冒険者ルーク 176
『旧神クタニド——その話は、真実なのか!?』
彼の話が本当なら、クタニドにはクトゥルフの人格——邪神だが——が宿っていることになる。
つまりは、その身体の中に天使と悪魔、勇者と魔王、善と悪とを同居させているということだ。
多重人格は、身体の中に複数の人間の意識がある状態だ。
俺の知る限り、人間界では実に二十四もの人格を持つ者が存在する。
これは彼が幼い頃に父親から性的虐待を受け、心が分裂してしまったゆえの悲劇だ。
話が逸れた——旧神クタニドは、邪神クトゥルフと約百年ほどのスパンで人格が入れ替わるそうだ。
クトゥルフを殺すということは、クタニドを消滅させることでもある。彼はそれを、了承しているのだろうか?
『真実だ。今、我の身体は地球の海底都市ルルイエに眠っている。どうか、ルー・フーリン——いや、サダルメリクよ。我の、この呪われた生を終わらせて欲しい』
『——意識をクタニドとクトゥルフに分けることは出来ないのか?』
『我は存在自体が呪われている。人類は、この我を一目見た途端、発狂する者も居る』
すると、クタニドは自身の姿の映像をイメージとして、俺に送りつけて来た。
それは禍々しい姿だった——
頭部はタコで、口元は無数の触腕があり、四肢には長い鉤爪、背にはコウモリを連想させる翼があった。
確かにおぞましい姿だ。
特に、人類には耐えられないだろう。
彼らは未だに、人種間の紛争すら終わらせることが出来ていない。
——幼年期の終わりすら迎えていない人類にとって、邪神らの姿は悪魔にも等しく思えるだろうな。




