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サドンデス


悪役令嬢、今や悪役令嬢をえがいたストーリーはあまたとある。これもそのうちの1つで、この物語の主人公は悪役令嬢なのである。悪役令嬢マリアは主人公たるかなでに嵌められた。

マリアが陥れられた理由は、かなでは転生者だったからだ。現代日本から転生してきたと言う不思議な魅力を持った彼女に王子は夢中になった。そして、意地の悪い事に彼女は事ある毎にマリアをはめた。

「マリア!ここでお前は終わりだ!」

大広間で断罪イベントが遂に始まってしまった。


「マリアはかなでの飲んでいた紅茶に毒を入れ、殺害しようとした!よって!お前との婚約を破棄し、ヴァンパイアへの生贄となってもらう!!」


ヴァンパイア、この世界において多くの人が忌み嫌い、そして恐れる存在。森の番人たる種族である。生贄になればヴァンパイアから血を吸われ死に至る。


「身に覚えがございません!この婚約破棄及び罪状は不当です!」


そう叫ぶが意味はなかった。周りの目は冷たく凍てついていた。


「王子!マリア様は悪くないのです!確かに、今まで私を虐めて来られました!しかし、それは私がいたらないばかりに……」

嘘だ。この女、今、顔を隠して笑った。悪魔の笑みとでも言うべきだろう。


「マリア様は、私のノートや教科書を捨てたり、バケツの水を私に被せたり、たくさんの嫌がらせをなさってきました。」


はい、嘘。これも嘘である。毎回上手いこと虐められているように、王子が来ると見せて、私をはめた。


「でも!決して私を殺害しようなんて……」


「嘘です!私は虐めなど…!」



「黙れ!お前がかなでを虐めていたのは周知の事実である!言い逃れはできないと思え!!」


王子は乱暴にそう言った。誰か…、誰でもいい!否定してくれ!味方になってくれ!そう願うが周囲は冷たかった。悪役令嬢マリアは確かに悪役令嬢だった。小説の悪役令嬢として生まれた、しかし、マリアは本来は優しい人物で悪役令嬢になるのは主人公を王子に取られてからなのである。だが、転生者のかなでが転生してきた事によって悪役令嬢としての運命は変わり、逆にいじめられるようになってしまったのだ。周囲にもかなではマリアにいじめられているように見せた。マリアは毎回まんまと嵌められ、無実の罪を着せられていった。


こうして断罪イベントはかなでの作戦の成功に終わった。マリアは1人森に捨てられる。日が沈んでゆく。夜の闇がマリアを恐怖に包んでゆく。

いやだ。こんな薄暗いところに1人だなんていやだ!!そう思っても誰も助けに来ない。


しばらくすると灯りが見えた。よかった!助けに来てくれたんだわ!そう思って灯りの方へと歩いてゆく。だが、それは違った。灯りの元には知らない小汚い男達がいた。


「へへ、やっと見つけた。」


「な、何?!貴方達誰?!」


マリアは男達に地面に押さえつけられた。


「い、いやっ!?何するの?!」


「ナニってそりゃ決まってんだろ?もと公爵令嬢の美人が転がってるんだぜ?」


「どうせ王子にも体で言いよったんだろ?抱かせろよ!」


「お前の愛しい王子様からの命令でな、悪く思うなよ?」


「い、いやぁああああっ!!」


抵抗できない。こんな好きでもない男達に襲われ、このままおめおめと純潔を奪われるのか。そう思った時、目の前が真っ赤に染った。


「は?なん……」

男は目の前に崩れ落ちた。

「うわぁああっ!!」


連れの男達は仲間の男が真っ二つになったのをみて悲鳴をあげる。


マリアは訳がわからなかった。助かったのだろうか?


男達は逃げ惑うが、何かに襲われて倒れていく。


「ま、まさか……」


マリアは恐怖でその場から動けなかった。


「……女?なぜこんな所に?」


月明かりが徐々にその姿を照らす。そこにいたのは美しい女のような男だった。男は死体の血をすする。


「まずっ……」


どうやら好みでは無かったらしい。


「まあ、ちょうどいい。若い女ならさぞ上手いだろう。」


そう男が言った途端に意識が潰えた。


☆☆☆☆


次に目が覚めた時、マリアは手錠をかけられ、足枷を付けられて牢屋の中にいた。


「い、いや!?」


私、売られるの?!あの男は人身売買の業者だったのだろうか?

牢屋の前に男はいきなり現れた。


「目覚めたか?人間。」


恐怖で声もでない。思考は真っ白である。何も言えなかった。


男は鍵を開け、牢屋の中に入ってきた。 そして、マリアを押し倒す。首元をはだけさせられる。マリアは羞恥から身を捩った。


「動くな。お前は今日から俺の餌だ。」


鋭い歯が首筋に当てられる。


「い、いやぁっ!!」


し、死にたくない!

その思いは天には届かないかのように牙が首筋へと立てられる。嫌だ!死にたくない!このまま血を抜かれて冷たくなって死んでしまう!

そんな思いとは裏腹に身体は熱を帯びた。冷たい床に血が滴った。


「……お前、最高だな。」


男はマリアにそう言うと血を吸うのをやめた。


今度こそ助かったのだろうか?


「勘違いするなよ?さっき言ったようにお前は今日から俺の餌。逃がさねぇから、逃げようなんて思わないことだ。」


そういうと男は再び牙を突き立てる。


「さあ、地獄の宴の始まりだ。」


その声と共に激しく痛む吸血が始まり、彼女に人生の終わりを告げた。

不定期更新ですがよろしくお願いします。また、下の☆☆☆☆☆から評価、感想をお待ちしております。

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