幕間――導かれるままに……7
「すかさはぁ? 変な名前……」
微妙な表情で麗子。
「魔女の通り名みたいなものじゃな」
「あっ! しくった! 学生カバン失くしちまった」
麗子が暴漢対策用に用意していたカバンが、失くなっていることに今、気づいた。
正直、カバンはどうでも良い。
(カバンは、どうでも良いけど、赤いペイズリーのスカーフと黒猫のキーホルダーは、お気にだったんだけどなぁ……)
ため息をつく麗子。
そこへ、ロビアタールが声をかける。
「何だい? 探し物かい? 見つけにくいものかい?」
思わず、夢の中へ行ってみたくなるセリフだな、と麗子は思った。
「ちょうど良い。麗子――いや、スカサハ――魔法を使って探し物を見つけてごらん」
「は!? 何、言って……」
「私が手助けしてやるさ。ステップ 1 物を引き寄せろさ。探し物を頭に思い浮かべて、こう唱えな。アポーツ――」
とりあえず、麗子は学生カバンを頭に克明に浮かべると、
「アポーツ?」
と、半信半疑で唱えた。
ヒュン!
すると、麗子の眼前に学生カバンが出現した。もちろん、スカーフとキーホルダーも付いている。
「うおお、マジかっ! 魔法、スゲー!!」
初めて使う魔法に、麗子のテンションは爆上がりだ。
「どうだい、初めて魔法を使った気分は?」
(まさか、一回で成功させるとはね。控え目に言って、天才だね。末恐ろしい)
「サイコー! えっと、師匠って呼んだ方が良いかな?」
「師匠か。悪くない響きだね。安心しな。私がみっちり、魔法を仕込んでやるからね!」
「はは。お手柔らかに……」
麗子はスカーフを外し、左手首に巻きつける。黒猫のキーホルダーは、どうしようか思案していると、エディンと目が合った。
麗子はキーホルダーを差し出す。
「エディンにやるよ。命の恩人だしな」
キーホルダーを受け取るエディン。
「ほう、黒猫の飾り物か。家にも黒猫の妖精が居るぞ。ルネというな」




