表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

痛みの矛先


ヴァンパイアは毎日、マリアへの吸血をやめようとしない。


どうしてこんな目に遭わなくてはならないのだろう?それもこれもあのかなでのせいである。


マリアはコップの水に写る自分を見た。首筋にはいくつのも牙の跡が残っている。


いやだ、いやだ!こんなのいやだ!逃げなくては!でも、どうやって?


牢屋には通気口すらない。完全な密室なのだ。なんとかここから出して貰わなければいけない。それには……。

牢獄にヴァンパイアがいつものように現れる。


「おい、腹が減った。飲ませろ!」


「……は、はい…。」


従順であること。これしかない。ヴァンパイアが今にも血をすすろうと首筋に牙を立てようとした。

「あの!料理は食べないんですか?」


「は?」


ヴァンパイアはまさかの質問に呆気にとられる。


「料理?そんなものしばらく食べていない。使用人がいないからな。」


「どうしていないんですか?」


「……昔は人間との共存していた。その時は使用人も何人かはいたんだ。だが、人間が俺達を裏切った!」


「裏切った?」


「……そうだ!お前達は俺達を駆逐しようとした!」



「……ヴァンパイア狩り。」



ヴァンパイア狩り。話には聞いた事がる。その昔ヴァンパイアを悪と見なし、駆逐しようとした人達がいたと聞く。今でもヴァンパイア狩りがいると噂できいた。


「だから、人間は俺達のただの餌だ!そう思っている!」


そう思うことによって、彼は裏切られた過去のことを清算しているのだろう。


「話は終わりだ!!」


ヴァンパイアはマリアに襲いかかる。


「きゃっ?!」


マリアはまた冷たい床で吸血されそうになった。


「まって!話をしましょう!」



「人間と言の葉を交える必要なんてない!黙れ!」


ヴァンパイアの鋭い牙が首筋を通る。


「ああっ?!」


マリアは痛みのあまり声を上げる。彼にとっての心の痛みの矛先は人間だ。なら、今の私と同じではないだろうか?痛みに耐えながらマリアはそう思った。


ああ、人間(かなで)が憎い!あの女さえいなければ!私は公爵令嬢、行く行くは王妃になれたのだ!こんな冷たい床の上でヴァンパイアに襲われることもなかった!そして誰も助けに来てはくれなかった!!人間が憎い!!


かなでへの怒りは人間への怒りへと変わってゆく。


「……っ」


ふと、ヴァンパイアが吸血を止めた。


「……痛むのか?」


気がつくと両目から涙があふれていた。ヴァンパイアはそっと涙を舐める。


「涙までうまいな。」

拭ってくれたのだろうか?ヴァンパイアはそういうと牢屋からでていった。マリアは1人牢屋で泣いた。そして復讐を誓う。


「ああ、神よ!誰も私を、いや、神さえも私を救わないっ!なら!他ならない私自身が人間に復讐してやる!!」


そう金切り声で叫ぶのだった。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ