冒険者ルーク 180
ベルベルは困惑していた。
つい先刻まで、リジルの首は完璧に斬り離されていたというのに、彼女にはダメージはなく、無傷である。
普通、自身を殺そうとした相手は警戒すべき存在であるはずなのだが、リジルは意に介してなさそうだ。
しかも、退屈を紛らわすためにバトルしても構わないし、お茶をしても良いらしい。
罠ではない、と本能がそう告げている。
リジルに当てはまるかどうかは知らないが、ベルベルには天然の二文字が浮かんでいた。
元々、ベルベルも戦うことが好きなわけではない。
自身が管理するダンジョンに秩序を乱す存在が現れた。
ならば、排除するしかない。
しかも、友だちだったモン吉を殺されたのだ。
恨みはらさでおくべきか——という心境であった。
ぼっちだったベルベルは、友だちが欲しいあまりに生体ゴーレムを創造するギフトを芽生えさせた。融合魔獣であるエンキドゥを錬成出来たのは、その能力の副産物である。
目の前のリジル——いや、ガタノソアは得体の知れない邪神だが、思ったよりも友好的なのかも知れない。
それにモンスターよりも、意思の疎通がしやすそうだし、何より同性——現時点では、そう見える——であるという点には、安心が置ける。
一人は寂しい。
何度もベルベルは、孤独に涙を流した。
同族の悪魔らには蔑まられ、ダンジョンに篭るようになってしまった。
ベルベルだって、スイーツを食べたり、ファッションを楽しんだり、恋だってしてみたい。
思考が女子高生のそれで、彼女は悪魔に生まれて来るべきではなかった。
ベルベルが求めているのは、アオハル——つまり、青春なのだ。
そう彼女は、青春したいの隊長なのであった。
リジルと仲良くなれれば、ぼっちを卒業出来るはず。
ベルベルは同じ時間を共有する仲間に飢えていた。
本当の友情というものは、敵味方を超越した所から、生まれてくるものかも知れなかった。




