるが、創部にあたって部員の人数に制限がないことは確かだった。入学してすぐに行われた部活の説明会で生徒会長がそう言っていたのだ。現に、人気がないのだろうが、柔道部には所属部員が一人しか居なくて、その人が必死に勧誘のための説明をしていたくらいだ。


 創部自体は簡単なのだ。けれどもそれには教師や生徒会に認められるという条件が付く。


 ついさっき生徒手帳をざっと読んだときに武夫は見ていた。アルバイト禁止の項目に、ビリヤード場とか風俗営業とかが含まれているのだ。アルバイトどころか出入りさえ禁止になっている。


 ライブハウスは厳密には風俗営業ではないが、グレーゾーンといったところだ。そんなライブハウスで演奏することを目標とした部が、頭の固い教師に認められるはずはないだろうというのが武夫の見解である。


「ということでだ。雄二、理解のある先生を探してくれ。言い出しっぺだからな」

「おう、任せとけ!」


 無責任なようだが、武夫は同好会にすらしなくていいと思っている。高校には吹奏楽部があるが、吹奏楽部は講堂と校舎屋上を活動場所としていて、音楽室は使用していない。


 学校の施設は申請さえすれば、生徒ならば自由に使っていいことになっている。音楽の先生に許可を取れば済むだけの話で、ドラムセットを持ち込んで置いておく許可をどう取ろうかと武夫は考えていたくらいだ。


 そんなわけであるから、もし味方になってくれる理解ある教師がいれば御の字だ程度にしか武夫は考えていないのだ。

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★★★★★ m(_ _)m

100話到達記念SSを投稿しました。内容は雅美が父を亡くしてバンドに加入するまでの雅美視点でのスピンオフ短編です。

転校したらスパダリさんに出逢った

このリンクから飛べますので興味がおありの方はどうぞお読みください。
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