幕間――導かれるままに……6
「失礼な娘だねぇ。いきなり叫び出すなんて」
失礼も何も、いきなり生首がしゃべったら叫ぶのが常識だろう。
「お、おば、おば、オバケだっ!」
麗子はパニクっている。
ロビアタールの首下には、赤い魔法陣があり、それで生命を維持してるようだった。
「この首はバロールにやられたのさ。生首のままなのは、魔女モリガンが何のためかわからないけど、生かしているだけさ」
悲しそうに魔女がつぶやく。
バロールはロビアタールの養い子だった。
いかなる呪いか、ある時バロールの左眼に腫瘍ができ、人間界の悪想念が詰まったブラック・オニキスを吸収するようになり、邪悪な存在へと変貌した。
魔女モリガンこと、ロビアタールの妹・エレオノーラは彼女の首をバロールに握りつぶさせ、死なせぬように生命維持の魔法陣を施した。
ロビアタールの斬首された身体は、モリガンの魔法の媒体となって、悪しき魔女にさらなる能力を与える結果となった。
魔法を使う素体として、人体は非常に優れているのだ。魔女の魔法が、悪魔の魔法を凌駕することもままある。人体は魔術にとって、媒体としてのポテンシャルを秘めた存在なのである。
生首の魔女を見た麗子は、最初は驚いていたが免疫がつくと、開き直った。
エディンやロビアタールの話を聴いて、ここが妖精などのファンタジー生物が住む世界、ティル・ナ・ノーグであると理解した。
というか理解せざるを得なかった。
生首の魔女、美貌のハイエルフ、奇妙な豚の魔物と目の前で、ここが異世界であるという事実を突きつけられたのだから。
「とりあえず麗子は、あたしの元で、魔法を学ぶが良いさ。その探してる友達を見つけることもできるかも知れないしね」
「魔法を学ぶって……マジか!? 嬉しいような恐いような不思議な気分だな」
麗子の偏った知識では、魔法は選ばれた人間が学ぶもので、駅のホームに特殊な空間があって、そこに飛び込んだりして、魔法の学園に辿り着くものと思っていた。
「とりあえず、魔女としての名を与えよう。麗子――あんたは、これからスカサハと名乗るんだ」




