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復讐の幕開け

マリアとヴァンパイアは王城で行われるかなでと王子の結婚記念の舞踏会に紛れこんでいた。

ヴァンパイアは何も聞かずに手を引いてくれる。今日の服も用意してくれた。何故かは分からないけど。そして、今回は都合がいいことに仮面舞踏会なのである。貧血から少しよろける。ヴァンパイアの手が伸びる。


「大丈夫か?吸いすぎたな。」


「だ、大丈夫です。それより、あなたこそ人間の舞踏会なんかにでて大丈夫ですの?」


「ふふっ、俺の心配か?愛しているというのは嘘ではないらしいな。」


なんて少し嬉しそうだった。恥ずかしさから顔が少し火照る。


「今なら、逃げられるぞ?」


「いいえ、逃げません!愛するあなたが私に協力してくれると言うのですから!」


本当は逃げたい。でも、それより復讐を成し遂げる事の方が重要なのだ。ヴァンパイアに身体を寄せる。


「愛しい君、あなたは何故手伝ってくれるのですか?」


「……たんなる気まぐれだ。だが、そうだな。お前クッキーが美味かったから、と、人間を憎んでいる。そこに同情したにすぎない。」


ヴァンパイアが同情するなんて思わなかった。口をあんぐり開けているとヴァンパイアはそっと手を引いてゆく。舞踏会が始まりを告げた。惨劇の幕開けだ。


仮面舞踏会が始まると直ぐにあのバカ王子はかなでとイチャイチャしていた。マリアは王子とかなでが離れた時を狙ってかなでを襲撃しようと考えていた。それまでヴァンパイアと踊っていると周囲はその光景に見惚れた。ヴァンパイアだというのに、ダンスがうまい。それによく見ると仮面越しでも顔も整っていてさらにスタイルもいい。今、気づいた。この(ひと)ときて正解だ。人目を引き付けるには最適である。だが、そんな様子をみてかなではいらだった。自分がメインの舞踏会だというのに自分以上に目立つ存在が居ることが許せなかった。踊り終わると歓声が響く。そんな中、王子を置いて、ヴァンパイアにかなでが向かってゆく。そしてよろけた振りをしてヴァンパイアに擦り寄った。


「あら、すみません、私とした事が……脚を少し挫いてしまったみたい。申し訳ありませんが休める場所に運んでいただけません?」


ヴァンパイアはマリアにアイコンタクトを送り任せろと小声で言ってそのままかなでを運ぶ。

あの人は何を考えているのだろう?そう思ったがしばらくして王子がかなでを探していた。これは、王子に復讐する為にヴァンパイアがくれた機会なのではないか?さっきのはそう言う意味か。そう思ったマリアは王子へとそっと近寄る。そして、かなでの真似をしてよろけて擦り寄った。

「きゃっ!」


「!」


王子は少し驚いたが転ばないように手を引いた。


「ありがとうございます。あの、よろしければ少し、休める所に連れていってくださらない?」


なんて誘惑する。王子は困った顔をしたが今日のドレスが役にたった。大胆に胸元が空いた服をきて王子に擦り寄る。王子はまんまと騙されてそのまま奥の部屋へと連れていかれる。馬鹿な男だ。かなでのように少し色目を使えばなびくなんて愚か極まりない。

奥の部屋に行くと直ぐにマリアは行動に出た隠し持っていたナイフで王子を刺す。


「ぐぁっ?!」


王子は痛みのあまり悶絶した。 そして、マリアは仮面を外す。

「っ!お前は?!何故ここに?!」


「あなたが悪いのよ!」


そう言い放ってマリアは再び王子にナイフを突き立てようとした。だが、王子は助けを乞うた。


「頼む!やめてくれ!君を失って俺は後悔したんだ!」


嘘だ。かなでとイチャイチャしていたくせに!


「違うんだ!マリア!かなでは俺を愛していなかった!王子である俺を愛していただけだったんだ!」


マリアの手は止まった。殺せない。殺してやりたいぐらい憎かったのに、男達を送って私を犯そうとしたのに、なのに、なのに、私は彼を愛していたのだ。確かに愛していた。その思いからナイフを離してしまった。


ナイフが落ちると王子はマリアへと飛びかかった。


「馬鹿め!嘘に決まっているだろう!」


首を絞められる。苦しい。もうダメだ。意識を手放してしまいそうになった時、部屋の扉が空いた。


「「?!」」


何かが放り投げられる。それは変わり果てたかなでだった。


「か、かなで?!」


口元を真っ赤に染めたヴァンパイアが部屋に入ってくる。


「ひっ!ばっ、化け物!!」


王子はそう叫び後ずさりする。


ヴァンパイアはそんな王子の首を絞めあげた。


「ぐっあっ?!」


王子が苦しそうにしている。それを見てマリアは涙を浮かべた。


「お前が殺るか?」


ヴァンパイアは残忍なことをきいてくる。


「いいえ、わた、し、私には、できないわ!」


人を殺すなんて事はできない。しようとしたけど無理だった。そして王子はみるみるうちに変わり果ててゆく。


「ごめんなさい!やめて!」


あれでも一応、一時期は愛した男だ。


「殺されかけたのにか?」


「ごめんなさい!」


そう話していると王子は隠し持っていた銀のナイフでヴァンパイアの腹部を一突きした。


「「?!」」


「はっはっはっ!化け物が!」


ヴァンパイアは王子を離して、マリアを連れてその場から逃げる。王子は使用人達を呼んでヴァンパイアとマリアを殺すように命じた。

ヴァンパイアはなんとか森の城まで帰ってきた。だが、ヴァンパイアは重症をおってしまったらしい。



「貴方!大丈夫?!」

マリアは着ていたドレスを破り、ヴァンパイアの止血を行う。だが、血は溢れてとまらない。

「しっかりして!」


どうすればいいのだろう?私のせいだ。私のせいで…… 。マリアの目から涙があふれる。


「逃げ、ないのか?」


ヴァンパイアはそう言った。そうだ。今ならきっと逃げられる!でも、それよりも!自分に協力してくれたこの人が私のせいで死ぬことは耐えられない。 マリアは首筋をヴァンパイアに差し出した。


「のんで!」


ヴァンパイアはマリアの首筋に牙を突き立てる。


「あっ……」


そのまましばらく吸血されていた。目の前がチカチカする。もう意識を保っていられなかった。深い眠りに堕ちる。


「ごめんなさい。私のせいで…あなたを……」


最後まで言えないまま意識を閉じた。

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