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湯浴み

ここに来て3日がたった。相も変わらず血を奪われ続ける。ヴァンパイアがいつものように食事を持って血を吸いにきた。


「食事の時間だ。女。」


「あの、パンとワインとリンゴはどこから…」


「……人間から奪っている。」


「……それは、殺して…?」


「そうだ。もう黙れ。」



そう言って血をすする。


「あうっ…」


痛みから声が漏れる。ヴァンパイアが血を飲見終えるとマリアはある作戦に出た。


嘘でいい。嘘でいいんだ。ここから出られるなら、この手で復讐できるなら!いや、しなければ!


「私、貴方が好き。」


ヴァンパイアは驚き、不思議そうな顔をした。


「…どういうことだ?」


「私は貴方を愛してしまいました。だからもっと吸ってください。」


嘘だ。もう目の前がチカチカしている。これ以上耐えられない。でも、助かるなら……!


「……嘘だな?」


「いいえ!本当です!」


「…これ以上吸えば死ぬだろう。それでもか?」


「は、はい!」


恐怖から全身が震えた。でも、なんとかここからでなければ!


「あの!私、料理したいです!あなたの為に!」


「……料理?何故だ?」


「血ばかりでなく暖かい料理を食べればあなたの凍てついた心もきっと……」


そういいかけたとき、ヴァンパイアはそっとマリアの手を取った。


「血だけで十分だ!」


そして手首から血を啜りだす。いたい。痛いが我慢しなくては……。


「あなたの名前、は?」


「……名前など意味が無い。(にんげん)ごときがしって何になる?」


「知りたいのです。愛しい君。」


「……」


ヴァンパイアは黙った。そしてそのまま手を引いて牢屋の外へと出た。


やった!出れたんだ!そう思うと嬉しかった。


「料理、つくれ!」


「は、はい!」


厨房へと連れて行かれる。料理なんてした事がない、せいぜい菓子程度のものである。マリアはクッキーを作った。厨房の隅に佇んでいるヴァンパイアに持ってゆく。


「食べてください!」


「……」


ヴァンパイアは黙って食べた。


「お、美味しい?ですか?」


「……」


ヴァンパイアは黙って頷いた。そしてマリアを浴室へと連れていった。なぜ浴室に?これから何をされるのだろうとマリアは不思議そうな顔をした瞬間だった。お湯をはった湯船へと突き落とされる。


「きゃーー?!」


「汚れていてはうまくないからな。」


そう言って彼も湯船へと入ってくる。まさか、こんな服を着たまま、彼の目の前で湯浴みするとは思ってもみなかった。


「あの、ど、どうして?」


「汚れていると不味いと言っただろう?」


そしてそのまま身体をまさぐられる。


「ひ、1人で入れます!」

羞恥から赤面した。

「俺が好きなんだろ?だったら黙って言うことを聞け。逃げられると思うなよ?」


マリアが赤面する中、ヴァンパイアはマリアを抱き寄せる。男性に抱き寄せられるなんて始めてだ。鼓動が早くなるのがわかった。


そのまま牙を腕に突き立てられる。


「あぁっ!」


痛い!だが、我慢だ!きっと逃げる隙はある!そう思って耐えようとした。


「そんなに痛むのか?いいだろ気持ちよくしてやろう。」


吸い方が変わる。あの時のように優しく吸ってくれるのだろうか?だが違った。気持ちいい。確かに気持ちいいがそれはどこか快楽的なものだった。


「あっ!」


情けのない声が漏れる。羞恥から身を捩って逃げようとするが離してもらえない。


「動くな。そのままだ。」


ヴァンパイアの牙のせいで心地よくなる。もっと、もっと牙が欲しい。そう思ってしまうほど快楽的に気持ちよかった。マリアは胸元をはだけさせられ、牙を突き立てられる。


「溺れるなよ?」


溺れる、そう、溺れそうだ。彼の牙に……。マリアの名を与えられた私が、こんなにふしだらな牙の跡を身体中に付けられている。そのことを恥じると同時にどうして愛しているなんていってしまったのだろうと後悔した。


後悔しても、もう遅い。彼の牙からは逃げられない。どんどんと彼に染まってゆく。そんな自分が怖くなった。

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