信ずる者は、救われルー?
再び、妖魔の森。
グフの喉元にフラガラッハを突きつけたまま、ルーが訊いた。
「なぜ、妖精騎士団を襲った?」
「オメーらが弱い者イジメするからよ」
「何だと!?」
その時、茂みから幼竜が飛び出してきた。
「キュキュイ!」
グフの足元にまとわりつく、ちびドラゴン。
「バッカ、出てくんな。殺されっぞ!」
状況を理解した黒猫が剣を引く。
ちびドラゴンの懐きようから、グフの心根が優しいものであると確信する。竜などの知的生物は、己れを保護してくれる者を、本能的に感じ取る。しかも、プライドの高いドラゴンが子供とは言え、ここまで懐くのは信頼の証に他ならない。
(心優しいレッドキャップも存在するのだな。極めて、珍しいケースだ)
ゴブリンの上位種だけあって、レッドキャップは好戦的で狡猾で残忍だ。それに通常の赤帽子らは、醜く汚い。さらに、会話すら成り立たない。
やはり、グフという個体が希少なのだろう。
「どうやら、双方に誤解があったようだな」
「五回も六回もあるかっ! アイツら、大人数でコイツを取り押さえようとしただぞ」
「なるほど、取り押さえようとしたと。だが、そのドラゴンの仔を傷つけてはいまい」
「オメーらがコイツを追いつめるから、痛い目見せてやったんだい!」
実質的な被害は、騎士団には出ていない。
グフに追い返された形だ。
「おそらく、親元に返すために手早く捕獲しようとしたのだろう」
「嘘だ。アイツら、寄ってたかって追いかけてきただぞ!」
「お前の早とちりだ。親元を離れたちびドラゴンの生存確率は限りなく低くなる。竜の幼体は、他の魔獣にとって格好の獲物だ。しかも、妖魔の森は過酷な生存環境であることを鑑みて、騎士団は生け捕りを急いだのだろう」
黒猫ホームズの名推理が冴え渡る。
あるいは、黒猫ポアロか。
彼の灰色の脳細胞は、一瞬にして、謎を解き明かした。
真実は、いつも一つなのだ。
実は、ルー・フーリンの愛読書はシャーロック・ホームズ全集であり、アガサ・クリスティのファンでもある。どうせなら、妖精王ではなく、推理王と呼ばれたい。
三毛猫ではないが、妖精界のホームズと呼ばれたい。そして、世界の謎を解き明かすのだ。
そんな妄想に黒猫が浸っていると、副団長のレイナルが黒馬に乗ってやって来た。
馬から降り、ルーの前で片膝をつく。
とっくに、勝負はついたのだろう。
レッドキャップが呆然と黒猫を見ている。
これは猫団長を侮って、負けた時のレイナルの態度その物だった。
救援要請に応じてくれた礼を、レイナルが述べようとした時――
「レイナル――お前、ドラゴンの仔をどうするつもりだった?」
猫団長が問いかけてきた。
「どう、とは!? 親から、はぐれたらしいので早目に保護しようと動いていたまでですが?」
「と、言うわけだ。レッドキャップのグフ」
「えっ!? オラの早とちりなんけ? ちびをイジメてたんじゃなく……」
「俺の妖精騎士団に、そんな不心得者はいない。俺は仲間を信じている。この首を賭けても良い!」
木に刺さったままだった斧リサを引き抜き、グフに手渡す。
「大切な武器なのだろう? 返しておく」
「あ、アンガト……」
ぎこちない謝罪の言葉を、グフがひねり出す。
敵の手に武器を渡す行為は、グフを信用しているという意味だった。
斧リサで、すぐさま反撃もできたがレッドキャップは、そうしなかった。
黒猫を信じるに足る人物――厳密にいうと、猫で妖精で王子的な何者かだが。
「あー、負けた。負けた。オメー、すっごく強えな。完敗だ。煮るなり焼くなり好きにしてくろ」
観念したグフ。
そこへ、
「では、煮るかな!」
負ければ、猫鍋となっていたかも知れないルーが、グフ鍋を提案するのだった。
疲れた。右肩痛しm(_ _)m
いやー、だまされるんすよ。アガサ・クリスティには。
殺人犯こいつや! 思っても当てられた試しがない。
さすが、ミステリの女王( ゜д゜)ハッ!
ブクマつけてくれたのは、ありがたいんですけど、
すぐ消されてしまいました。
ちょっと、意味がわからないんですけど、
テンションだだ下がりです。m(_ _)m
更新の文章量は少ないので、それが原因かなと思います
が、現状いっぱいいっぱいなので、しばらくはこの
スタイルで行きたいと思います。
ちょっと、やる気ない星人m(_ _)m




