友達をバカにされたら、ブチ切れても仕方ないよね? 2
屋上に上がって来た男子生徒らは、全部で七人おり、貯水タンク近くに車座になって座り出す。
麗子がいる場所は影になっていて見えない。が、立てば、すぐに感づかれるだろう。
「でよ。2−3の藤原さ、ありゃあ援交トラブルで失踪したって、俺はにらんでるんだけどよ」
麗子の眼が、すうっと細くなった。
よりによって、雑談のネタが京子の失踪とは。
麗子のことならば、まだ良い。
だが、京子は別だ。
京子とは、どんなことがあっても一生ダチでいられる自信がある。
その京子の悪口や音も葉もない噂を流す輩は、麗子にとって処罰の対象だ。
「あの、夜神とツルんでるヤツだべ。何か、影薄いつーか、居るのか居ないのかわかんないヤツだべ」
頭悪そうな方言だべ男が、京子の悪口を言う。
京子の悪口を言っていいのは、麗子だけだ。しかも、傷つけない悪口に限る。
「大方、夜神のとばっちりを食ったんだろうさ。夜遊びするタイプにゃ、見えねえしな」
とは、髪を金色に染め、制服の下に赤いTシャツを着たヤンキー男。おそらく、グループのリーダーだろう。
(あたしの、とばっちりで京子が!?)
ありえないことではないが、身に覚えがない。
京子もボケっとしているが、自分からトラブルに進んで行くタイプではない――とは、言い切れない。好奇心旺盛なのが、玉に瑕なのだ。
「レディースの特攻隊長だか何だか知らねえが、目障りだよな」
見ると、いつぞや麗子がブチのめした男がいた。こちらは制服の下に青シャツだ。良く観察すると、不良どもは制服の前を開け、色違いのTシャツを中に着込んでるようだ。不良戦隊バッドガイズと、麗子は心の中で命名した。
こいつは仕方ない。麗子は恨みを買っている。
麗子の所属しているレディース〈ニュクス〉は、ケンカ上等のバリバリの武闘派だ。そのため、因縁をつけてくるチームは少ないが、皆無ではない。
「おまけに目つきも悪いしな」
と、黄色いシャツを着たチビが言った。若干、お腹が出ている。多分、メンバーの中で大食い担当なのだろう。戦隊ものは、そうやってキャラの個性を際立たせるのだ。
「おい。夜神はともかく、ツレの悪口はヤバいって。あいつ、ダチのことになると、人が変わったみたいにキレんだよ!」
麗子の中学時代を知る者がいた。顔に見覚えがある。確か、同中だ。しかも、麗子にコンパスで目を抉られそうになった奴に似ている。おそらく、本人だろう。
麗子は知らなかったが、この男は京子が好きで、いたずらを通してしか、気持ちを表現できなかったのだ。
青春あるあるである。
しかし、そんなことは麗子に関わりはない。
京子を害する者がいれば、全力で叩き潰す。
それが、夜神麗子だ。
こうやって、目立つ不良連中をこき下ろすくらいしかできないのが、こいつらなのだろう。
ニュクスに表立って、敵対しないことからも不良の中では、ランクが低いというか、ケンカの腕は大したことないはずだ。
援助交際――そんな器用なことが、ナチュラルボーン天然娘の京子にできるはずがない。
許せない。
あたしの親友をバカにする奴らは。
「ビビるなって、たかが女だろ?」
黒シャツがしゃべった。名札には、大木とある。
ブチッ!
麗子の堪忍袋の緒が切れる音がした。
後で、書き足します。




